表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

月と猫

作者: 翠夢 隷璃

はじめてかく種類でしたから、変な感じでしたらアドバイスお願い致します…


「月が綺麗だね」

とあなたが言った。

夏目漱石のアイラヴユーの話を思い出してしまって、なんだか内心気恥ずかしく思って、ちらりと横に居るあなたを見た。

でも、当のあなたはけろりとしているのだから、漱石の話も知らないのかしらと思ってなんだか私が悲しく、もっと恥ずかしくなってしまった。

「そうだねぇ」

やっとの思いでそう答える。

「ねーぇ、どうして人って、月が綺麗に見えるのかね?ね、ただの、月じゃないか」

あなたはたまにこう突然変な事を言う。私は困ってしまったんだけれど、あなたは私をじっと見る。

「さぁ、どうしてだろうねぇ」

誤魔化しながら月を見上げる。あなたは黙って空を見た。

「月ってのはねぇ、黄色くて、まんまるだろう?お前の目みたいにねぇ…でもよぉく見るんだよ、違う違う、もっとだよ…じぃっと見るとね、凸凹…クレーターがあるのさ…日本人がウサギと言う奴さ」

クレーターぐらい知っている。あなたは、私に何か言う時にいつも私が何も知らない、「仕方の無い奴だ」というように言う。可哀想なあなた。私は、あなたの思ってるよりもずっとずっと物知りだ。

空を見上げる時の姿勢が疲れたのか、あなたはごろんと寝転んだ。

「ね、あんなに凸凹があるのに、人は美しいなんて思うんだい?…いや、今日の月は格別にキレイ…」

だんだん話の筋が無くなって来た。あなたはお酒に弱い癖に、いつも酔っ払おうとしてのみすぎる。特別落ち込んだ時なんて、もっと酷い。

「人は月から来たんだよ…かぐや姫…わかるかい?僕らはかぐや姫様の子孫なんだよ…月が綺麗に見えるのはね、海から来た私達の目には、深海から見える海のあぶくに…いや、まぁ、どちらにせよだねぇ君、愛国心…故郷を愛するこころだよ…月が綺麗に見えるのは…」

全く支離滅裂である。

私の主人は、少しおかしいのでは、ないでしょうか?

ぐぅぐぅといびきをかきながら寝るあなたは、とても心配だ。

明日はご本の締切だなんだなどと泣いていたのに、紙は床にばらばらだ。

「お前の話を書くよ。言葉がわかる猫…そんなのは、どうなんだろうか?…お前に言っても、わからんか」

楽しみにしていましたのに、あなたは仕方ないお人だ。

側にあった薄い布を上手くあなたにかけて、懐に潜る。

ここより居心地が悪い場所も、この家にはないでしょう。お酒の匂いがする。私の月は、とんでもないわねぇ。苦笑しながら、私は微睡みの手を掴んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ