月と猫
はじめてかく種類でしたから、変な感じでしたらアドバイスお願い致します…
「月が綺麗だね」
とあなたが言った。
夏目漱石のアイラヴユーの話を思い出してしまって、なんだか内心気恥ずかしく思って、ちらりと横に居るあなたを見た。
でも、当のあなたはけろりとしているのだから、漱石の話も知らないのかしらと思ってなんだか私が悲しく、もっと恥ずかしくなってしまった。
「そうだねぇ」
やっとの思いでそう答える。
「ねーぇ、どうして人って、月が綺麗に見えるのかね?ね、ただの、月じゃないか」
あなたはたまにこう突然変な事を言う。私は困ってしまったんだけれど、あなたは私をじっと見る。
「さぁ、どうしてだろうねぇ」
誤魔化しながら月を見上げる。あなたは黙って空を見た。
「月ってのはねぇ、黄色くて、まんまるだろう?お前の目みたいにねぇ…でもよぉく見るんだよ、違う違う、もっとだよ…じぃっと見るとね、凸凹…クレーターがあるのさ…日本人がウサギと言う奴さ」
クレーターぐらい知っている。あなたは、私に何か言う時にいつも私が何も知らない、「仕方の無い奴だ」というように言う。可哀想なあなた。私は、あなたの思ってるよりもずっとずっと物知りだ。
空を見上げる時の姿勢が疲れたのか、あなたはごろんと寝転んだ。
「ね、あんなに凸凹があるのに、人は美しいなんて思うんだい?…いや、今日の月は格別にキレイ…」
だんだん話の筋が無くなって来た。あなたはお酒に弱い癖に、いつも酔っ払おうとしてのみすぎる。特別落ち込んだ時なんて、もっと酷い。
「人は月から来たんだよ…かぐや姫…わかるかい?僕らはかぐや姫様の子孫なんだよ…月が綺麗に見えるのはね、海から来た私達の目には、深海から見える海のあぶくに…いや、まぁ、どちらにせよだねぇ君、愛国心…故郷を愛するこころだよ…月が綺麗に見えるのは…」
全く支離滅裂である。
私の主人は、少しおかしいのでは、ないでしょうか?
ぐぅぐぅといびきをかきながら寝るあなたは、とても心配だ。
明日はご本の締切だなんだなどと泣いていたのに、紙は床にばらばらだ。
「お前の話を書くよ。言葉がわかる猫…そんなのは、どうなんだろうか?…お前に言っても、わからんか」
楽しみにしていましたのに、あなたは仕方ないお人だ。
側にあった薄い布を上手くあなたにかけて、懐に潜る。
ここより居心地が悪い場所も、この家にはないでしょう。お酒の匂いがする。私の月は、とんでもないわねぇ。苦笑しながら、私は微睡みの手を掴んだ。