5章 燃えよ!ダイヤの有志たち1
デザイナーのジャッカスが急遽自主退職した。
一度もセリフがなかったがチームでは一塁手として貢献していた分、痛い穴が開いてしまった。
それだけではない。
仕事が忙しくなるにつれドミニクなど忙しい者は練習時間が削られ、ランザスなど理由をつけてあからさまにサボる者もいた。
野球部で以前のように練習を続けているのはソリスと投手二人、外野手のヴィルドラ、アズリー。
そしてセイントナイツ戦で代打出場し最後の打者となったチャールズの5人のみ。
アストラは定時になると猛スピードでどこかへ行ってしまう。
『俺なりの貢献』と言っていたが野球以外でなにか貢献する方法があるのかもしれない。
大会で致命的なエラーをしてしまった遊撃手のロビンは少し前から長期休暇となっている。
理由は社長も教えてくれない。
もしかしたらもう戻ってこないのかもしれない。
マイナスな要素ばかりが目立っているがいい部分もあった。
まず打撃に関してはヴィルドラの指導効果もあり、皆着々とレベルアップしている。
特にソリスは新フォームが馴染みはじめ逆方向へのバッティング(流し打ち)で強い打球を飛ばせるようになってきた。
また、バント練習を強化することで小技は勿論、選球眼にも磨きがかかっている。
チャールズは最終打席で大きめ外野フライを飛ばしたものの、スタンドまでは届かなかった。
甘い球であったがフルスイングできなかった。
どこかで『当てないと』といいう気持ちが強く『実戦で振りぬく準備』が出来ていなかったのだ。
それを克服するため、連続ティーバッティングでフルスイングの練習をしている。
守備は一切捨てて打撃、それも一打のために猛練習する道を選んだのだ。
そして投手陣にも課題は見つかった。
「ランナーが出てから打者との勝負に集中できなかったことですかねぇ。」
大会では好成績を収めた右腕のルイスだったが思い通りいかなかったことも多々ある。
弱点ともいえるメンタル面の弱さ、それによりランナーが出た場合のコントロールの乱れである。
元々素質はあるものの、ドラフトにかからなかったのは実戦で結果を残せない性格と『負け運』のせいもあったかもしれない。
短気だとか自分勝手な部分はあまりない。
むしろ優しすぎるくらいだ。
しかしルイスには責任を感じる場面でどうしても臆病な部分が出てしまう。
自信の無さ、負けるイメージ。
それらを克服するには・・・
「投げ込みしかないな。このボールは誰にも打てないという自信をつける以外ない。だが投げ込みは危険な練習だ。肩の怪我はひどければ野球生命に関わるかもしれない。」
「それでも。」
ルイスの意思は固い。
「それでも勝ちたいんです。たとえ失投しても打てないと思えるような自信が欲しいんです。」
野球選手、それも投手はリスクが大きい。
投げれば投げるほどそのリスクは増してゆく。
しかしそれでも勝つためにできることは全力でやる。
投手で負けず嫌いじゃない者はいない。
ルイスも例外では無かった。




