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僕らが好きだった空  作者: 水上橋博士
13/15

13.宗太の熱意と哲の決意

「やってらんねえよ!こんな学校、こっちから辞めてやるよ!」

「はい!ありがとうございました!じゃあ、次の方。同じセリフでお願いします」

「ありがとうございました!!」


宗太はあるスタジオで行われたオーディションに来ていた。


思い立った理由は、春樹のライブを見てから、負けてられないと感じたこと。

そして自作の映画、SURVIVAL IN THE CITYが思いのほか、大盛況だった為だ。

今ではネット上での再生数、コメントの書き込みがかなり増えていた。


映画が評価されることは嬉しいが、ほとんどは、イコール監督の評価に繋がる。

自分の演技が評価されないわけではないが、これが監督と演者の違いだろう。


「桜井さん。続いて面談どうぞ」

「はい!よろしくお願いします!」

小さな部屋に、映画「School Out」の監督、谷達郎と、その他スタッフが並んでいた。


「今まで演技の経験は?」

「自分達のサークルで映画を撮って、主演やりました!」

「どんな映画?」

「学生がキャンプに行き、トラブルの中、食料もない状況で助け合い、仲間の大切さを知るという内容です!SURVIVAL IN THE CITYって言います!」

「あ~、ネットで噂になってるやつでしょ?見たよ~」

「ホントですか?ありがとうございます!」

助監督と思われる人物が見てくれた。素直に嬉しかった。


「有名なの?」

流石に谷監督までは見てなかったらしい。


「今若者の間で人気ありますよ。見たことある顔だと思ってましたが、彼の演技も良かった」

「ありがとうございます!」

「何故この映画に?」

「監督の作品には沢山影響を受けまして、今後役者をやる上で学ぶことが多くあると思い、身近で勉強させて頂きたいと思ったからです」

「さっきの演技テストも悪くなかったから。ネットで見れるんでしょ?サバイバルなんとか。それ見てから合否の連絡するから」

「是非お願いします!」



「超緊張した~」

「誰?」

「知らねえの?谷だよ!星降る夜って映画有名じゃん?その監督だよ!」

「あ~、あれ面白かったな~」

串丸で春樹と二人飲んでいた。


「受かればいいな~。そしたらプロか?」

大将は随分嬉しそうだ。

「事務所との契約なんてないけど、上手くいけば、いずれどっかから声かかるはず!」

春樹から見ても、眩しいくらいキラキラした目をしていた。


「最近哲と会ってるか?」

「連絡つかない。今日だって」

「何か避けられてる感じするよな?春樹のライヴの打ち上げも体調悪いって来なかったし」

「悪く思うなよ?あいつも色々悩んでんだろうから」

「何にさ?」

「お前らだけ夢に向かって頑張ってることだよ。今までずっと一緒だったんだ。素直に喜べないんだろ?」


「よし!春樹!バンドに入れてやれ!」

「何のパートでだよ!」

「何かあんだろ?ギロとか!」

「チョイスはいいな!」

笑いの後に訪れた沈黙。


「確かに、俺らも最近付き合い悪かったよな?」

「しょうがないけどな…」


「お前ら!だからってここで止まるなよ!」

「当たり前だよ!」


その二日後のスタジオ帰り、春樹は一人串丸に寄った時に大将から聞いた。

宗太が見事オーディションに合格したこと。

そして哲が実家に帰ったこと。



「おう!久しぶり!」

「お前何で言わないんだよ!」

「何が?」

「実家帰ったって聞いたぞ!」

春樹の声は若干怒りが混じっていた。


「一時帰省だよ!親父が倒れたもんでさ」

「またこっち戻ってくんだろ?」

「の予定」

春樹の気も知らずに、哲は何か食べているのか、口をモグモグさせていた。


「だいたいライブ来たくせに打ち上げ来ねえし!」

「何か腹痛かったんだよ」

「串丸にも顔出さねえし」

「いやいや!間違いなくお前らよりは行ってるよ!たまたまだろ?」

春樹は何も言い返せなかった。


「宗太、オーディション受かったらしいぞ」

「マジか~。よかったな!」

素っ気ない返事を聞いた時、哲は煎餅の様な物を食べていることに気づいた。


「最近あんま会ってないし、せっかくだから言わせてもらうわ」

「何だよ?」

「ライブ超良かった!絶対プロになれる!」

無言の春樹に続けた。


「正直羨ましかったんだよ。お前も宗太も。自分の場所で頑張って。俺だけ口だけでさ」

「何かあるって!お前が世に名前残せることが!」

「何かいつか言ってたろ?歴史に名を残すパン屋になれって。あれ本気で考えるかな~」

「継ぐの?」

「まだ決めてないけど。どっちにしてもすぐには無理だし。一回東京には帰るよ!」

「帰って来たら連絡くれよ!三人で飲み行こうぜ!」


電話を切った後、哲の会話をそのまま宗太に伝えた。

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