仕方なしに
この男のどこがイケメンなの?リカは変よ。
ルリコはリカがあまりにも強く勧めるので、仕方なく「イケメン」という男性に会うことにした。
ルリコはレストランに入るなり厨房のロ―ランドに挨拶をしてから、「イケメン」とテ―ブルに着いた。
ロ―ランドは数秒間、ルリコが連れてきた男を観察して、料理のアラカルトを考えた。
その「イケメン」はセオドアというユダヤ系の金融関係の仕事をしている男だった。
「良いレストランだね。いつも来るの?」
「時々よ」
「こんなカジュアルなレストランはめったに入らないから、戸惑うね」
一瞬、男がグレムリンのギズモのように見えた。
「やはり、五ツ星レストランばかり?」
「とんでもない‼俺、ハンバ―ガ―しか食べないんだ!」
シ―フ―ドレストランの厨房前のテ―ブルで、セオドアは「ハンバ―ガ―しか食べない」と怒鳴った。
厨房でロ―ランドは聞いていた。一瞬、料理の手が止まった。
「まあ、お金持ちなのにそうなの?」
「レストランで100ドル使うのは愚か者のやることさ。100ドルのうち20ドルだけ食事に使い、残りの80ドルは投資に回すのが経済学なんだ。判った?」
と、セオドアは嫌みな笑いを浮かべた。
「ごめんなさい、解らないわ」
「例えば君のそのダイヤモンドのネックレスは多分本物かもしれないが、そんな物に2000ドル無駄遣いするなら、100ドルのジルコニアのネックレスで我慢して、残りの1900ドルを投資に回すのが経済学ってもんさ、解った?」
エドガーがプレゼントしてくれたダイヤモンドのネックレスをそんな風に言うなんて。
ルリコは何も言わず黙った。
「そしてその君の高そうなバッグ。そんなものに3000ドル払うのは貧乏人のやることなんだ。200ドルでコピー品を買い、残りの2800ドルで株を買うのさ。これだけ言えば君も利口になるだろう、解った?」
「解んねぇよ‼ テメェ帰れや❗」
キレたロ―ランドが、日本製の出刃包丁を持って厨房から出てきた。