5章 燃えよ!ダイヤの有志たち8
圧倒的な力の差は絶望という形でモチベーションを奪っていく。
しかし、一部の者には超えるべき目標として存在する場合がある。
まだ若く世間を知らず人見知りの性格もあって、積極的に何かをしようとしてこなかった人間が何かのキッカケで変わることはある。
それは貧困に苦しみやむを得ないというネガティブな場合や、もっと自分を高めたいというポジテティブな場合など様々である。
様々な思いを胸中に秘め、ロビンが向かったのは時空の洞窟こと危険度☆☆☆☆ランクのダンジョン『ザディアの洞窟』である。
この洞窟内では時間の流れが違うと言われていて生還者曰く「ここで生き残ることがトレーニング」だそうだ。
動くだけでも相当な負荷がかかる状況で一度入れば『お迎え便』が来るまで脱出することすらできない。
なぜならこの洞窟、空中にあるからだ。
専用のドラゴンバスにてザディアの洞窟前に上陸し次の便が来るまで帰れない。
しかもこのドラゴンバスはそこそこのお値段がするのでより鍛えたければ2,3本便を見送る人もいる。
世界三大修行ダンジョンで一番人気の無いのがここの特徴でもある。
しかし、それはロビンにとっては好都合な面もあった。
まず他の修行ダンジョンに比べ入場料が安い。
というか交通費のみで行けるのはここだけである。
そして人が少ないので場所を取りやすい野球の練習がしやすい。
最後に一番重要だったのは、生きるか死ぬかの状況において冷静さを養いたかった。
ロビンは同年代と比較すると落ち着いているほうだが先日の試合で自分の力を出し切れなかったのはやはり一つのミスで動揺してしまったせいだと考えていた。
負けることへの恐れ、ミスへの恐れ。
そういった恐怖を克服してこそ次の自分を目指せる。
生活は貧しい。
決して余裕があるわけではないが今の自分が他の人と同じスピードで練習しても追いつけない。
ビグバレーを見てそう思ったのだ。
それならば・・・どんなリスクを負っても『急成長』できる可能性があるのは同じ時間で倍以上の成果を期待できるここしかなかった。
まずは生きて帰る、それは当然だ。
今練習に参加しないだけでもチームに迷惑をかけているのだから。
ならばその分以上の上乗せした『成果』を持って帰る。
勝てるチームにいるのではなく『俺がやる』をテーマにロビンのミニキャンプは始まった。




