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僕らが好きだった空  作者: 水上橋博士
8/15

8.JUDE

今から約一ヶ月前。

名もなきあの曲を歌った帰り道。


この曲の良さを最大限に生かせる人を思い浮かべた。

先日会ったばかりかもしれないが、ユキの顔、そしてドラムが頭から離れなかった。

少し迷いはしたが、「歩き出す」と決めた以上引き下がれなかった。


「もしもし?春樹?」

「おう!」

「おう!じゃねえよ!この前ライブ来たのか?」

「行ったよ!後ろで腕組んで見てた!」

「何様だよ!全然気づかなかった。で、どうだった?」

「圧倒された」

「嬉しい言葉だね~」


その後沈黙が訪れた。


「何か用事あった?」

ユキの問いには、タバコに火をつけてから答えた。


「哲と宗太っていたじゃん?」

「あ~、お前の友達の?」

「一緒に上京して、今毎日バカやって過ごしてる」


それで?というような間だった。


「正直、デカイ口ばっか叩いて、ろくにギターも弾いてなかった。でも、この前ユキのライブ見て、このままじゃダメだって思った」

タバコの火を消して、黙って聞いていたユキに問いかけた。


「よかったら、また一緒にやんねえ?一緒にJOHNNYを越えよう!」


「お前が言うと変な説得力があるんだよな~」

少し笑いながらユキが答えた。


「今までサポート含めてやってきたバンドの中でも、JOHNNY以上のバンドはなかった。目標は高いぞ?」

「わかってる」

「バンド名は?」

「まだそこまでは」

「そういや、JOHNNYは俺らがつけたんだよな。たまたま二人してチャック・ベリーにハマってさ~。やるならバンド名も越えないと!」

「だな!そうだな~。じゃあ、JUDEとか?」

吹き出したユキはタバコでも吸っていたのか、むせていた。


「ビートルズか!大きく出たな~」

「それだけ本気だって解釈してくれよ!」

「やろうぜ!」


「JOHNNYを越える!」


カーテンを明けると、見事な満月が闇を照らしていた。


上京を、JOHNNYを越えると決めたあの日と全く同じ満月。


狼男さえ、変身を忘れて見とれてしまう程だろう。



「じゃあ、まだメンバー二人?」

「とりあえずベース探してるよ。それで形にはなるから」

串丸では哲、宗太、時折大将が春樹の話に聞きいっていた。


「目星はついてんのか?」

「ユキのサポートミュージシャン仲間も当たってみたけど、イマイチだったんだよな~」

「サポートミュージシャンつったらプロだろ!?それでイマイチか!」

哲は驚き混じりの呆れ顔だった。


「プロだからもちろん上手いよ!でも上手いだけだった。何かさ、上手いより凄いを求めてんだ!」

「難しいな~」


「来週うちの学祭あんだけどさ、結構音楽サークルのレベル高いみたいだから、来てみたら?」

「所詮大学のバンドだろ?」

「まあ、試しにさ!ついでにうちの映画見に来いよ!」

「宣伝かよ!それが目的だろ!」

「一回見ても、デカいスクリーンで見ると違うぞ!」


来週。


ベーシスト発掘に期待はしてないので、ユキには声をかけない。

久々に宗太の映画も見たい。


ただそれだけ。

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