4章 未来へ14
結局無死満塁のピンチは7番打者のファーストゴロの間に失点したものの後続を二者連続三振に仕留め一失点で切りぬけた。
4回、5回はヴィルドラが四球で出塁したのみでお互い無得点に終わり投手戦が見え始めたころ、先に乱れたのはビグバレーだった。
8番のアストラを四球で出すと続くルチアにはライト前に落とされ初ヒットを許す。
ここでランザスに出たサインは送りバントだった。
この場面、一点差でランナー2,3塁に置ければ一打出れば逆転もある上に犠牲フライでも同点となる。
ただ、1,2塁でのバントというのは非常に難しい。
ランナーがアストラであってもピッチャー前に落とせば三塁でアウトにされる可能性が高い。
三塁手に取らせるのが理想だが勢いが弱いとキャッチャーに捌かれダブルプレーや三塁で刺される可能性もある。
当然打ち上げればこれもダブルプレーの危険が出てくる。
まして球速の速いビグバレーの球の勢いを殺すのはそれだけでも難しい仕事である。
ランザスはあまりバントが得意ではなかったが、それでもこの場面はバントが最善策であった。
普段は強気なランザスだがこのときは弱気になっていた。
さきほどのピンチも自分のミスが絡んでいたことも自覚していたし、この一打席で試合が決まる可能性もある。
初球、シュート回転したストレートがインコースに入ってきた!
三塁方向に転がすには絶好のコースである。
が、これを見逃してしまう。
「ストライィ!」
確かにきわどいコースではあったが初球で決めれば投手心理としても苦しくなったはずだ。
結果的にこの一球で勝負は決まってしまった。
二球目、ストレートをきっちりアウトコースに制球しバントはファールになる。
三球目、ヒッティングに切り替えるもフォークに手を出してしまい空振り三振。
続くアズリー、ドミニクも内野ゴロに打ち取られ無得点で6回表を終了した。
こうなるとセイントナイツのペースになる。
三塁線の難しいゴロをドミニクがファンブル(取り損ねること)してランナーを置き次のバッターにとうとうルチアが被弾。
2ランホームランで三点差とされると四球と長打含む2連打を浴び3失点とランナー二人を置いてルチアがノックアウト。
代わって出てきたリリーフ投手のアンソニーも打ち込まれ結局ルチアが5失点、アンソニーが1失点と1イニングで6点差を広げられた。
その援護をもらったビグバレーは調子を取り戻しヴィルドラに二塁打とランザスに単打を許したのみで終わってみれば0-7の大差でハッピーズは敗退した。




