山賊が現れた 6
悲鳴の上がった現場に、俺がたどり着いた時には――
事態はもう、決着していた。
アカネルとイルギットが、それぞれ血の付いた武器を構えている。
ぱっと見だと、アカネル達は無事だ。
怪我をしているようには、見えない。
そして、地面に血まみれで、倒れ込んでいるのは――
下半身を丸出しにした、男が二人……。
その男たちの、傍らには――
地面にへたり込んでいる、半裸の少女がいた。
俺は半裸の女へと、視線を向ける。
年齢は俺達よりも、少し高いくらいだろう。
俺の視線を受けて、慌てて両腕で身体を隠す。
念のため、魔力探知を使う。
その結果、罪科ポイントは少ないことは解かった。
まだ油断はできないが、山賊の仲間ではないだろう。
「あんたは、こいつらの仲間じゃないんだよな?」
女は、コクコクと首を縦に振る。
「じゃあ取り合えず、向こうで話そうか?」
ここは、草木の生い茂る山の中だ。
少し開けてはいるが、ゆっくり休めるような場所ではない。
近くに、山賊の死体もあるしな。
俺が移動を促すと、その少女が慌てて忠告してくる。
「ま、まって! そっちには山賊のアジトがあるの、奴らに見つかったら、どんな目に遭うか――は、早く逃げなきゃ――」
「――心配ないよ。そいつらは、もう全部殺した」
女は目を丸くして、俺を見つめた。
小鬼族のラズとリズの二人は、感知能力が人間よりも優れている。
俺の帰りを隠れて待っている時に、森の奥から女の声が聞こえたそうだ。
俺と山賊との戦闘音は、洞窟方面から断続的に聞こえてくる。
それとは別の場所から、微かに人間の声や物音が聞こえてくるという。
戦闘区域とは別の場所から、人の気配――
無視はできない。
アカネルが確認しておこうと言い出して、全員で様子を見に行くことになり――
森を進んだ先に、見えたのは――
男二人と女一人が、三人で――
組んず解れず、励んでいる所だった。
それを見たモミジリが、悲鳴を上げて相手に発見される。
男二人は下半身に何も穿いておらず、武器も地面に置いている。
対してアカネルとモミジリとイルギットは、武器を身構えている状態だ。
敵が武装するよりも早く、接近して攻撃――
そこにラズとリズも攻撃に加わり、敵を制圧したそうだ。
ラズとリズは小鬼族の種族特性で、闘気をある程度操ることが出来る。
素手でも十分に戦えるだけの、戦闘力を持っていた。
こちらのメンバーには、被害はなかったようで安心する。
俺たちは、山賊のアジトのだった、洞窟の前に来ている。
そこらに転がっていた山賊の死体は、集めて燃やした。
その後で、焚火を作って体を温めながら、情報交換を開始する。
山賊二人と、交わっていた――
女の名前は、『レイレル』と言うそうだ。
幼馴染と二人で冒険者をしていたが、山賊に捕まって奉仕を強要されていた。
レイレルと幼馴染の二人は、ピュレイモント商会という中規模の商会の呼びかけに応じて臨時クランに参加し、物資の輸送任務をしていたところを、山賊達に襲撃され、敗北したのだという。
そのときに、残念ながら幼馴染の男の子は戦死して――
レイレルは、捕らえられた。
山賊から逃げることに成功したのは、ピュレイモント商会の人員だけで、それ以外は捕まって人買い業者に売られたり、山賊に殺されたりした。
山賊は合法の奴隷商とは、取引出来ない。
捕らえた人間は、非合法の人買い業者に売るそうだ。
山賊達に容姿を気に入られたレイレルは、売られることなく、親分と古参の幹部への奉仕を強要される。
奉仕を行う場所は、親分の場合は洞窟の部屋の中で――
他の幹部の相手は洞窟の外に出て、山の中でする決まりだったそうだ。
洞窟の中は、声が響くからな――。
山賊の親分が飽きれば、その後は、人買い業者に売られるか――
さらに、下っ端の山賊の相手を、させられるかのどちらかだ。
下っ端は数が多いし、女の扱いも乱暴になる。
女が身体を壊した後は、殺されて捨てられる。
――というのが、この山賊団に捕まった女の運命らしい。
レイレルの前に、奉仕係として山賊達に飼われていた女性は、使い物にならなくなってから、殺されたそうだ。
夜の闇の中で、焚火の残り火の灯りが、周囲を微かに照らす。
俺たちは交替で、仮眠を取って――
夜が明けてから、山賊のアジトだった洞窟の探索を開始した。




