出会い
俺には幼馴染みがいる。
努力家で頭が良く、綺麗で礼儀正しく、清廉潔白。
運動は苦手だけどそれも好いところ。
だから小学校でも中学校でも、もちろん高校でも人気だった。
そんな彼女、秋実 林檎。
そんな人の幼馴染みの俺はというと、俺自身に特に特別な所は残念ながら無い。
ただ俺は、俺と林檎の親同士が仲が良く、俺たちもその影響で小さい頃から遊んでいた。
そう、幼馴染みという関係だ。
そんな林檎に俺はいつの頃からか恋をしていた。
明確なことは覚えていない。
ただいつの間にか彼女に目が引かれるようになっていた。
だけど告白する勇気は無くて、そのままズルズルと高校まできた。
そして今、どうなったかというと、
「ハァ…」
高校に入学後、3ヶ月がたち夏の日が差す7月の今日。
俺は外の人の来ない階段でため息を吐く。
俺の目線には二人で中睦まじく弁当を食べる男女。
俗に言うカップルである。
そのカップルの女子の方は、俺の好きな秋実林檎だ。
…わかってる。俺が何もしなかったのが悪い。
わかってる。わかってはいる。
だけど
「ハァ…」
…もうすぐ昼休みも終わる。
教室に戻ろう。
そう思い階段を降りると、
「うえぇ!ぇぇうぁぁぁん!」
同じクラスの女子が号泣していた。
名前は浜匙 花。
「……えっ、あっ、だ、大丈夫?」
浜匙にハンカチを差し出す。
「あ、ありがとう…」
ハンカチを受け取った浜匙は涙をふいた。
「ごめん。明日洗って返すから」
「気にしなくていいから、何かあったの?」
女子は、先ほど俺も見ていたカップルに目線を送った。
「私ね、磐長 姫斗君と幼馴染みなの」
磐長姫斗といえば、確か林檎と付き合ってる男子だ。
良いやつであるのは知っているが少し複雑だ。
「ああ、磐長は知ってる。それで?」
「うん、それでね、」
そこまでいうと浜匙の目が潤んできた。
そして
「私ね、磐長君のことが好きだったの、うわぁぁぁあぁん」
そういってまた泣き始めた。
またハンカチを渡す。
「…実は俺もね」
そういって俺も林檎のことを話した。
「…そう、なんだ。似てるね、私たち」
そこで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「あ、もう時間だ。行こ花一君」
「ああ」