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人違い

私は、どこかの部屋に連れ込まれた。目も口も塞がれているから、音と匂いでしか判断できない。


ひとまず、状況を整理しようじゃないか。


護衛をなんとか説得して、レイ兄様と喧嘩して…今思えばくだらない内容だわ。とにかく、喧嘩して路地裏に駆け込んで、しばらくしたら戻ろうと思っていたら、このガラの悪そうな男たちに捕まったのよね…

えっ、なんで!? お父様目当てかとも思ったけれど、様子を見た限り違うみたいだし、なんだか私のことを知ってるみたい…? 私はあなた達のことなんて覚えてないわよ! 


私は心の中で文句を言うと、小さな窓から見える男たちを睨みつける。ダメ元で手枷を外そうと試してみるけれど、やはりびくともしない。あの時、逃げようと思えばできたんだけど、私には魔法があるからと油断していた。


おかしなことに、男たちは私が公爵令嬢のアイシャーナだと知らない様子なのに、封じの手枷を私につけた。だから私は魔力も神聖力も使えない。


封じの手枷なんて、高いから普通は手も出せないのに。この男たちみたいな輩には尚更よ。きっと男たちからしたら私は無力な6歳の小娘だから、この手枷を用意していたとなると辻褄が合わない。…裏がありそうね。


男たちは私に逃げ出す力なんてないと思っている。でも残念、見落としていることがあるわ。封じの手枷は体内(・・)の神聖力と魔力にしか効果がないのよ。お父様が過保護なおかげというか、私は今日街にくるにあたって結界術をあらかじめ発動させておいている。だから私に怖いものなんてないのよ。それでも結界は一日しか持たないから、それまでにこの状況をどうにかしないと。


ああ、それともう一つ。私が公爵令嬢だと知らないということは、当然私がこの国の王太子の婚約者だということも知らないようね。浅はかだわ。将来王太子妃になるかもしれない私に、この状況に対処できる術がないとでも?


そう思考していると、近くからドアが開く音がすると同時に、男二人の会話も聞こえてくる。


「なあ、ほんとに大丈夫なのか? 仮にも貴族なんだろ?」


「なに言ってんだ今更。それに、元平民のお嬢様なんて誰も気にしやしねえさ」


「それもそうか! ほんと、元平民のくせに貴族の養子になれたからって調子に乗るからこうなるんだよ。ざまあみろだぜ」


…元平民? 私の前世を知ってるわけじゃないだろうし、ということは私を他の誰かと勘違いしているの?


その時、私は前にお父様が言っていたことを思い出す。



『…何の情報も得られなかったんだ。ハーレン伯爵に引き取られる前の令嬢は、まるで初めから存在しなかったかのように目撃情報が皆無なんだよ。そして唯一分かっているのが…』


『分かっているのが?』


『…何故か、お前と外見が瓜二つらしい』



…えっ!! もしかしてなくとも、私をハーレン伯爵令嬢だと思ってるの!? なるほど、それなら街の人達の反応も、全て納得がいくわ! 


確かハーレン伯爵令嬢の髪色は銀髪で、髪色が私とハーレン伯爵令嬢を見分けられる唯一の方法だと、誰かが言っていた。ええ、私の今の髪色は銀髪だから、見間違えるのも無理ないわね。少し男たちが哀れに思えてきたわ。元平民の伯爵令嬢と間違えて拐ったのが、公爵令嬢かつ王太子の婚約者だなんて。まあ、誘拐が正当化される訳ではないけどね。


はあ…どうしようかしら。男たちがハーレン伯爵令嬢と何があったのかは知らないけど、これ以上探る必要はなさそうだしね。大人しく助けを待つしか…ああ、みんな心配してるだろうなあ。


と、思ったところで、ふと疑問が浮かぶ。


あら? でも、もし私をハーレン伯爵令嬢と勘違いしていたとしても、よっぽどのことじゃない限り、わざわざお高い封じの手枷を使う必要はないんじゃ…


次の瞬間、昨夜の夢の中でも聞いたあの声(・・・)が、なぜか頭をよぎった。


『肝に銘じなさい。また油断して誰かについて行っては、相手の思う壺よ』


えっ…? 相手? 誰のことを言っているの?


そして、言葉の意味を理解した時、全身から血の気が引くのを感じた。


しまった! なんでその可能性を考えていなかったんだろう! 相手の目的は、初めから私だった(・・・・・・・・)んだ! 


男たちの目的はハーレン伯爵令嬢だったとしても、男たちを裏で操っていた黒幕の目的は私。だから男たちを利用して、私を拐ったんだ。きっと男たちが私の居場所を知っていたのも、封じの手枷を男たちに渡したのも、全て黒幕の仕業だ! 


まずい。だとしたら状況が変わってくる。私が王太子の婚約者だと知っているはずだから、私に対処する術があることにも気づいているかもしれない。


すぐに辺りに意識を集中すると、男たちの声が聞こえないかわりに、私のすぐ傍らに一人、いや、人と言って良いのかわからない存在がいることに気づくのに、時間はかからなかった。


ゆっくりと、その存在に顔を向ける。


「やっと会えたわね、リアナの愛し子」

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