表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/50

 ☆ラッキースケベ


 季節は夏だ。


 日の入りは、一年で一番遅い。

 日が沈んでからも、まだ空気に熱が残っている。


 だが子供の身体のせいか、日本で暮らしていたころと比べると、夏や冬も少しだけ暮らしやすく感じる。


 昨日の探索では死にかけた。

 農場の周辺に、あんなに強い奴がいたとは想定外だ。


 探索は失敗だったが、収穫もあった。


*************************

名前  ユージ

HP 65/65  MP 67/67  FP 54/54


幸運力 

058~-011×2


スキル

空間移動 危険感知


所持品

魔石値   0000192

回復薬 2個


借金 金貨49枚 銀貨4枚 銅貨60枚


才能

大魔導士の卵 戦神の欠片 強欲な器


職業  

労働奴隷Lv09(従順-1) 農夫Lv06 薬草採取者Lv04 薬師Lv04 

戦士Lv08 剣士Lv04 武闘家Lv03

魔法使いLv04 魔物使いLv03

探索者Lv07 斥候Lv06 隠密Lv03 暗殺者Lv02

遊び人Lv07 ギャンブラーLv03

*************************


 職業レベルが上がり、ギャンブラーという職も増えた。

 幸運値に×2が付いたのはこれの影響だろう。

 

 手痛い目に遭ったが収穫もあったんだ。

 これからしっかり鍛え直していけばいい。




 前回の敗北を踏まえて、訓練内容を追加していく。

 モンスター退治は暫らくお預けだ。



 次の冒険に向けての準備をする。

 日が沈み周りが寝静まるのを確認してから、月明りの下で訓練を開始する。





 今の自分がどの程度動けるのか確かめるために、アクロバティックに体を動かしてみた。バク転、側転、宙返りなどの基本的な技は簡単にできた。

 まだ体重が軽く、身体を動かしやすいとはいえ思った以上に簡単にこなせる。


 いろいろな体の動かし方に慣れておいた方がいい。

 木に登ったりもしてみたり、筋トレだけではなくこういったトレーニングも増やすことにした。



 次に闘気の使い方の練習をする。 


 どう使えばいいのか分からなかったFPも、コツを覚ると当たり前に扱えるようになった。

 自転車を一度乗れるようになれば、その後は普通に乗れるような感じだ。


 闘気は感情でコントロールするので扱いは難しいが、自在に、そして消費を最小限に効率よく使えるように扱い方を練習する。

 


 闘気に関しての注意点は、魔法との併用が出来ないことだ。


 魔力で筋力をあげている時は、闘気で身体の強度を強化できない。

 闘気を武器に纏わせる使い方は出来たので、魔力で身体能力を強化している時は武器に闘気を込める――といった使い方になるだろう。


 

 木の棒はまた作った。

 素振りは基本だ。毎日継続する。

 戦士や剣士の経験値が入り、レベルが上がるからな。




 そして最重要となるのが、魔法の訓練だ。

 あのキラー・ビーとデカい蜘蛛が使っていた、透明な膜の魔法。


 あれを再現してみる。

 



 空間探知で探った時に魔力でさわった――あの感触は覚えている

 あれをコピーして再現することを目指す。

 





 俺の才能『大魔導士の卵』は、伊達ではなかった。


 一か月かかったが、あいつが使っていたものと同様のものが再現できた。


 俺はこの魔法を『隠密結界』と名付ける。


 隠密結界は自分が周りに発している『気配』を遮断する魔法だ。


 『気配』というのは音や熱、光に匂いに振動、そして魔力に闘気で、これらを感じ取ると、人は他者の存在に気付く。

 例えば相手に気付かれないように近づこうとするときには、足音がしない様に歩こうとする。これが気配を消すという行為になる。

 隠密結界を張ることで、より高い水準で『気配を消す』という行為が出来るようになった。


 逆に結界の外の情報は問題なく入って来るので、これを使えば一方的に相手の様子を把握することが出来る。




 この結界の弱点は、膜が何かに当たるとすぐに弾けてしまうので、物体との接触は注意しなければならない。


 高密度の魔力で結界を覆うと、ぽっかりと空間に穴が開いている感じになるので違和感で気付かれる。

 目に魔力を集めて見れば、見破ることもできる。


 以上が魔法を再現する過程で、実験と練習をくり返してわかったことだ。

 

 






 魔法を再現した俺は、次の段階に移ることにした。

 隠密結果の訓練を兼ねて、効果を実証しようと思う。 




 モンスター相手に、いきなりぶっつけ本番で使う気はない。


 俺は昼の休憩時間に、隠密結界を張って例のメスガキ二人組を探す。

 他の奴隷だと俺が近づいても、特に反応しないから検証できない。




 俺が探していると、あぜ道の向こうから二人組が現れた。

 二人は俺の姿に気付かずに、喋りながら歩いている。


 俺は二人の後ろを尾行することにした。




 二人の会話が聞こえてくる。


 どうやらこの二人はお互いのことを、前世の名前で呼んでいるようだ。

 生意気な方が『アカネ』で大人しいほうが『モミジ』。


 二人はまだ、俺の存在に気付かない。

 試しに二人の前に回って手を振ってみたが、何の反応もない。


 魔法の再現は成功したようだ。

 この魔法は相当使えるだろう。

 俺はまた強くなった。



 俺はそろそろ離れようとしたが、この二人の向かう先に女子トイレが見えた。

 二人は昼に休憩時間にトイレにいくつもりらしい。


 そして俺は今、透明人間だ。



 もう少し付いて行ってみるか――

 もうちょっとだけ魔法の検証が必要な気がする。


 トイレは用を足す個室が複数ある。

 しかし二人は、他が空いていても交替で使用するようだ。

 一人が用足しに入り、もう一人が外で見張りをしている。

 

 最初は『モミジ』が入り、『アカネ』が見張り役だ。

 トイレの仕切りは完全ではない。

 上からも下からも、覗こうと思えば覗ける。


 『モミジ』はいまケツを丸出しにしているはずだ。


 覗いてみるか?

  

 しかし、上から覗くのは無理だろう。結界が割れる。

 では下から覗き込むか?

 

 だがそのためには俺が地べたを這わなければならない。

 それは少し違う気がする。

 

 俺は自分が地べたを這いたいわけではない。

 こいつらを這わせたいのだ。




 それに罪科ポイントのこともある。


 この世界で悪行を重ねれば、加算される数値だ。

 そんなものは、溜めない方がいいだろう。



 まあ――なんか音は微かに聞こえてくるし、今日のところはそれだけでいいか。

 俺がそんなことを考えている間に、『モミジ』がトイレから出て『アカネ』が入っていった。


 さて、生意気なメスガキの恥ずかしい音を聞かせて貰おうか。

 俺が目を瞑り待ち構えると――


「きゃッ……」


 『モミジ』のか細い悲鳴が聞こえた。

 えっ? うそだろ? 気付かれた? 魔法が解けたのか??



 やばいッ!!


 俺が目を開けると、少し大きめの蛇が『モミジ』の足に絡みついている。

 蛇はそのまま、足を伝って『モミジ』の顔に近づいて、首筋に噛みつこうと口を開けて――

 そのタイミングで俺が蛇の喉を掴んで、『モミジ』から引き離した。

 

 モンスターとの戦闘経験を積んだ俺にとって、この程度の蛇など物の数ではない。

 俺は蛇の喉を握り潰し、念のために地面に叩きつけて頭を踏み潰す。



「大丈夫か?」

 

 俺が『モミジ』の無事を確認しようと顔を向けると――

 トイレのドアが開いていた。

 その奥でお尻を丸出しにして座っている『アカネ』がこちらを振り返る。

 俺の姿を目でとらえると、驚愕の表情を浮かべる。

 


 俺に見られていると気付いても、すぐには止められないらしく『アカネ』は排泄物を放出し続けている。


 シャアアァァアアア!!





 どうやら突然現れた俺に驚いた『モミジ』がバランスを崩し尻もちをついて、その時にトイレのドアに頭をぶつけて、ドアが開いてしまったようだ。


 このトイレに鍵なんか無いからな。


 俺は即座に『アカネ』の周囲を覆うくらいの大きさの隠密結界を張った。


 その直後に――

 『アカネ』があらん限りの声量で悲鳴を上げた。



 なんとか隠密結界が間に合い、『アカネ』の悲鳴で騒ぎになることは無かった。

 




 今回に限っては『モミジ』が俺の味方をしてくれた。

 蛇から助けて貰ったと説明してくれて、『アカネ』も渋々矛を収めた。

 

 女子トイレ付近をうろついていたことを、咎められる前に俺はその場から離れた。



 隠密結界の実証実験は大成功だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ