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マカイリーガー!!  作者: ななかみ
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0章 プロローグ2

「なんや、いざ近づいてみるとどえらいおっきな城やなぁ・・・」

「なんか『ラスボスがいそう』な感じがするけど・・・大丈夫かな?」

珍しく祥子が不安そうな顔をしている。

「まぁ、大丈夫やろ。いきなり魔王と勇者が最終決戦してるわけでもないやろし。」

高さ3メートルは超えそうな巨大な扉をコンコンとノックする。

「こんにちはー、誰かおりませんか?」

・・・返事がない。

二人は顔を見合わせて諦めかけたその時、健太が扉の横にレバーがあることに気付いた。

「これ下げたら開くんじゃう?」

「不法侵入にならないかな?」

「大抵こういう建物は行き来自由やろ。よっしゃ入ったろ。」

健太が力を込めてレバーをグッと下げた。

ンゴゴゴゴ・・・

重々しい音とともに扉が開く。

「やっぱり開いたで!ほな早速・・・」

そういいながら城の中に踏み入れた瞬間

「ファイアーボゥル!」

滑舌のいい発音とともに火の玉が健太目掛けて一直線に飛んでくる。

「うわぁっ!」

持前の反射神経で『く』の字になってかわす。

「ふはは、愚かな人間どもよ、そのような攻撃はこの魔王には通じぬ。」

いきなり魔王と勇者が最終決戦をしている場に居合わせてしまった。


「そこの一般人、ここは危険だ。だがどうしてもというなら囮になってくれ!」

「ふはは、邪魔をするなら貴様を先に始末してやろうか。」

「なんや、いきなりワイが全員から狙われとるやんけ。」

先ほどの扉は建物の扉ではなく扇型の中庭のようなだだっ広い場所に通じていた。

そこで勇者のパーティ4人と魔王が激戦を繰り広げていた。

「うわ、ホンマにクライマックスやんけ。でもこのあたりで能力覚醒イベント起こるやろ。おい、魔王!ワイの必殺技で瞬殺やで。」

その時、キーンと甲高い音が健太の頭に響いてどこからどもなく厳かな声が聞こえる。

(田中健太、異世界より現れし者よ)

「お、神か?」

(そうじゃ、神じゃ)

「ふはは、愚かな人間よ。この私を瞬殺だと?ならば試してみるがよい。」

「一般人いいぞ、その調子で魔王を引き付けるんだ!封印の術完成までは耐えるんだ。」

魔王やら勇者やらがごちゃごちゃ言ってくる。ここで一撃で終わらせればさぞ爽快だろう。

「神さま、ナイスタイミングやで。さぁ魔王を倒す力を覚醒させるんやで。」

(それは与えられないんじゃ。お主は主人公ではないんじゃ。)

フリが効きすぎていたせいか、Vビクトリーを確信しきっていた健太は自ら煽ってヘイトを一身に集めてしまっている。

「どうした愚かな人間よ、ではこちらから行こうか?」

「ケンちゃん、なにか策があるの?」

健太に向かってゆっくり歩き始める魔王、そして助ける気配のない勇者一行。滴り落ちる冷や汗。

「ちょちょいちょいちょい、そもそも自分らなんで争ってるんや?話し合いでは解決できやんのか?」

この土壇場で正論を放つことに成功した。

「何を言っているんだ一般人、相手は魔王だぞ、悪いやつに決まっている!」

「愚かな人間よ、貴様らがこのマルゲニアの地を侵略しようと攻め込んできたのであろう。」

「魔王め、我らの暮らすイシュタール大陸にモンスターを放っておいて言い訳とは往生際が悪いぞ。」

「ふはは、あのモンスターどもは私が生み出したものではない、ダンジョンから自然に湧いて出るのだ。」

「え?そうなの?」

なんとか和解しそうな空気になってきた。

「ほらみぃ、勘違いで争ってただけやんけ。これからは仲良くするんやで。」

「ぐぬぬ・・・しかし魔王の奴は幾度となく我々を愚弄してきたんだ。名誉棄損だ。」

「何を、それなら先ほど保管庫にあった異世界のプレミアムプリンを無断で食べつくした愚かな人間どものほうが悪質ではないか。」

「それは・・・あんなところに置いておくのが悪い。それに最初に食べだしたのは魔法使いのトムだ。」

いきなり指さされて矢面に立たされびくっとする小太り魔法使いのトム。

「そんなぁ、勇者さんがいいぜ、食おうぜって言ったんじゃないっすかー。」

「愚かな人間どもよ、どちらにせよ食いつくしたことには変わりはなかろう。もはや死を持って償うがよい。」

(あかん)

収まりかけていた争いの火種がしょうもないつまみ食いのせいで再炎上した。

「ちょっとまずいんじゃない?ケンちゃんなんとか仲直りさせてあげられないかな。」

祥子に頼まれると健太はグッとやる気が出てくる。

「ちょいちょいちょい、こういう時は喧嘩両成敗やで!若干勇者さんサイドのほうが悪質に感じるけどそれはそれや。」

「一般人の意見は参考にならないな。勇者である俺が正しい!」

「愚かな、もはや私の怒りは夏休み最後の夜に二人でやった花火の如く燃え上っているぞ。もはや誰にも止められぬ。」

「勇者さんは話が通じるレベルやないやん。魔王さんも『もはや』と『愚かな』を酷使しすぎやろ。あとその例えはホンマに怒っとるんか甚だ疑問やで。」

絶体絶命のピンチだが健太は冷静にバッグからボールとバットを取り出す。

「言葉で通じんなら野球で決めようや。ワイが勝ったら喧嘩はやめーや。ワイ一人対勇者アンド魔王の5人でええよ。」

「ちょっとケンちゃん、魔王が野球なんて」

「面白い、私が愚かな人間に負けるはずがない。その野球とやらのルールを説明するがよい。」

「5対一なら有利だ。俺たちもその勝負乗ろう。」

「よかったやる気満々だね。でもケンちゃん野球部でもないのに大丈夫?」

「任しとき。中学ではエースやったし、美術部で一番野球うまいはずや!」

「絵は一番下手だけどね。」

「それはええやん。」

「早く、早くするのだ。野球とやらの説明を。」

魔王はすでにバットを握り野球に興味津々のようだ。

「よっしゃ、まずは基本のルールとバットの振り方からやな!」

ルールを知らない異世界民に対し健太は丁寧にルールを説明し素振りなどの練習も指導した。


そして一時間後・・・

「ふはは、愚かな投手よ。我がバットにて返り討ちにしてくれるわ。」

地面に木の枝で書いたホームベースと右打席のバッターボックスには魔王がオープンスタンスで構えている。満面のドヤ顔だ。

「私が審判やるね。一人の野球好きとしてちゃんと平等に判定するからね。」

(ならワシがキャッチャーをやるぞ)

どこからともなくプロテクターを着けミットを持った神が現れる。

「神さまおったんならさっき助けーや。でもまぁええわ。いくら魔王でも現役高校球児には勝てんやろ。」

「美術部だけどね。」

「ほないくで!」

健太はワインドアップから右腕をしならせ、綺麗なオーバースローでボールを放つ。

かっっっっキーン!!!

オープンスタンスで構える魔王の内角高めに来た135kmストレートは小気味良い高音とともに一瞬で流れ星のように彼方へ消えた。

「ファール。」

が、強く引っ張りすぎたため、わずかに切れて行ってファールの判定となった。

「なんやあのパワーは・・・規格外すぎるやろ。」

「ふはは、次で決めるぞ。」

「そんならこれで・・・どや!」

健太はさきほどと同じ綺麗なオーバースローで今度は外角に投げる。

「ふはは、どこに投げても同じこ」すかっ

「ストライッ!」

「なんだと!?この私が愚かな人間ごときに空振りだと!?」

「魔王さん、今のが『変化球』や。そのオープンスタンスでは外に逃げる『スライダー』は届かんやろ。」

「ぐぬぬ・・・私を本気で怒らせたようだな。次で終焉を迎えることになるだろう。」

「魔王さん、一つアドバイスや。野球は身体能力も大事やけど心理戦でもあるんや。この球は打てんで。」

健太が放った三球目、コースは真ん中だが長身の魔王の顔くらいの高さを通過していく。

普通に見逃せば明らかなボール球。しかし勝負を急いだ魔王のフルスイングはかすることなく空を切る。

「三球三振や。」

「馬鹿な!?この私が敗北など・・・ええい、もう一度だ!!」

「ちょ待てよ。次は俺の番だぜ!」

横で見ていた勇者は1対1の真剣勝負を目の当たりにしてうずうずしていた。

「ええで、順番や。次は勇者さんやな。」

バットを短く持った勇者にはチェンジアップでゴロを打たせ小太りの魔法使いには執拗に内角を攻めた。

あと戦士っぽい人も僧侶っぽい人もコーナーに集めるコントロールで打ち取ると再び魔王が打席に入る。

「よし、私の番やな。次は打ち返したるで。」

楽しさのあまり関西弁が移っていることに気付いていなかった。


それから2巡3巡したがとうとう誰もヒットを打つことができなかった。

「野球めっちゃおもろいやんけ。早速マルゲニアにチーム作って明日から練習するで!」

すっかり魔王は野球にハマっていた。

「これはエンターテイメントとしても素晴らしい。野球を中心に新たな娯楽施設を考案してみるのもいいかもしれません。」

ここまで凡退くらいしか描写のなかった僧侶も野球を世に広める計画を立てていた。

そして勇者も戦士も神も笑顔で祥子と健太は野球がこんなに素晴らしいものだと改めて実感した。

「やっぱ野球ってすげーわ。」

この世界に野球が広まった今日を後に『野球記念日』として世界中の休日となるのである。

この物語は野球に情熱を燃やし、仲間と切磋琢磨し高みを目指す男たちの成長の記録である。


やっとプロローグ終了です。

テンポが悪いですか?どうでしょうか?

初投稿なのでそのあたりも難しいですねぇ。

本編はこの160年後から始まります。

やっと主人公も書けそうです。

ワクワクしますね。

まるでペナントレース開幕戦前夜のようです。

僕だけですか?


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