真摯な瞳
ルリコは仕事中、夕べのパーティーのエドガーを思い出していた。
「もし嫌でなければ、空いている時間は僕とデ―トして欲しい」
そしてまるで騎士のように、ルリコの手の甲にキスをしたのだ。
彼は誰かに似ている。
若い頃のトム・セレックだ。
でも、私は離婚したばかり。
相手がどんなにセクシ―で魅力的でも、少し冷静にならなければ。
そうルリコが思った途端、エドガーから携帯電話に連絡が入った。
「明日?空いてるわ、ええ、勿論よ。じゃ、七時に、待ってるわ」
それならば、私のお気に入りのシ―フ―ドレストランへ彼を連れて行こう。
ロ―ランドはビバリ―ヒルズ1のイケメンシェフだ。 誰がランキングしたかは定かではないが、そこらへんの映画俳優よりはマシ。端正なマスクに爽やかな笑顔で、ヘルシ―で洒落たお料理を次々と考案する。常連客の半分以上が若い女性で、時折厨房から彼が顔を出すと女性客たちは黄色い声を上げる程だった。
ルリコはロ―ランドと昔馴染みなので、エドガーを連れてレストランに入るなり、テ―ブルに着く前に厨房のロ―ランドに声を掛けた。
「こんにちは」
「やぁ」
ロ―ランドは彼女が連れてきた男性を数秒観察し、料理のアラカルトを考えた。
大柄な筋肉質のスポーツマン。
決して都会的な雰囲気ではないが、ナイスガイ。
オリジナル料理を二人に出すと、ロ―ランドは厨房のスキマから、二人の様子を観察した。
「素敵な料理だったな………………このあと、もし良かったら、僕の家に来ない?でも、気が進まないならいいんだ」
エドガーは遠慮がちに言った。
「……………そうね、どうしようかしら」
ルリコは厨房を見た。
ロ―ランドがOKサインを出した。
『ナイスガイ、大丈夫だろ』
『そう思う?』
ロ―ランドとルリコはテレパシーで会話しているようなもの。
「じゃあ、少しだけ寄ろうかしら」