11.始まりの9.18
「決まったよ!ライブ!」
「マジ?いつ?」
「9月18日!サウンドマスターで!」
スリーセブンの近くのライブハウス。
サウンドマスターにて、JUDEの初ライブが決定した。
「9月18日ったらジミヘンの命日だよな?何かジミヘンの曲やる?」
「いいね!やりたい!」
ケビンが乗ってきた。
「もう日がないな。よく決まったな?」
通常、ライブハウスには1、2ヶ月前から出演のオファーをしなければならない。
「コネだね!スタッフさん皆知り合いだから!」
「流石ユキ!心強いわ~」
「決まったか~」
「チケット出来たら持って来るよ!」
久しぶりに串丸に三人が集まった。
「楽しみだな~!」
「二人とも来れるんだろ?」
「もちろん!」
「あ~、俺はまだわかんねえわ~」
濁したのは哲だった。
「お前な~。春樹の第一歩だぞ!どうせ暇なんだから応援に行こうぜ!」
「行きたいけど、二週間後だろ?そんな先の予定なんてわかんねえよ!」
こいつは何を言ってるんだ?春樹と宗太は顔を見合わせた。
次に口を開いたのは春樹だった。
「まあ来れたらでいいからよ!」
「美奈ちゃんも来るのか?」
「さっきLINEしたけどまだ返って来ない。多分バイト中だろ」
いつもより口数少ない哲を横目に、久々に会ったことで、二人は近況報告で盛り上がった。
「そのうちMV創ってくれよ!」
「任せとけ!」
『絶対行きます(^o^)/』
河合美奈から返信があったのは、深夜12時を回った時だった。
「始まりの9.18」
そう書かれたJUDEのフライヤーは、町中の電信柱に貼られた。
もちろん串丸の店内にも。
そしてその始まりは着々と迫ってきた。
本日の出演バンドは三組。
その全てが初ライブであった。
その為、ライブ名は「始まりの9.18」となった。
トップは「BEAT69」。
疾走感のあるパンクロックバンド。
メンバーそれぞれが有名インディーズバンドの出身らしく、観客からの歓声は凄かった。
JUDEの出番は二番目であった。
一曲目はユキの前のバンド、「BLACK CHERRY」の代表曲。
『STAR LIGHT』
唯一、ユキが作詞、作曲した曲だ。
春樹もケビンも顔は知られていないが、ユキのファン達でそこそこ人が集まった。
一発目にBLACK CHERRYの曲を持って来たのは正解だった。
流石はデビュー直前まで行ったバンド。ユキの人気は強く、つかみは完璧だった。
ちょうどホールの中央に、宗太と美奈の姿を見つけた。
隣には哲もいた。
ぶつぶつ言いながらもついて来たんだろう。
一瞬客席の宗太と目を合わせた。
「次の曲は、俺の友達が創った映画の曲です」
ライブが進みにつれ、春樹の歌、ケビンのベースにも次第に歓声が増えていた。
最後に、満月の夜に一人歌ったバラード。
「僕らが好きだった空」と名付けた曲で、JUDE最初のステージは終わった。
最後はギブソンの使い手三人。 フライングVのギターボーカル。 レスポールのギタリスト。 ファイヤーバードのベーシストと、打ち込みのドラムの3ピースバンド。
「三銃士」が締めくくり、始まりの9.18は幕を閉じた。