表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メルドリアスの遊戯世界  異世界転生ハーレムキャラバン  作者: 猫野 にくきゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/50

現状把握

 雑草を取り除く作業中に、俺は思い出した。


 ああ、そうだ――俺は転生者だ。


 俺はこの世界に生まれ成長して、今この瞬間に前世の記憶を思い出した。

 ハーレム王になる!!

 という、今世の目標も含めて――


 女神メルドリアスに説明された通りだ。



「しかし、ハーレムを作るとかそんな状況じゃないぞ、これは――」


 何しろ転生した俺は、農場で働く奴隷だったのだ。


 年齢は正確にはわからない。

 成長が遅いだけかもしれないが、体つきはまだまだ子供といって差し支えない。



 転生したら、攫われた令嬢を助けたり賞金首を打ち取ったりして資金を作り、奴隷の女の子を購入する、といった定番の展開でハーレムを作れたらいいな。

 

などと考えていたが――

 俺自身が奴隷身分だった。



「こっから――どうすればいいんだ?? 」



 俺は雑草除去から薬草採取に作業を移行しながら、現状を整理する。


 今は女神歴1010年――

 俺はこの農場で奴隷として働いている。



 たぶん両親も奴隷だったと思う。


 物心ついた時には別の農場に一緒にいたが、おそらく五歳くらいの時に俺だけこの農場に連れてこられて、農作業の手伝いをして育った。



 けっこう広い農場で、見渡す限りの土地が農地になっている。 

 農場の北から道が続いていて、農作物の輸送に使われている。西の方向には森が広がっていて、南は山があり、東には平原が広がり川が流れている。



 農作物は主に小麦や大麦だが野菜も作っていて、牛や馬などの家畜も飼育されている。連作障害の知識もあるのか、計画的にローテーションして畑を休ませている。


 働いている奴隷も結構多く、全部で70人くらいはいる。年齢はバラバラだが男女別に、それぞれ分かれて居住している。


 働いていると給料は出ているらしいが、金銭を支給されたことは無い。


 銀行口座のようなものがあり、働いた分は自動で貯蓄されているみたいだ。

 どういう仕組みなのかは謎だが、意外とハイテクな世界だ。



 食事は朝と夕方に提供される。


 麦を煮込んだお粥に、野菜を煮込んだスープで、量は結構多く食べれる。

 肉は滅多に出ないが――。



 働く時間は特に決まっていないし監視員もいない。

 割り振られた仕事をこなせばそれでいい、というおおざっぱな感じだ。

 サボっていてもペナルティは無いが、サボる奴はいない。



 俺がまだ子供なせいか、割り振られる仕事は大したものはない。

 もう少し大きくなれば、力仕事も割り振られるようになるだろう。




 農場の中心部にある、少し小高い丘の上には農場主の屋敷が建っている。


 かなり頑丈な造りになっていて、農場主の一家が暮らしている。

 おそらくだが爵位持ちの田舎貴族なのだと思う。

 農作物の輸送を戦士団と共に行っている姿を何度か見た。





 俺たち奴隷の居住区は、馬小屋の隣に建てられている。


 馬小屋と同レベルの建物で、一応は個室が割り当てられている。


 たたみ一畳分くらいのスペースではあるが、個室なのはありがたい。

 それが連なって長屋になっている。

 大人が横になればかなり手狭なスペースで、ものすごく狭くて気密性は皆無だが、個人的には大部屋でなくてよかったと思う。




 農地の端の方には木で作られた柵が見える。


 時々、柵の外に『ゴブリン』が現れることもあるが、そんなときは農場主の使用人(おそらく戦闘要員だろう)の何人かで退治している。


 退治しなくても、女神の加護のかかった農場内には滅多に侵入してこないそうだが、目に見える場所にモンスターがうろついているのだ。

 気分的に放置はできない。




 俺にとって肝心なのは、この世界にはモンスターがいる。

 という事実だ。



 女神に説明されて分かっていたことではあるが、改めてファンタジー世界に転生したと実感して、少しだけ気持ちが昂る。


 このモンスターのいる世界を冒険してみたい――



 しかし、奴隷として生まれ育ったため、農場の外の世界の知識や常識は、ほとんど持ち合わせてはいない。


 冒険するのに必要な知識も力もない。

 言葉は一応は話せるが、文字の読み書きはほとんど出来ない。


「まずは情報と知識を収集して、そして何より力を付けないと――」



 転生して前世の記憶を思い出した俺は、とりあえず目標を『ハーレムパーティ構築』から『自力で生きていくための力を付ける』に設定し直した。


 ハーレムを作るにも、力が必要だからな。




 奴隷として育ってきたと言っても、全くの無学というわけではない。


 例えば、俺がいま採集している薬草は、すり潰して塗れば傷の直りを速めてくれるし、料理に混ぜて使えば、疲れが取れたり毒や麻痺といった状態異常を緩和してくれる。いってみれば万能薬だ。

 森や草原などにも自生している。


 けれどモンスターがうろついていて危険なので、農家が栽培していることが多い。

 この薬草を薬師と呼ばれる職業の人が『錬成』すると回復薬が出来る。



 こういった農場関連の知識であれば、自然と身についている。


 それと俺には物心ついた時から、感じる取ることが出来た力がある。

 それは当たり前すぎて意識すらしなかったのだが――前世の記憶を思い出した今なら、これが新しい知覚だと解る。

 

 この第六感。

 おそらくだが、これが『魔力』なのではないだろうか?




「けどなぁ、これはどうやって使えばいいんだ? 」


 見ようと思えば、目に見える。

 掌の上に集めたり、それを移動させたりといった操作も出来る。 

 自分の身体全体に行き渡らせたりすることも出来た。


 今もやってみたが、これといった変化はない。



「自分のステータスのチェックとか、出来たらいいんだけどな」


 俺がゲーム画面でよくある半透明のウィンドウをイメージして、何気なく呟くと――目の前にイメージ通りの、半透明のウインドウが表示された。


「おおっ!!」


 今までの奴隷人生で、こんなことは一度もなかった。

 さっきのイメージに応じて、表示されたのか?


 ――とりあえず自分の能力をチャックしてみる。



*************************

名前  ユージ

HP36/39  MP45/48  FP34/34


幸運力 012


スキル

空間移動 危険感知


借金 金貨58枚 銀貨3枚 銅貨39枚


才能

大魔導士の卵 戦神の欠片 強欲な器 


職業  労働奴隷Lv08(従順20) 農夫Lv05  薬草採取者Lv02  

    戦士Lv01 魔法使いLv01



*************************


 親切に日本語で表示された。

 俺のイメージだからか?

 たぶんそうだろう。

 だとすると魔力を全身に行き渡らせたのがカギか――。



 とにかく、俺は自分自身を『鑑定』できた。




 まあそれはいいのだが――

「借金ってなんだよ。そんなのした覚えはないぞ?」


 ――ひょっとして

 俺の養育にかかった費用とかか? それならまあ、仕方ないのか。


 ここで働いていていれば給料が出るといっても、子供の働きに対する金額だしな。食費や家賃を差し引いた後で、どれだけ残っているかは分からない。


 残っていたとしても、借金の返済に充てられているのか?


「その辺がどうなっているのか、はっきりしたことは解らないな。とりあえずは他の情報から整理をするか――」


 職業の『労働奴隷』に引っ付いて付与されている『従順』という補足がある。

 農場で働いている時も特に監視がなかったのは、この『従順』があったからか。




 俺の前世の名前の読みは『ユウジ』だった。

 そして今世での名前は『ユージ』。


「偶然――ではないよな。前世の名前と少し違っているだけだ」


 今後、転生者と出会うことがあれば、見分ける判断材料くらいにはなりそうだ。




「そんでもって肝心のステータスだが――HPとMPは解かるがFPってなんだ?」


 よく分からない。




 俺の戦闘能力は恐らくだが、農場の外に時々現れるゴブリンと同じか、それより少し弱いくらいだろう。

 これからモンスターと戦っていくことを視野に入れると心許ない。


 というか無謀なんじゃないか、これは……まだ身体も出来上がってないんだ。



 でもだからと言って、ここで大人しく働いているだけでは、せっかく転生した意味がない――まずは戦う力を伸ばす。


「職業に戦士とか魔法使いがあるようだし、才能はあるんだ。地道に鍛えていくしかない」

 

 

 魔力を流して、自分を鑑定することが出来た。

 それなら装備品や道具はどうなのかと、着用している奴隷の服に魔力を通して鑑定してみる。

 すると――


*************************

奴隷の服(支給品)  所有者 アレット・ブトゥーン   

強度  03

耐久値49/60

品質D

*************************


 装備を鑑定できた。

 半透明のウィンドウに、結構詳しい情報が表示された。




 俺の『才能』は期待できそうだ。

 これが女神の言っていた特別な力か――



 そして、なんといっても注目すべきは、このスキル。



 『空間移動』



 (俺ってそんなことが出来たんだ。――よし、早速使ってみるか)


 空間移動のスキルを使って、少し先に移動している自分をイメージする。

 すると空間移動のスキルは自動で発動して――



「おおっ!!」


 俺の視界が一瞬で切り替わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ