4章 未来へ15
整列が終わり無言でベンチへ戻るメンバーを迎え入れたのは社長の明るい声であった。
「よくやったな、結果は完敗だったが精一杯よくやったぞ。」
打ち込まれたルチア、失点のきっかけとなったロビンは泣いていた。
ベンチでもマドカが必死に涙をこらえていた。
頑張ってきたことを一番近くで見ていた彼女は選手を気遣って必死に笑顔を作ろうとしていた。
それは社長も同じ・・・いや、少し違う。
社長の笑顔はどこか悲壮感を背負ったような、ネガティブな印象を受ける笑みだった。
ソリスはその感情の名前を知っている。
それは『諦め』に近いものだった。
試合終了後、宿に向かうハピスポ一同に近づいてくる人物がいた。
「先ほどはすまなかったな、いい試合に水を差すようなことをしてしまった。チームメイトに代わって謝罪したい。」
セイントナイツの四番打者にしてチームキャプテンの大柄な男はアルフレド・ミューラーと名乗った。
「いい試合か?私には一方的に思えたがな。」
「ちょっと社長!」
「・・・確かに結果的にはそうなった。だが次に試合をすればどちらが勝つかはわからない。それくらいに力は拮抗していた。」
あくまでもミューラーは紳士的で社長の挑発めいた発言にも大人の対応である。
それからまた戦う機会があればよろしく的な感じのことを難しい言い回しで伝えた後、ミューラーは去っていった。
それを見計らったように入れ違いで別の男達が一同に・・・いや、社長の元に近づいてきた。




