表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

[短編]笑ってはいけない中学最初のホームルーム

作者: ( ̄^ ̄)(・ω||こんにちは

ーーーーーーーーーーー

今日は始業式が終わり、中学最初のホームルームだ。しかしながら、どうせこのクラスも来年には解散するのだし、特別親しくしようとは思わなかった。先生も怖そうだしハズレっぽい。

「皆さんね、中学になったばかりで緊張してると思うけど、そんなに心配しなくていいからね。」

担任の口山先生が頭を下げたと同時に、彼の頭から黒い物体が床に滑り落ちた。窓から差す光が彼の広過ぎる額に乱反射し、ミラーボールのように輝いた。

「ーえ?」

1人の男子生徒が光の速度で異変に気がついた。先生と目が合うと同時に、目を逸らす。

「大原君、目、合いましたねぇ」

「…」

初日から先生のデリカシーを無視して、笑ってしまうのは誰であれ良くないと気づくだろう。口山先生は、何故か張り詰めているこのクラスの雰囲気を和ませるために、ある秘策を思いつく。長年の経験から、直感的に最善策を思いついたのだ。

「キンチョーしてる皆さんに、私から笑いのプレゼントを差し上げます」

生徒一同は、内心ホッとした。先生のギャグで堂々と笑えることを。多くの生徒達には、もう笑いを堪えるのは限界だったのだ。すると先生は小さな定規を手に取り、その手を高く上げた。

「わた〜しのひラたい額に〜飛コウ体が〜飛来ッ!」

ペチンっと音を立てて、定規が先生の額に着陸した。正直面白い。普通の状況なら多少は笑っていただろう。だが今は普通の状況ではないのだ。笑いを解放する準備が整いまくっていた生徒達は、突然また笑ってはいけない空間にさらされた。遂に、あまりにも広過ぎる着陸路が、先生の右手をつたい、先生の脳へと伝わってしまった。

「…」

先生の視線が床へ落ち、あの黒い物体を認知する。

「ぐふっ!」

大原に視線が集まる。大原の肩が揺れている。先生はまだこの状況を受け止め切れていない様子だ。しかし、生徒達の心拍数は上がる。同時に、呼吸が乱れてきた。私もだ。もう耐えられない。ふと、思う。いつも笑いには犠牲がつきものだということを。いくら善意があろうとも、我が身を削らない限り素人には大爆笑は取れないのだ。そうだ、自虐ネタや他虐ネタが多いのはその理にかなっているからなんだ。笑うなら、中途半端は失礼だ。笑おう。笑いまくろう。

その場にいた先生以外の人間は、無邪気にも笑い、共に見つめ合った。


ー私達のクラスは受験が終わった今でも仲がいい。


それはきっと、


口山先生のおかげだ。ー



ありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ