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マカイリーガー!!  作者: ななかみ
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2章 集えダイヤの戦士たち1

一夜明けた日曜日、ソリスはいつもより早く目が覚めたので軽く朝食を済ませて昨日の試合の記事を書いていた。

「でもいきなり野球チーム作るだなんて・・・」

とても印象的な試合だったのにそのあとの急展開のせいで少し薄れてしまっている。

うーと唸りながらちょもちょもと文字を連ねてなんとか書ききった頃にはお昼が近づいていた。

今日もクラーケンズの試合の放送をシアターカフェで観戦するのでそれまでの空いた少しの時間で押入れを漁ってみる。

「確かこの辺りに・・・」

昔のライトノベルやら漫画が積まれてる奥にまだ新しい木箱があった。

「お、これかな。」

片付けが苦手で二年ちょっとの間にすぐこれだ。

だが箱を開けてみると保存状態は良好で中身は綺麗なままだった。

早速装備して感触を確かめてみる。

右手で拳を作ってぼすっぼすっと叩く。

「いけそうだね。」

それは学生時代に使っていたオレンジ色の外野用グローブだった。

危険度☆☆☆ランクのダンジョン『ブルームの迷宮』産ミノタウルス(牛のモンスター)革で出来た競技用の本格的なものだ。

ソリスの実家は冒険者の間ではちょっと有名な武器専門の鍛冶屋で割と裕福だっただめ他の学生よりいい道具を使っていたのだ。

最も野球が盛んなカンサイやマルゲニアでは学生でもほとんどが競技用の本格的なものを使っている。

イシュタール大陸自体がまだまだ野球発展途上なのだ。

マルゲニアリーグ(以降マリーグ)から少し遅れてカンサイリーグ(以降カリーグ)が出来て、更に遅れてイリーグが出来た。

各リーグの強さは歴史順でもあるのだ。

世界一を決める『マカイシリーズ』でもほとんどマリーグ代表が制している。

たまにカリーグが勢いのまま優勝することもあるが、イリーグが世界一になったことはまだない。

それくらいに力の差はまだまだ大きい。

学生時代はそんなイシュタール大陸のバルドランド、しかも王都ではなく地元ビルチェの地方大会ですら二回戦負け。

それでも野球が好きで、野球関係の仕事がしたくてビアンコまでやってきたのだ。

社長の言葉には驚いたけど実際ワクワクしている。

たとえうまくなくたって社会人になっても野球ができるなんて思ってもいなかったから。

そう思いつつどこかで期待していた自分もいたのだろう。

引っ越しの時にわざわざ道具一式持ってきているのだから。

それも今思えば運命のようなものだったのかもしれない。

ソリスは迷信は信じないほうだがこの時ばかりはそう思った。


昼過ぎになって商店街へ繰り出すといつものようにクラーケンズユニフォームを来た赤い人だかりが出来ている。

人気のシアターカフェなんかは満席御免の看板も出ている。

初めてビアンコに来た頃は右も左もわからず野球が見たい一心で高い料金でも構わずに人気店に入店していた。

しかし3年目のシーズンともなると慣れたモンだ。

大型店舗の並ぶ大通りの人込みをするすると抜けて脇道に入る。

弱小店舗の並ぶほっそいほっそい道の奥の奥、そこにソリスのお気に入りの店がある。

『定食のブホッチョ』名前からして人気なさそう。

せめて名前を変えれば・・・まぁ、苗字だから仕方ない。

しかしここは小型ながら魔道シアターが置いてあり、野球がある時間などは常連がやってくる。

この魔道シアターも魔道具なのでイシュタール人で扱える人は少ないのだが奥さんがマルゲニア人なので容易に扱えるのだ。

ご主人の作る料理も安くて美味いので知る人ぞ知る名店と言えるだろう。

ぼっろい木の扉を軋ませながら開くとゴルァーンと鈍い鈴の音と共に底抜けに明るいウェイトレスの声が出迎えてくれる。

「いらっしゃい!お、ソリスじゃん。やっと来たか~。」

常連ということもあってかガッツリため口だ。

歳もソリスと同い年でクラーケンズファンという共通点があるからかもしれない。

いや、思えば初めて来たときからため口だった気もする。

つまり元々人見知りとかもなく誰とでもすぐ打ち解ける、そういう性格なのだろう。

声も大きくはきはきとしゃべる、キビキビ動くこの娘は、定食のブホッチョの看板娘アリーナ・ブホッチョ。

一家で経営している定ブホの集客力を担当している主軸だった。

「来やがったな、この草食獣の革を被った狼め!」

厨房からご主人の罵声が飛んでくる。

「あ、今日もお邪魔してます。」

毎週のように来ているので友達の家に遊びに行くような感覚になっている。

「も~、お父さん恥ずかしいからやめてよね。」

「ぐぬぬ・・・娘はやらん。娘はやらぬぞ!」

「いぇ、アリーナとはそういう関係じゃないですよ。」

来るたび毎回このやり取りがある。

ソリスはジョークを言ってくれる謎のサービスだと思っているがご主人は割と本気だった。

「もうすぐ試合始まるよ、注文決まったら呼んで。」

絶えずしゃべり続けながら狭い店内をポニーテールを揺らしながら高速移動で空いている席に誘導する。

アリーナはうるさいが仕事は出来る有能で客からも人気者だった。

実際アリーナ目当てに定ブホに来て野球を見てるうちに野球好きになった常連もいるくらいだ。

奥の席に座ったソリスはメニューをみて少し考えスッと手を上げた。

するとすぐにアリーナが飛んでくる。

「お、決まった?」

「うん、今日はチョメミッショ定食で。」

メニュー名も変えればもう少し流行るかもしれないのに・・・


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