5章 燃えよ!ダイヤの有志たち7
走り続けること。
それが自分に出来る唯一であり、それに関しては一番でなければならない。
そう感じていたからこそ、『皆と練習する暇』などなかった。
野球の練習は厳しい中にも楽しさがある。
なにより信頼できるチームメイト。
その中で自分の成長を感じられるのは何よりの楽しみだった。
しかし試合に負け、敗因を考えた時に自分は除外できるのか?
確かに戦力を測るうえでピッチャーやクリーンアップ(4,5,6番打者)にかかる責任は大きい。
だがこの戦力差の大きいチームでは足を引っ張ている者がもう少し負担を減らせばあるいは違う結果になっていたかもしれない。
野球はキングオブスポーツと言われ、『攻・走・守』と様々な能力が必要とされる。
できれば全て揃った5ツールプレイヤーが望ましいがそれぞれに特化した選手がいればチームに厚みが出る。
今、アストラがやるべきは打撃や守備を学び成長を楽しむことより走塁を完璧にしてチームに貢献すること。
しかし、実際走塁に必要なことは何か?
まず一つ目はルールの把握。
これは基本にしてプロでも全てのルールを把握することは難しい。
それほどまでに野球のルールは複雑であり、限定的な場面に置いては重要になる。
そして二つ目は力。
単純に速ければ速いほど有利であり、相手へのプレッシャーもかけられる。
特に短い塁間を走るには初速の加速が重要となる。
最後に一番重要なのは技術。
ルールを把握し速い足があっても例えば盗塁やタッチアップのスタートや塁を回るベースランニングがうまくないとそれらを活かすことができない。
「つまりお主は筋トレで脚力を鍛えながら体を休ませる時間でルールを覚えるのじゃ。技術はそのあとじゃの。」
それからである。
アストラの前に突如現れた『走塁じいさん』と名乗った老人と二人三脚のトレーニングが始まったのは。




