可能性の話なら、
更新です。短めですが、楽しんで頂けたら幸いです。
三人の手紙が、同時に見つかった。
「枚数的には、僕が多そうだけど……」
「枚数なんかどうでもいい」
切り捨てるように、『私』は言い切った。
「問題は、なんで私達の手紙がここにあるのかってことでしょ」
「……なら、考えられる点を挙げてくとか?」
「推測ってことか?」
「他にやりようがないし」
数秒、間があった。
「可能性は低いけど……」
手を挙げたのは、『僕』からだった。
「一緒に住んでた、とか」
「ないだろ」
「ないでしょ」
即決だった。
「ルームシェアとか、私が無理」
「そもそも、三人で住むには狭すぎるだろ」
『俺』の言う通りだった。
この部屋は、あくまで一人の居住スペースだけだった。
とても三人が住める場所ではなかった。
「なら、他は?」
「ここに住んでたとか」
「それはさっき却下したでしょ」
「いや、一人で住んでたって話だ」
三人で住んでいないなら、一人で住んでいたなら?
「なら、自分の家に手紙があって不思議じゃないだろ」
「理屈は分かるけど……」
「だったら、なんで他人の手紙が出てくるのよ」
「それは……」
答えに詰まってしまった。
可能性はなくはないけど、これにも疑問が生じてしまう。
自宅から自身の手紙が出てくるのはいいとして。
何故、他の二人の手紙や葉書まで出てくるのか。
確証はないものの、三人共知り合いではない。
そんな気がするのだ。
少なくとも相性がいいとは言い難く。
「なら、他にどんなのがあるんだよ」
「私? 私は……」
考えて、思い至る。
「家主が私達にとって共通の知り合いだったとか」
当たり障りのない答えだった。
「私達が知り合いじゃなくても、家主自体が連絡を取り合ってて……」
説明しているのに、何故か『私』は言い辛そうにしていた。
気付いていたからだ。
「だから……」
言葉が途切れた。
そして、酷く渋い顔で、自分の答えを却下した。
「ないわ、これ」
「確かに」
「そうだな」
他の二人も同意見だった。
一番可能性がありそうな答えだった。
事実、前にも似たような可能性が『俺』からも出ていた。
だけど、今は違う。
名も顔も知らない『家主』が共通の知り合いだった。
そんな可能性が一番無難で、あり得そうなのに、
三人共それはないと、何故か確信していた。