キラー・ビーの巣
夏の暑さが過ぎ去って、日中は過ごしやすくなったが夜になると肌寒い。
軽く運動して、体を温めてからモンスター討伐へと赴く。
今日は気合が入っている。
なにしろこれから挑むのは、トラウマの場所となっている南の山だ。
あれからレベルも上がったし、使える魔法も増えた。
特に攻撃魔法を習得したことで、俺は飛躍的に強くなった。
「まあ、慎重にやれば行けるだろう」
いつまでも、トラウマを抱えているわけにもいかない。
こんなところで足踏みしていては、この先冒険者としてやっていけないだろう。
性奴隷を三人も抱えているのだ。
俺がしっかり稼げるようにならなくては――
俺は南に向かって、移動する。
農場の柵の前まで来たところで、山へ向かって広域探知を行う。
やはり、山の中にいる魔物は、強力な奴が多い。
その場から移動しない魔物は、植物系だろう。
魔力反応の無い、不自然な空間もあった。
隠密結界だ。
敵をマークできないが、大体の位置と数は分かる。
俺はさらに南西と南東の状況も把握するために、それぞれ広域探知を飛ばす――
「ん?……おおっ!」
現在地から約六百メートル南西の位置に、百を超える魔物の集団があった。
一番強い魔物は戦闘能力630、恐らくこの集団のボスだろう。
名前はクイーン・ビー。
その周囲には戦闘能力100から50くらいのキラー・ビーが百匹くらいいる。
反応の無い隠密状態の敵がさらに四十匹。
以前探知した時には、こんな群れは無かったはずだ。
魔物が巣を作って、大きくなったのか――
もう一度同じ方向へ探知を飛ばすと、魔物の位置に変化があった。
隠密状態の敵のいくつかが、こちらに向かって移動している。
偵察に来る気だろう。
厄介な隠密タイプが向こうから来てくれる。
数を減らせれば、その後が楽になる。
「やるか――」
俺は蜂の魔物の集団を討伐することに決めた。
女神の結界のある農場内に、魔物は侵入してこない。
入れないわけではないらしいが、強力なモンスターほど結界を嫌って来ない。
それを利用して数を減らそうと思う。
再び広域探知を、蜂の巣のある方向へと放ち挑発する。
敵の偵察隊は、まっすぐにこちらに向かって来ている。
おびき寄せることは、成功している。
その間に俺は、自分の魔力を土属性に変化させておく。
隠密結界を張っている敵は、魔力で追跡することは出来ない。
だいたいの位置を確認する為に、何度か広域探知を放つ。
こちらに向かってきている敵は、風属性のノーマル十匹と、隠密状態が二十匹と少し、合計三十以上になる。
――山の中の木の合間に、敵の姿が見えた。
俺は姿の見えた敵に向かって、魔法で作った岩石で攻撃していく――
ドッ、ドッ、ドッ!!
魔法を標的に当てる練習は、かなり積んでいる。
敵にヒットするイメージで高速で打ち出される岩石は、敵の身体を順番に破壊していく。キラー・ビーは飛行の補助に風の魔法を使っているようだが、俺の土魔法の攻撃はものともせずに突き破る。
隠密結界で姿を隠している敵も、魔力を使った探知で違和感のある場所を見つけて、魔力を込めた目でよく見れば、その姿を発見できる。
農場には、女神の加護がかかっている。
キラー・ビーの群れは、それを嫌ってかこちらには入って来ない。
入ろうかどうしようかと、躊躇っている感じだ。
俺の広域探知を感知して、偵察に来たキラー・ビーは三十二匹いた。
一時間くらいで、一方的に殲滅できた。
キラー・ビーの巣はここから南西に約六百メートルのところにあった。
俺は南西へ、四百メートルまで広域探知の魔力を飛ばす。
敵の別動隊や他の魔物が近くにいないことを確認し、それからキラー・ビーの、魔石と素材の回収を行った。
「今日は、この辺で帰るか――」
敵の数のわりには、あっけなく殲滅できた。
ボーナスステージのようなものだ。
この調子で、敵の巣を攻略してやろう。
その日から数日は、魔物素材の圧縮と装備の合成に時間を使った。
前回の討伐から、三日経過した。
キラー・ビーの群れの討伐を再開しようと思う。
「今日の夜にでも行くか――」
農作業が終わり、日が暮れて二時間ほどが経過した。
俺は農場の南へと、移動を開始する。
農場の端の柵までたどり着いた俺は前回と同じように、状況確認と敵をおびき寄せる挑発を兼ねて広域探知を行った。
キラー・ビーの数は合計百二十はいた。
前回の討伐で三十二を倒している。
三日間で少し個体が増えたのか?
いや、前回の討伐時に巣の周囲にいなかった個体がいたのだろう。
いずれにしても劇的に数が増えているわけではない。
俺は一分おきくらいに探知をくり返す。
こちらに向かってきている敵は、隠密タイプが三十と少し、ノーマルが六十匹。
前回は三十匹で返り討ちにあったので、数を増やしたようだ。
キラー・ビーの群れは途中で遭遇したコボルト一匹を捕獲し、巣に持ち帰っている。そのため二匹ほど数は減ったが、敵戦力にたいした影響はないだろう。
俺は前回と同じように姿を視認できたキラー・ビーから、順に土魔法で岩石を飛ばして仕留めていった。
敵の数がかなり増えたが、やることは変わらない。
向こうは農場内に入ってこないのだから、安全に駆除することが出来る。
そう思いながら、作業と化した討伐を行っていると、残り二十匹となったところで、敵が一斉に農場内へと入ってきた。
「おおっ、根性ある奴もいるじゃないか」
このままでは、一方的に的になるだけだ。
意を決して農場へと侵入した一団は、俺へと襲い掛かってくる。
しかし、敵の動きは鈍い。
キラー・ビーは明らかに、戦闘能力が落ちている。
「――それで、入りたくないのか?」
俺ははがねの剣を抜き放ち、向かってくるキラー・ビーを両断していった。
「魔力を節約できて、かえってよかった」
農場周辺まで偵察に来ていた敵の群れは、これで殲滅できた。
俺は魔石と素材を回収して、部屋へと帰還した。
討伐には役に立たなかったスラ太郎だが、素材の剥ぎ取りでは活躍してくれた。
ありがとう。
スラ太郎。
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名前 ユージ
HP 102/112 MP 16/126 FP 101/114
幸運力
058~-011×2
スキル
空間移動 危険感知
所持品
魔石値 0040108
回復薬 6個
性奴隷
アカネル モミジリ イルギット
借金 金貨21枚 銀貨8枚 銅貨43枚
才能
大魔導士の卵 戦神の欠片 強欲な器
職業
労働奴隷Lv16(従順-56) 農夫Lv13 薬草採取者Lv12
戦士Lv19 剣士Lv17 武闘家Lv16 弓使いLv13 槍使いLv14
魔法使いLv20 魔術師Lv19 魔物使いLv15
探索者Lv20 斥候Lv19 隠密Lv20 暗殺者Lv18
遊び人Lv26 ギャンブラーLv23 ハーレムマスターLv19
薬師Lv18 錬金術師Lv20 鍛冶師Lv20
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キラー・ビーの魔物素材は、硬い殻と毒や麻痺効果がランダムに付いた針。
錬成した針は鉄製の武器と合成出来るし、殻は防具のコーティングに使える。
持てるだけ持って、帰ってから錬成しておく。
三日後、錬成で消費したMPも回復している。
残りの敵はおよそ三十匹くらいになっているはずだ。
群れのボスのクイーン・ビーは戦闘能力630の強敵だが、探知で得た魔力反応から推察すると、厄介な攻撃魔法を使うタイプではない――
今夜にでも決着をつけてやろう。
夜になり、俺は農場の南の山の前まで来た。
キラー・ビーの巣を目がけて広域探知を放ったが、いつものように斥候がこちらへと向かってくることはなかった。
これまで二度も、敵の威力偵察を殲滅している。
相手が慎重になったのか? と思ったが、恐らくそうではない。
敵の中に、魔力に敏感な隠密タイプがもういないのだ。
俺の広域探知の魔力に気付いていない、という可能性が大きいだろう。
「こっちから、打って出るか――」
山の中に入るので危険は大きいが、向こうが魔力に気付かない以上は、これまでのような安全策はとれない。
俺は隠密結界を張って、キラー・ビーの巣があるところまで進むことにした。
探知で調べた結果、キラー・ビーの巣までの間に他の魔物の反応はなかった。
移動中も予期せぬ敵との遭遇はなく、余計な戦闘はせずに済んだ。
キラー・ビーの巣が見えた。
これから、魔物の巣の駆除を行う。




