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メルドリアスの遊戯世界  異世界転生ハーレムキャラバン  作者: 猫野 にくきゅう


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38/50

 山賊が現れた 3

 空間移動で移動した俺の目の前に、山賊の背中があった。


 山賊は三人とも、俺が現れたことに気付かない。

 気付かれる、前に――


 俺は一番手前にいた、山賊の首を斬り飛ばす。

 辺りに血が、撒き散らされる。


 まずは、一人。


 異変を察知して、こちらを振り向いた山賊の胸に、剣を突き刺す。



 これで、二人。


 最後に残った山賊は、俺に向かってシミターを振りかぶり、切りかかろうとしている所だった。


 山賊に刺した剣を、引き抜く時間はない。

 俺は剣から手を放し、後ろへと下がり敵の攻撃を躱す。


 俺の目の前を、シミターが振り下ろされる。



 俺は武器を振り下ろした状態の敵へと、自分から距離を詰めて――


 山賊の手首と胸ぐらを両手で掴み、足を引っかけ――

 柔道の足技の要領で、敵の重心を後ろへと、無理やり崩す。


 山賊は盛大にバランスを崩して、地面に倒れ込んだ。

 倒れ込んだ敵の腹を、闘気を込めた足で蹴る。


 山賊はそれを、左腕でガードする。

 ゴキっ、という骨の折れる音がした。


「グギャああぁあァアァァッァッ!!」


 左腕が、折れ曲がっている。


 痛みのあまり、山賊は――

 武器を手放して、呻きながら蹲っている。


 俺は地面に落ちていた敵の武器を拾い上げて、それでそいつの首を切り落とす。


 これで、三人目。





 周囲にまだ敵がいないかを、一応確認してから――

 アカネルとモミジリの様子を見る。


 二人は怯えていたが、怪我はないようだ。


 一先ずは、ホッとする。

 この二人が襲われているのを見た時は、焦りと不安を覚えた。

 

 驚かせやがって。

 残りの三人は、少し離れたところにいる。


 

「いったい、何があった?」


 俺は二人から、事情を聴くことにした。

 

 






「べ、別に、何でもないわよ。そっ、それより、あんたこそ、突然現れて――」


 俺の問いかけにアカネルは焦りながら、話題を逸らそうとする。


「――ん?」


 血とは違う刺激臭……

 俺は視線を、二人の足元に移す。


 そこには暗闇で見えにくいが、大きめの水たまりが出来ていた。


「言いにくいかもしれんが、状況と経緯を説明してくれ。山賊がまだいるかもしれない。情報が欲しい――」


 俺の説得に、二人は渋々と経緯を話し始めた。



「あんたが山賊退治に行って、暫く経ってから……その、私達、催して……きちゃって――」

「我慢できないほどじゃ――なかったけど、近くに山賊がいるって言うし……いつ何が起きるか――分からないから――」


「今のうちに出しておこう、ってなって……しゃがんだところで、そっちから――」


「山賊が現れて、剣を抜いて『お前たち、そこで何してるって』――剣を突き付けられて……」

「そ、それから――その時にっ、あんたがなんか、突然やって来たのよ!!」




 なるほど――

 春になったとはいえ、日が落ちれば、まだ冷える。

 それに加えて、近くに山賊がいるという恐怖と緊張感もあって、尿意を催して――


 いざ、放出しようとしたところに、山賊がやって来たわけだ。


 二人は、言いよどんでいたが――

 二人とも山賊にシミターを突き付けられて、漏らしてしまったようだ。


 ズボンを脱いだ状態で洩れたのは、むしろ運が良かった。



 最初に見つけたあの一団以外にも、山賊はまだいるようだ。



 俺は先ほど倒した、三人の山賊が来たという方向を見る。


 よく見ると山の中に、草木の生えていない道がある。

 人が頻繁に歩いて、出来た道だろう。



 恐らくその奥に、山賊達の根城があるはずだ。


 「ユージ、いるか?」


 山賊から救出した小鬼族の、ラズとリズがやって来た。






 俺は地面に落ちていた山賊の松明を拾って、アカネルに手渡す。



「――ああ、こっちだ」


 俺は仲間五人に、ラズとリズのことを紹介した。


 そして、山賊達の動向を共有して整理することにする。



 辺りはもう真っ暗だし、山の中で障害物も多い。


 この辺りは山賊の通り道の可能性が高いので、山道の少し外れたところに移動して話をすることにした。





 ラズとリズの暮らしていた小鬼族の村が、人間の山賊達に襲撃された。

 小鬼族は交戦して抵抗したが、山賊には敵わなかった。


 戦闘が数日間続き、自分達では山賊に勝てない――

 そう村人たちが思い知ったタイミングで、山賊達から提案があった。

 

「大人しく生贄を差し出すなら、この村から手を引いてやる」



 山賊の要求は、小鬼族の子供二人――

 村人の間では、賛否両論あった。

 従うか、戦うか――


 大人たちの話し合いを聞いていたラズとリズの二人が―― 

 このまま全滅するよりはと、生贄に志願したのだそうだ。


 二人の親は山賊との戦闘で戦死していて、この先、自分たちは村のお荷物になる。

 そう考えて、決断したそうだ。


 村の中で話がまとまり、山賊に白旗を上げて、要求を受け入れると知らせて――

 馬車に乗せられ、移動していたところを、俺に助けられた。


 ――という流れのようだ。





「山賊は後、何人いるか分かるか?」

「正確には解らない。けれど山賊の親分は、まだ死んでない――」


 ラズとリズによると山賊の中で、特に強かったのは親分だ。

 その次に厄介だったのは、魔法使い。


 それ以外にも何人か手練れがいたが、そいつらは敵わない程ではなかったそうだ。




 話を整理してみると、このままラズとリズを村へ送り届けて――

 『めでたしめでたし』、とは行かないようだ。



 山賊の数はかなり削ったが、親分とやらがまだ残っている。


 そいつを始末しなければ、この事件は解決とはならない。

 首を突っ込んだ以上は、そこまでするのが筋だろう。


 俺は山賊の、残党狩りをすると決めた。



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