4章 未来へ8
ハッピーズの入ったBブロックは南デュアーロ市民球場で試合が行われる。
乾燥した地域で海が近く湿気の多いビアンコとは気候が異なっている。
が、それは相手も同じ。
むしろこの初戦は慣れるチャンスでもあった。
試合前練習でポジションやファールグラウンドの広さなどを確認しながら守備練習をする。
「両翼は広くないわりに奥行はありそうですね。」
センターのアズリーが外野フェンスの広さを確認する。
フェンスが低くポール際のホームランは多くなりそうだが右中間、左中間は広く開いており打球処理によっては先の塁を許してしまう可能性がありそうだ。
またファールグラウンドは広く、全体として投手有利な球場といえるだろう。
しかし、ビアンコより乾燥していて風がないため打球が伸びる可能性がある。
そのあたりは注意しなければならい。
そして相手側の守備練習も終わりオーダーを交換した。
いよいよイシュタール大陸前期チャレンジトーナメント一回戦が始まる。
ビアンコハッピーズスターティングオーダー
1 二 ランザス
2 中 アズリー
3 三 ドミニク
4 左 ヴィルドラ
5 遊 ロビン
6 一 ジャッカス
7 捕 ソリス
8 右 アストラ
9 投 ルイス
前日の緊張から不安のあったルイスだが初回から落ち着いていた。
右打者の外角低めにコントロールされたストレートで二者連続二ゴロに打ち取ると三番打者は外角のボールになるスライダーで三振。
見事ランナーを出すことなく三者凡退で締めた。
「順調な立ち上がりじゃないか、ルイス。落ち着いていけば大丈夫だからね。」
ベンチに戻りソリスはルイスに声をかけているその間に先頭打者のランザスが初球からヒットを放つ。
逆に相手投手は緊張からか球が真ん中に集まり集中打と四球で4点を先制した。
注目のヴィルドラは無死1、2塁の場面でも四球で勝負を避けられた形となった。
それから援護をもらったルイスは強気の投球が出来るようになり6回までで1安打無失点に抑える無双状態であった。
そして七回、8点差ランナー1、2塁で本日3四球のヴィルドラに回ってくる。
後攻めのハッピーズが10点目を入れた時点でコールドとなるためもう勝負は避けられない。
初級からインコースに全力のストレート、しかしこれはわずかに外れてボール。
二球目、アウトコースギリギリにカーブが決まってカウント1-1となる。
三球目、再びインコースにストレートを投げ込んできた。
決して球の精度が悪かったわけではない。
だが、完璧に捉えた打球は広く開いた左中間の遥か遠くスタンドに消えていった。
ハッピーズは初戦を7回コールド0-11で圧勝した。
終了後、握手をしたエンブリーズのメンバーは負けはしたものの晴れやかな顔つきだった。
大会参加費は決して安くない。
デュアーロまでの遠征費もある。
しかし、それでもこの一試合にはそれ以上の価値があったのだろう。




