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流星のカケラ  作者: 青空
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とある巫女の暴走


私、阿部瑠璃は生れながらにして『巫女』でした。

日本一大きな陰陽師の家、阿部家の直系の娘として生まれて、当然のごとく『巫女』としての力を受け継いで。『巫女』としてふさわしく在れるように、厳しい教育だって受けてきましたわ。

そして今現在、私は『陰陽師』や『巫女』が仕えるべき主『神子』の通う学園で、私の生まれた時からの常識が通じない女子生徒ふたりと戦っておりました。

ひとりは私の考えを真っ向からおかしいと批判する天野聖花。彼女はまっすぐに自分の正義を貫く、清々しい方です。それ故にお互いに相入れることはできませんが、彼女とのお話は“一般の人”の考え方を知る良い勉強となっております。

そしてもうひとりは日高そら。彼女も天野さんと似た価値観をお持ちのようですが、本人の口からその言葉を聞くことはあまりありません。『神子』についても、格上だとは理解しているようなのに、格上なのか平等なのかわからないどっちつかずな態度ばかり。

正直、私は天野さんの陰に隠れてばかりで行動も中途半端な彼女に好感を持てませんわ。

「本当、あいつらあり得ないわよね」

「ええ。あそこまで言われて堂々とこの学園に居座れるなんて…よほどの恥知らずに違いありませんわ!」

クスクスと私のお友達が笑います。

彼女たちは天野さんと日高さんのことを蔑んでいるようで、よくこうやって陰口を叩いてはお顔を醜く歪めております。

「そのようなことを言うもんじゃありませんわ」

流石に淑女としてそれはどうですの?と窘めても、

「阿部さまはお優しいのですね」

としか返ってこない。

私のお友達は話の通じない方々ばかりで辟易としてしまいます。それよりも天野さんとお話ししたほうがずっと有意義に過ごせるでしょう。

天野さん、早くいらっしゃらないかしら?

ジッと教室のドアを見つめていると、ふと私の耳に、

「昨晩日高にすずらんを渡したの!そしたらね、食い意地張ったあの女、すずらんを焼いて食べたらしいの!」

「え、やっばぁい!」

「犬みたいね!」

という会話が飛び込んできました。

…すずらんを食べた?

聞き間違えじゃなければ恐ろしい会話に、私はギチギチと音がしそうなほどぎこちなく彼女たちの方を向きました。

「貴女たち、日高さんがすずらんを食べたって本当ですの?」

「ええ、阿部さま。あの女、お腹壊して今日は休みだそうですよ!」

すずらんを彼女に渡したという女子生徒が心底楽しげに笑います。

けれど、私は彼女が笑えば笑うほど血の気が引いて、表情筋が引きつっていきました。

…可愛らしい花を咲かせるすずらんには、見た目によらず青酸カリよりも強い毒があるのです。

そんなものを食べたらどうなるでしょうか。

正解はよくて体調不良、悪くて死亡です。

「私、日高さんのところに行きますわ!」

慌てて立ち上がり、教室のドアへと走る。

「え、ちょっと待ってください!なんで…」

「いくら気に入らないからって、殺人は望んでなくってよ!」

「さ、殺人⁈」

お友達が素っ頓狂な声をあげていますが、今日ばかりは注意などしていられません。早くあの子のところへ行かなければ…!

教室のドアを思い切り開けました。すると、

「きゃ⁈」

という可愛らしい悲鳴が聞こえてきます。

またやってしまった…!

「すみません、大丈夫ですか⁈」

「は、はい…」

返事をしてこちらを見たのは…。

「天野さん⁉︎丁度良かった、一緒に来てくださいまし!」

「え、なんで…」

「日高さんのところへ行きます!」

「え、えええ⁈」

私は天野さんの腕を掴み、全速力で日高さんの寮を目指したのでした。


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