☆性奴隷と魔法の研究
俺の目の前には、尻が二つ並んでいる。
農作業の昼の休憩時間に、アカネルとモミジリを連れて人気のない林の茂みの中に入り、そこで二人を並べ自分で奴隷の服をたくし上げて、尻を見せるように言った。
二人は恥ずかしがりながらも、俺の言うとおりにする。
奴隷に下着は支給されていないので、服をめくると可愛いヒップが丸出しになる。
俺はその二つ並んだ白い尻を、手でさわりながら観察する。
二人の尻には同じ場所に、ハートをモチーフにした紋様が刻印されている。
恐らくは、俺の性奴隷としての印だろう。
性奴隷について詳しく調べてみようと、それとなくクサンゴさんに聞いてみた。
奴隷の種類について把握しておきたい。
クサンゴさんの話によると、この世界の奴隷は俺たちのような労働奴隷の他には、犯罪奴隷と重犯罪奴隷の二種類しかないらしい。
『性奴隷』っていないの?
――とは流石に聞けないので、ちゃんと確かめることは出来なかったが、それしかいないというのだから、性奴隷という存在は居ないのだろう。
うーん。
ということは、これは――
俺がオリジナルで創り出した、魔法なのか?
魔物使いがモンスターを手なずけるようなものか?
俺は二人のケツに記されたハートの紋様を撫でながら、思考する。
「ちょっと、いつまでさわってんのよ」
「も、もう仕事に戻らないと……」
二人は俺に対して、完全に従順という訳でもない。
「ああ、そうだな。そろそろ戻るか」
俺は検証を切り上げて、農作業へと戻った。
俺と快く話をしてくれて、この世界の情報源にもなっていたクサンゴさんだが、先日晴れて奴隷を抜けることになった。
ここから北西の位置にある、イーステッドという街へと旅立っていった。
イーステッドは通称、冒険者の町と呼ばれている。
新米冒険者が集まる、この国で三番目に大きな都市だ。
クサンゴさんは借金をすでに返し終っていて、この農場で貯金を蓄えていた。
行商人として第二の人生を始めると、珍しく張り切っていた。
この国の一大事業である、東のアルトレプス山脈を貫通するトンネルの完成が見えてきたそうだ。
そうなると、その先にある海と面する国との交易が新しく始まる。
その時に備えて、今から行商人として活動を始めたいらしい。
俺も早く冒険者としての生活をスタートさせたいと、少し焦りが生まれた。
だが、急いては事を仕損じる。
俺は地道に、戦闘で使用できる魔法の種類を増やすことにする。
次に習得するのは風魔法。
習得の要領は同じなので、二日である程度は扱えるようになった。
風魔法は球形の空気の塊を押し出すように使っても、大した威力は出なかった。
攻撃に使う場合は、相手を切り裂くように『風の刃』として使うか、風の刃をつむじ風状にして広範囲攻撃とするのが効果的な使用法だった。
風の魔法を利用して空を飛んでみようとしたが、これはまったく上手くいかなかった。人間の身体はかなり重い。
強力な風の塊を自分に当てて加速するような使い方は、効果はあるが操作が複雑で戦闘中に使うのは無理があり、しかも痛いので断念した。
俺は農場の林の中に隠れながら、風魔法の練習をしている。
攻撃ではなく、単に空気を移動させる練習だ。
少しずつ風を起こし、それをまとめて大きくしていって強風を起こす。
ただの遊びだが、魔法の練習にもなるだろう。
俺が魔法で遊んでいると、そこに一人の少女が現れた。
モミジリだ。
料理の仕事中だろうか?
手に桶を持っているから、この先の井戸で水汲みをするのだろう。
水を汲み終えて戻る彼女を見ていると、風魔法でスカート捲りをしたくなってきた。……奴隷の服は貫頭衣でスカートではないが、ニュアンスに変わりは無い。
俺は魔力を操って少しずつ大きくした風で、彼女を追いかけて服を下から綺麗に捲りあげて、白く眩しいヒップを露出させることに成功した。
「やった!」
モミジリは両手で桶を持っているので、手で押さえることが出来ない。
俺が達成感に浸っていると、看過しがたい事態が発生した。
農作業をしていた男の奴隷三人が、彼女を追いかけて取り囲み身体を弄り出した。
マズい!
労働奴隷にだって性欲はある。
それを刺激してしまうと、こういった危険もあるのか――
俺は慌てて駆けだした。
すでに奴らはモミジリの服をめくって、ケツを揉みだしている。
「おい、お前らッ!!」
俺は強い口調で怒鳴りつける。
奴らは一瞬ビクッとなり、こちらを向く。
「な、なんだ……ユージか」
「おい、向こうへ行ってろ。お前にはまだ早い――しっしっ……」
「だ、誰にも、言うなよ。――言ったら、ただじゃ置かないからな」
奴らは相手が俺だと確認すると、デカい態度で俺を追い払おうとする。
俺は農場の管理者に目を付けられない様に、普段は大人しくしているからな。
仕事はよくさぼるけど――
なるべく騒ぎは起こしたくない。
だが、この事態を招いてしまったのは俺だ。
「ゴチャゴチャ言ってないで、そいつから離れろ。そいつは俺の女だ」
「……は? お前、誰に向かって言ってるのか解ってるのか?」
「調子に乗ってんじゃねーぞ。マセガキがッ!!」
「い、痛い目を見なくちゃ、判んないかな? ボクちゃん?」
三人の男が凄んでくる。
労働奴隷が従順なのはあくまで雇用主や仕事に対してだ。
同じ奴隷――
しかも年下に対しては、イキった態度で来る奴もいるのか。
三人の男は指の骨をポキポキ鳴らすジェスチャーをしながら、俺に近づいてくる。
俺は三人をボコボコにしてやった。
身体能力強化や、闘気を使うまでもない。
最初に殴りかかってきた男の腕をいなして、その勢いを利用して地面に転ばすと、すかさず男のみぞおちに蹴りを入れる。
たったそれだけで、そいつは痛みで気絶した。
張り合いがない。
仲間が一瞬で無力化されたのを見た残りの二人は尻込みをするが、俺に喧嘩を売ったこいつらを見逃してやる気はない。
俺は二人に自分から接近すると、片方の腹に右ストレートを打ち込んだ。
男は俺のスピードに対応できずに、棒立ちで立っている。
そいつは気絶せずになんとか耐えたが、痛みで腹を押さえてうずくまっている。
最後の一人は腰を抜かして、へたり込んでいる。
俺はそいつの顔に、手加減した軽い蹴りを入れる。
「ぶごっ……」
男はそれで、簡単に後ろに倒れ込んだ。
俺は男の首を掴んで、力を込めて息が出来ないようにする。
「おい……この女は、俺のなんだ。それといつも一緒にいる、もう一人もな――手を出せば次は殺す。残りの二人にも言っておけ……いいな?」
男は喉が塞がっていて喋れない。
コクコクと首を振って、意思表示する。
俺は三人の男をシメた後で、モミジリの側まで歩いていく。
モミジリは桶を手に持ったままポカンとしていたが、俺が近づくと――
「あ、ありがとう。助かったわ」
いや、いいんだ。
もとはと言えば、俺のせいだからな。
「そ、それにしても、強いんだね」
モミジリは尊敬の眼差しで、俺を見つめる。
よしてくれ。
これじゃあマッチポンプじゃないか。
流石に、なけなしの良心が痛む。
「……カッコ、良かったよ」
モミジリは頬を赤らめて、告白するようなノリで褒めてくれた。
マジでごめん。
自作自演で好感度を上げる気はなかったんだ。
でもまあ、これだけ素直に褒められると悪い気はしないが――
俺はモミジリの尻をさわりながら、調理場へと送り届けた。




