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始まり


電車で揺られること2時間ちょっと。たどり着いたのはそこそこ大きい街。


ずっと小さな街で事務のお仕事をしていたけど、急に配属先の異動があった。


それでやってきたのがこの街。自分の生活範囲はとても狭いので、この街には初めてきた。


通り過ぎた一番大きい駅では、これまでに見てきた人を一堂に会したかのような、あっと驚く量の人がいた。これから自分がこんなところで生活するのかと思うと、やっていけるのか不安になってきた。


異動された部署は「特務活動課」っていうらしい。簡単に言えば何でも屋で、街の人達が公の機関に頼むほどのことでもないようなことや、ちょっと頼みづらいことなどをお願いするところなんだとか。


間違いなく、良い異動ではないけれど、そもそも前の職場も別に好きではなかったし、こっちではうるさい上司にとやかく言われながら仕事をする必要もない。


というのも、仕事をするメンツは私含めた同期4人と、上司一人らしく、本格的に仕事が始まるのは、同じタイミングで特務活動課に異動になった同期と、私たちの上司がなんやかんやの研修を終えてやってくる一ヶ月後らしい。


じゃあ何で私だけ先に来ることになったかというと、一刻も早く今の仕事を終わらせたかったので、上司に実地調査が何だ、現地の空気感が何だと適当に言って、一ヶ月前にさっさと異動させて貰ったのだ。


人が一番集まる中枢の街から少し離れた、いわばベッドタウン。その一角に私の家兼仕事場がある。4階建ての、立派な家だ。1階が仕事場で、と言ってもあるのはソファーと机と、掲示板くらい。あとは偉い人のための部屋。2階はそれぞれ個室になっていて、私の部屋もそこにある。3,4階はまだ改修中らしい。


「アリス」という名札の部屋に入ると、何もものが無い綺麗でさっぱりとした景色が広がっていた。あるのは机とイスと、ベッド。窓が少し開いていて、冷たい風がカーテンを撫でていた。


今は夜の9時、ベッドタウンだけあってそれなりに明るくはあるが、とても静かだ。


私は特に何を思う訳でもなく、持ってきたバックの中から、大きめの手帳を出して、今日の日付のページにいろいろなことを書き綴っていく。


一通り満足がいくと、そのままベッドに倒れ込む。ぎぃ、と微妙な音がして、あまり良いベッドではないことに少しがっかりするが、それも心地よい風に吹かれて直ぐに忘れる。


今日はいろいろあったから、日課のスクワットはいっか。


そんなことを思いながら、私は静かに目を閉じた。


風が吹いて、私の日記帳がめくれる。過去の日付にはこれまでの仕事のスケジュールや、メモなどが書き残してある。


ぱらぱらとページがめくれていって、最後には表紙がやってくる。タイトルの欄には、事務日記が大きな横線でかき消されており、「特務活動課日記」と書き足されている。


この日記帳がこれからどんなことで埋まっていくのか、ワクワクするような、しないような。


今後もスクワットは、しないような。


そーんな、一日でした。




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