5章 燃えよ!ダイヤの有志たち5
責任をとることが上司の仕事である。
会社を設立した時からある考えは今も変わらない。
ハッピースポーツニュースの社長にしてビアンコハッピーズの監督でもあるフローラ・フランシスは決断の刻にあった。
野球活動による広報効果は抜群で地域との親密度も増し、仕事の依頼も増えた。
しかし、だからこそ地方予選敗退という結果は裏切りと言わざるを得ない。
あらゆる仕事に置いて最も重要なことは『信頼』である。
それが自分の力不足で失われてしまった。
・・・
それだけではない。
あの時カッサーノに言い返せなかった自分が悔しい。
何も・・・変わっていない。あの時と。
何も言わないのは肯定しているのと同じではないか?
いや、自分の中で意識しないよう注意していたつもりだが『意識しないよう注意する』ということは意識していたということ。
(復讐・・・か。)
好きでやっていたつもりが心のどこかで復讐の念が消えていなかったのだろう。
あの時、野球との関わりを完全に絶って冒険者としての道を進んでいれば・・・
いくつも浮かぶ『もし』はその数だけ後悔を産み出した。
いっそ全て捨てて逃げるか・・・
そんなわけにはいかない。
残された者達やその家族がいる。
ならどうするか。
フローラは一枚の紙を持って立ち上がろうとしたまさにその時。
社長室のドアがコンコンと二度、乾いた音を立てた。




