〜12歳
遅いと言いつつ書けました。
哀れ上半身ダルマ達を見送って、私の冒険者登録を済ませてから
私達は宿へと向かった。
ちなみに血で汚れたギルドの清掃代は払ってない。無責任な‥ヤツめ
なのに何故か道中ご機嫌なのが理解できない。
ぶつぶつとテンプレがどうこう言っていたが、意味がわからない。
ヤツの宿は意外にも普通の宿。食事が美味しいらしいが金持ちの割には
微妙である。
着くなり女将に食事を頼んで席に着き始めたが、何故かサーシャさんも一緒に着席。
え、奴隷でしょ?怒られない?
不思議そうに見ていたらヤツから一緒に食事をとろうと言われた。
普通は奴隷を同じテーブルにつかせることはないのに、もしかして優しい人?
いや、今の私は油断していない。見よ、ヤツのこのドヤ顔を!
すっごいドヤ顔で何か言って欲しそうにしている。
とりあえず感動した顔をして感謝の言葉とともに、ご主人様は優しいのですね、と答えておいた。満足そうな顔。正解を引けたようだ。
ちなみに同じものを食べさせてくれた。これだけは感謝である。
夜、私の覚悟が問われる時。
そう思っていたけどサーシャさんがやんわりとまだ成人してないからとヤツを繋ぎとめてくれた。いい人。だけどすぐ隣でヤるのはほんと勘弁してほしい。
ヤツが寝静まった後、サーシャさんが話しかけて来た。
曰く、生き残りたくば空気を読んでご主人様の機嫌を損なわないようにしなさいだとか、基本女の扱いは理解出来てないからこっちが気を使ってだとか
恋してる顔を作れるようにだとか。どんな顔だよ。
どうもサーシャさんもヤツの危険性をいち早く理解して今のヨイショスタイルを定着させたらしい。そうしていれば危険も少ないし、一応守ってくれるし、衣食住には困らないそうだ。
ヤツは贅沢にも奴隷に惚れて欲しそうにしているのでそういう態度で接すればある程度ワガママもイケると。だけど大切にされるならいいか。
でも顔が好みじゃないんだよねぇ。
次の日から本格的に冒険者として活動することとなる。
金にものを言わせていい装備を買ってもらい、ナイススマイルで対応。
ちなみにヤツの装備は伝説級の魔剣らしい。内緒だよと言われた、ドヤ顔で。
基本的には地下ダンジョンに潜り、ギルドからの依頼もそれに合わせて素材回収系を中心に受けているそうだ。
ダンジョン内でのヤツはすごかった。
まず不意打ちは絶対されない。ヤツ曰く、敵感知スキルがどうのこうの。
私の装備的にも種族的にも斥候役だと思っていたけど、私いらなくね。
敵もほぼ一撃。サーシャさんの弓の援護もいらない。
というか周りに合わせて動けていない。猪突猛進である。
実力はあっても、連携は苦手なのかな?なんかチグハグな印象。
地下階層に行くほどそれは顕著となり、最終的には後ろで応援していた。
ここまで潜れるならあんな大金持ってるはずだよ。
でもなんで私達連れて来たんだろう。寂しがり屋か。
それでもヤツは満足そうな。余計混乱した。
ダンジョンから帰った私達に待っていたのはギルドからの緊急依頼。
なんでも、魔物の大群が迫って来ているらしい。ランク問わず片っ端から召集される。
村が襲われた恐怖を思い出し、若干青い顔の私に対して、ヤツは嬉しそうだった。何故だ。
ヤツが笑顔の理由が分かった。
今、私達は多くの人達からの称賛の渦中にある。
何故か、ヤツが魔剣の力を解放して一撃で群れを葬ったのである。
英雄の誕生だとかもてはやされて嬉しそうに謙遜する。
どうもヤツは人から認められるのが大好きらしい。心のメモに記入。
その夜、ヤツが真剣な顔で聞いてきた。
強くなりたいか?と。正直別にと思っていてもそこはそれ、ハイと真剣な顔で答える私達。
ヤツはそこで語った。
自分は異世界から神様によって若返って召喚された。召喚の際に様々な能力をもらっていて、その中には任意の相手に能力を貸し出す力もあるらしい。
ちなみに元の歳は40歳。年の割にはガキっぽい。
ヤツは空中で指を動かす謎の挙動を取りながら、終わったと告げる。
どうにもサーシャさんは弓と魔法、私には短剣術と身体能力のスキルを付与したと言ったヤツ。‥スキルってなんだろう?とりあえず身体の調子は良い。明日にでも試してみよう。
念押しで内緒だよと言われた。ドヤ顔で。
次の日の私はすごかった。サーシャさんもすごかった。
自分の体じゃないみたいに軽いし、力も強い。
昨日までと違って短剣もより巧みに扱える。なんかズルしたようでちょっと気持ち悪い。
でもやっぱりヤツ一人でどうにかなった。
虚しい。
それから一年、私達の冒険者ランクは最高峰のAになり、家も購入。
ヤツからしたら順風満帆な人生である。
そして私は純潔を散らせた。痛いだけだった。
でも笑顔を忘れない私にヤツも満足そう。
良い暮らしさせてもらってるし、多少の情は湧いている。でもやっぱり愛はない。
何故かって?それは奴隷はヤツにとってのコレクションだからである。
女の扱いが下手なくせにあと二人も増えるんだからな。
読んでくださってありがとうございます。