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流星のカケラ  作者: 青空
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転校生と寮母さん


寮に着くと、玄関で寮母さんが待っていた。

「ああ、やっと帰ってきたね!おかえり、天野さん、日高さん」

寮母さんこと佐々木さんはふくよかな体を揺らしてこちらに歩いて来る。

「ただいま、佐々木さん」

「ただいま、えっと…」

私に続いて挨拶した天野さんが困ったように寮母さんを見る。…別に不審者じゃないよ。

「ここの寮母をやってる佐々木美奈子だよ。よろしくね」

佐々木さんは親しみやすいにこにこ笑顔でそう言って、私と天野さんを見た。

「天野さん、友だちできたのかい?」

佐々木さんの目線は私と天野さんが組んでいる手にガッチリ固定されている。

ああ、うん。これだけ見たら結構仲良しな友だちに見えるよね。

少なくとも私は仲良くない子と腕を組んだりはしない。

…え、天野さん?さりげなく振り払っても、腕を抜こうとしても離れなかったから諦めました。

「あ、そらちゃんは幼なじみなんです」

天野さんも嬉しそうに答えるけれど、ちょっと待てほしい。私はまだ君を幼なじみだと認めていない。

…こんな可愛い子、私の人生の中で出会ったことあったっけ?ざっと記憶を遡ってみても、それらしきものは見つからない。

あ、でも保育園の頃仲良かった子は天野さんみたいに明るい子だったなぁ。転んでも、熱を出して保育園を休んでても、いつもにこにこ笑っててさ。

「そうかい、それはよかったねぇ。ルームメイトが仲良しなのは良いことだ!」

佐々木さんがひとりでうんうんと頷く。その言葉に記憶の海に浸っていた私は首をかしげた。

「ルームメイト?」

天野さんが私の?

実はこの寮は2人部屋で、本来なら同性の同じ学年の子がルームメイトとなるのだ。だけれど私のルームメイトは1年の夏休みにお父さんの栄転だとかで、外国に行ってしまったのだった。

つまり私は広くてそこそこ居心地の良い2人部屋を独り占めしている状態なのだ。

お金持ち学校で頑張っている私に神さまからのささやかなプレゼント(安らぎの場)だと思っていたのだが。

「ああ、そうさ。言ってなかったかい?」

「…今初めて聞きました」

え、ちょっと困るんだけれど。今私の部屋、ものすごい散らかっているし…。

ちょっと天野さんを入れる前に掃除したいんだけれど。

「そうかい、それは悪かったね」

申し訳なさそうにする佐々木さんに文句を言うのは憚られた。そもそも部屋割りは学校に決められるんだし、佐々木さんは悪くない。

「いえ、大丈夫です。天野さんが来るまでに部屋の掃除さえさせてもらえれば」

さすがにベッドの上に散乱しているぬいぐるみや春休みに散らかした机の周りだけでも片付けたい。

…と思っていたのだが。

「ああ、掃除なら軽くだけれどやっといたよ。天野さん、荷物部屋に入れといたからね」

わぁーお。すでに掃除済みだったか。

さすがみんなのお母さん、佐々木さんである。(こう呼んでいるのは私だけらしいけどね。)

「ありがとうございます」

「ありがとうございます!」

お礼を言うと、佐々木さんはにっと笑った。

「いいっていいって。それより日高さん、天野さんに寮を案内してあげな」

「あ、はい。わかりました」

佐々木さんのお言葉に甘えて、私は天野さんの手を引いた。天野さんにはいくつか聞きたいことがあるのだ。

「行こう、天野さん」

「うん!ねえ、そらちゃん。先に部屋に行きたいな」

「じゃあ部屋に行く途中にあるとこだけでもいくつか案内するよ。佐々木さん、失礼します」

さて、とりあえずここの近くの中庭でも見せようかな。中庭なら話すためのベンチが木陰に置かれているし、植えてある桜が今は盛りだ。

ヒラヒラと手を振ってくれる佐々木さんに一礼して、私と天野さんは寮案内兼お話しに向かったのだった。


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