4章 anotherstory① ビグバレーという男
ヘイグリア・ビグバレー18歳。
バルドランドの東のはずれの農村、アッテムルという村で生まれ育った。
ニャモロンというネコの顔の形をした根菜や漁業などで生計を立てているが山奥ということもあり滅多に行商人も来ない村貧しい家が多かった。
ビグバレーの家は比較的恵まれているほうで年に一度は家族で旅行するほど旅行好きの両親のもとで育った。
初めて野球に出会ったのは6歳の時。
旅行先のマルゲニアでプロの試合を観戦したことがきっかけで、それから野球に夢中になった。
恵まれた体格と山道で鍛えられた足腰は強靭に育ち、12歳になる頃には各野球学校が注目する存在になっていた。
そして14歳で特待生としてデュアーロ野球学校に進学する。
毎年二回のテストで結果を出し続ければ学費が免除になるほか、生活費も学校側が負担してくれるため両親もこの進学には多いに賛成だった。
野球学校に進学してからも体は成長を続け、またバドランド屈指の投手コーチとの出会いもあり見る見る頭角を現していく。
16歳の時にはすでに上級生を差し置いてエースとしてマウンドを託される。
予選をほぼ一人で投げ抜き大陸大会へ出場するなど投打で功績を残した。
17歳の時には部員からの信望も厚くキャプテンに任命される。
すでにプロのスカウトが注目しており順調にいけば二年後に競合ドラフト1位は確実と言われていた。
全てが輝かしいエリートの道を歩んできた。
しかし、そんな彼の人生に陰がさす。
故郷のアッテムルで農村を営んでいた父親が病気にかかり治療には莫大な金額が必要だと知らされる。
あともう少しでプロ球団に入団すれば契約金が入ってくるのだがそれでは遅い。
そんな時、彼に声をかけたのがバルドランド・セイントナイツの監督であるエーシーだった。
エーシーはチャレンジトーナメントでの優勝を条件に治療費を建て替える約束をした。
貴族達の接待を兼ねている分だとさらに半額分は返却不要とした。
あまりにもビグバレーに都合の良すぎる条件であったが断ることなどもちろんできない。
それに断ったり負けたりした場合はアッテムルに不利な政策を行うといった遠まわしの脅しもあった。
ビグバレーはもう野球を楽しめる状況ではない。
野球が好きだからこそ、それは苦しい選択肢だったがそれ以上に両親や故郷のアッテムルを愛していた。
「可哀そうなやっちゃなぁ~。まぁでもワイらがおってよかったな。野球しかできんでも役に立つんやで。」
「・・・はい。精一杯がんばります。」
その目に感情はない。
心を殺した彼の右腕は勝つためだけにボールを投げる野球兵器と化していた。
出ました二刀流!
ここからはこういった形でサブキャラにスポットがあたる機会を増やしていきます。
なるべく野球を知らない人でも読めるようなものを目指したいですがNPB(日本のプロ野球)を知っている人はより楽しめるような内容にしていきたいと思います。
あ、何気にA氏も出てきましたのであの方との関係が気になるところですね。




