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流星のカケラ  作者: 青空
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状況確認


「記憶の欠落もなさそうやし、大丈夫そうやな」

簡単に私から昨夜の記憶を聞き出した加賀美くんはうんうんと頷き、そしてずっと欲しかったおもちゃを手に入れた子どものように嬉しそうに笑った。

「これで安心して神力の使い方を教えられそうや」

…ふぁっつ?ジンリキとはなんぞや。

「あの、ジンリキって?」

「ああ、神様の力で神力や。そらが昨日振り回してた刀も神力やな」

そう言われて私は再びフリーズした。

え、何その痛々しい名前。思春期の青少年の一部が患っちゃう、後に黒歴史になるあの病なの?

「えっと、遠慮…」

「は、せん方がええで。暴走すると危ないし」

加賀美くんはそう言って、顔の横でパチンと指を鳴らした。その瞬間に指の先で赤い光が揺らめき…。

「え」

「俺の神力のひとつや。火を操る能力」

アルコールランプの火みたいな大きさの鬼火を何個か浮かべて、なんでもないことのように操っている(みたいに見える)加賀美くんを見て、私は口をパクパクさせた。

「え、火を操る?」

「せや。そらも昨日見たやろ」

そう言われてみれば、ラスボスみたいな化け物と戦っているときに加賀美くんが炎と一緒にやって来た…気がする。

何せあの時は必死すぎて、記憶にはあるけれど曖昧なのだ。

「で、そらは何の能力を持っとるんかわからん。やから暴走した時に危ないかもしれんし、また化け物も現れる」

やから、ちゃんと神力使えたほうがええやろ?

いたずらを企む子どもみたいに笑う彼に、私は何も言えない。

確かに私は昨夜刀を振り回していた。あれが暴走すれば下手したら人を殺してしまうかもしれない。

それに他にも危険な能力があるのなら知っておきたい。…私が殺人犯にならないためにも。

「…わかった。お願いします」

少し失礼かな、とも思いながらベッド上で頭を下げると。

「うん、こちらこそよろしゅう頼みます」

と、加賀美くんはまた子どもみたいに嬉しそうに笑って頷いた。

本当嬉しそうだなー。何がそんなに嬉しいんだろ。

迷惑かけまくってる女子に今度は変な力の使い方まで教えるという手間まで…あ。そういえば昨日のこと、まだ謝っていない。

「加賀美くん、昨日は迷惑かけてごめんなさい。えっと、それで…」

何かお詫びを、と思うのに何も思い浮かばない。始業式の日に熊と遭遇した所を駆けつけてくれた恩返しにと日直の仕事を手伝ったら、苦笑とともにもういいと言われてしまったし…。

「名前」

「ん?」

名前と言われて、首を傾げる。名前がどうしたのだろう?

あ、そう言えばいつのまにか呼び捨てで呼ばれていたな。

「加賀美くんは長いやろ。陽介でええ」

告げられた言葉に、なるほどちゃん付けは省略したのかと納得した。

が、それとこれとでは話が別で、女子はともかく男子を呼び捨てで、しかも名前呼びはハードルが高い。…と、そう思うのは私だけだろうか?

チラリと加賀美くんを盗み見ると、彼はまたニヤニヤとチェシャ猫のように笑っていた。

…あ。こいつ、からかってやがるな!くっそー、真剣に悩んで損した。

「あーはいはい、陽介ね」

私は適当に流すことにした。からかうような奴に遠慮はしない。

それにどうせこれからしばらくお世話になるんだし、この調子に巻き込まれるたびにイラッとするんだろう。

イライラを溜め込むのは良くない。

というわけで、もうどうにでもなーれ!という気持ち半分で投げやりに名前を呼ぶと、奴、陽介は目を丸くした。

あら珍しい。いつも人を食ったような笑みばかり浮かべているのに。もしかして本当に呼ぶとは思わなかった?

ささやかな意趣返しができて私は心の中でほくそ笑んだのだが。

あちらもあちらですぐにいつもの笑みを浮かべた…と思った瞬間。

「せや。じゃあそら、まずは体を治そか」

返事をする間もなくおでこに手を当てられた。と同時に、目覚めてすぐなのに徹夜明けのような眠気が襲ってくる…。

げ、神力とかいうやつ使ってる⁉︎今日も学校あるのに!してやられた!

慌てて逃げ出そうとしたが時すでに遅く。気づいたら私は夢の世界に強制送還されていた。


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