時計の中身を見てみれば、
短めです。楽しんで頂けたら幸いです。
「で、何話す?」
「何話すって、お前……」
「決めてなかったの?」
呆れた顔をした『俺』と、意外そうに目を丸くする『私』。
そんな二人の視線を受けながら、『僕』は肩をすくめた。
「二人の意見も聞かないといけないし」
『僕』だけが決めて、勝手に話を進めるのもどうかと思う。
そんな主張に、『俺』と『私』は頭を捻った。
「何からって言われてもな……」
「やっぱり順当に考えれば、部屋の謎についてじゃない?」
「まぁ、妥当だよな」
「じゃあ、それからでいい?」
意見は一致した。
「なら、メモ取るのは俺でいいか?」
「メモ?」
「整理するんだったら、書き出した方が早いだろ」
「……真面目ね」
「茶化すな」
言いながら、『俺』はメモ用紙とボールペンを手に取った。
「じゃあ、分かってる範囲で」
とはいえ、この部屋について知っていることなどそう多くない。
「まずは、部屋から出られない」
「窓も玄関も開かない」
「鍵はない」
「冷蔵庫の中は空っぽ」
「家主がいるかどうか」
「部屋の中なら行き来自由」
「水道は使える。蛇口捻れば水が出たし」
「カチカチうるさい」
そこまで言い切った後、そういえばと三人は顔を見合わせた。
「あの音、結局何だったんだ?」
「さぁ?」
「あれじゃない?」
『私』が指差す先に、他の二人も目を向けた。
ひび割れた時計が、床に転がって落ちていた。
「あの音、時計に似てるもの」
「そういえば、そうだな……」
「けど、あれはないよ」
「なんでだよ?」
「だって、あれ……」
言いながら、『僕』は時計に近付けた。
そうして、手に取って、
「電池、入っていないから」
ひび割れた時計の裏側に、電池を入れる場所がある。
そこは蓋を開けてみれば、空っぽだった。
「ホントだ……」
「空っぽね」
「さっき見たんだけど……」
家探しをしていた時、時計が気になった。
首吊り死体があったときから、『あれ』だけ変わらずそこにある。
だから、何かあるのかと思えば、
拍子抜けするような結果だった。
「だから、これはないと思うよ」
そもそも動くかどうかも怪しかった。
ひび割れているのもあって、壊れている可能性がずっと高い。
「あの音は保留でいいと思う」
「かもな」
「それならそれでもいいけど……」
「なら、次は――」
言いながら、ひび割れた時計を床に置いた。