戦利品の回収
山賊のアジトの洞窟の、一番奥の部屋――
その部屋の端の木箱の中に、こぶしくらいの大きさの石が入っていた。
それを取り出して、俺が呟いた。
「これが、魔晶石か――」
確かにこの石からは、強い魔力を感じる。
この部屋の中央には、台座のような岩がある。
本来はその台座に、この石が設置されていて、モンスターを定期的に発生させていたらしい。
「これを持って外に出ると、ダンジョンは自然消滅するのか……」
「そう言われているわ。私は見たことないけど――」
山賊のアジトは、元々はゴブリンの巣穴だった。
ゴブリンを定期的に生み出すダンジョン。
そこを山賊が乗っ取って、アジトとして利用していた。
『ダンジョン・コア』とも呼ばれる魔晶石を、台座から外しておけば、ゴブリンが生み出されることはなくなる。
ここの山賊は、お頭を筆頭に強い奴がちらほら交じっていた。
魔物の巣を乗っ取る戦力を持った賊は、こうしてアジトや拠点を作るらしい。
賊は町の中には、入れない。
壁外地区には、拠点があるだろうが――
町の近くだと、ガサ入れされるリスクも高い。
山賊としても、資産を集中させるわけにはいかない。
ダンジョン周辺は、その魔物の縄張りになっていて、他の魔物は寄り付かなくなる。よほど強い魔物でないと、攻めては来ないそうだ。
女神の加護のある山道が、近くを通っていることも重なって、強力なモンスターは寄り付かない。
山賊のアジトとしては、理想的な環境だったわけだ。
この魔晶石は、高値で国に引き取られる。
魔物討伐系やダンジョン攻略系の冒険者の、目標の一つだ。
この世界の王族はこれを使って、女神の加護の付与された町や村などの集落や、農場などを創設できる。
魔法で町の基礎を創れる。
――それが王族の、権力の源泉らしい。
そして、創った施設を維持する為に、金貨と銀貨と銅貨が必要になる。
魔物除けの結界の対価として、お金を女神に支払う必要がある。
王族は硬貨を女神に捧げて、結界を維持しているらしい。
この世界の硬貨は女神が創り、功績のあった人間に与えている。
だが、硬貨を与え続ければ、その価値は下がる。
物が沢山あれば、それだけ値段が下がるのが市場原理だ。
だから、市場に出回る硬貨が、増え過ぎない様に――
定期的に、結界の維持費として回収する。
それがこの世界の、貨幣システムの全容のようだ。
山賊から救出した、礼のつもりだろうか?
もともと面倒見のいい性格なのかもしれないが――
レイレルは親切に、色々教えてくれる。
山賊のアジトについても、詳しいので助かっている。
魔晶石の価値なんかは、俺たちに教えずに自分で取れば大儲けできた。
しかし彼女は、そうしなかった。
レイレルのことは、信用して良さそうだ。
ダンジョンが消えると、この辺りにも魔物が来るようになる。
山賊は全滅させたが、気は抜けない。
レイレルとは、臨時でパーティを組むことにした。
そのほうがお互いに助け合えるし、裏切りの可能性も低くなる。
戦闘では、弓を使えるそうだ。
山賊に捕まった時に装備は没収されたが、山賊のアジトの倉庫の中に、まだ売られずに残っていたので取り戻せた。
彼女は少なくとも、安全が確認できる集落まで同行する予定だ。
山賊のアジトにあった金は、金貨が百七十八枚、銀貨が二百三十枚、銅貨が四百九枚と結構あった。
魔石もまとめて置いてあったので、頂戴しておいた。
モンスター退治には興味がなかったのか、全部で魔石値千程度しかなかったが、無いよりはましだ。
盗んだ物資はすぐに売っていたそうなので、現物は少ない、
食料は大量にあったので、持てるだけ持って行くことにした。
賊を討伐した場合――
貴重品以外は討伐者が、自分の物にしてもいいそうだ。
貴重品に関しては、もとの持ち主が名乗り出た場合は、その品の半値の報酬を対価に貰い、品物は引き渡さなければいけないので、一旦、行政機関に預けなければいけない決まりになっている。
山賊の装備品のシミターや、お頭のメリケンサックなどの金属系の装備は売れるし、後で錬成してインゴットにすれば、強化素材として使えるので、持てるだけ持って行く。
かなり重いので、価値のありそうなものを優先して選ぶ。
防具は山賊が着ていた物は、身に着ける気にはならなかったが、物置部屋にあった比較的新しそうな物の中から、それそれが欲しい物を回収した。
さて、荷物が嵩張ってきたが、レイレルとラズとリズ、人員が増えたことで持てる量も増える。仲間は早めに増やした方がいいな。
俺は最後に魔晶石を回収する。
洞窟は消え去り、只の崖になった。
洞窟のあった場所を出発して、けもの道を通り山道を目指す。
けもの道を登りながら、魔力探知を放って進む。
アカネルとモミジリのお花摘みポイントのところに、魔物に食い散らかされた山賊の残骸が転がっている。
そこに――
強力な魔物の群れの反応があった。




