2章 集えダイヤの戦士たち8
初日はミーティングと軽くキャッチボールをしただけだったが運動不足組には堪えたらしく次の日の朝はいかにもしんどいといった表情を張り付けて出勤してきた。
全員で11人いるうち5人は既に野球が出来るレベルになっている。
社長含め主に女子社員など本格的にやるには厳しい人たちはトスバッティングやキャッチボールなど出来る範囲で協力していく形に落ち着いた。
だが、体を動かしていい影響が出たのか体は疲れていても心はすっきりとしていて仕事もテキパキこなし二日目も全員練習に参加した。
「今日はシートノックとかフリーバッティングやろうっすよ。」
ランザスなんかは実践的な練習ばかりやりたがっている。
「今日は内外野分かれてノック(守備練習)くらいだな。シートノックやるにはせめて各ポジション一人は欲しい。」
社長は監督という名目だが全くバットにボールが当たらないのでソリスやドミニクが交代でノックを打つ。
ランザスは言うだけのことはあって打球を軽快に捌いていた。
「こうなってくると安定感があって送球が良いショートが欲しいな。」
社長は練習中ずっとなにやらメモをとっている。
「あれ、そのメモはもしかして・・・」
ドミニクが恐る恐る声をかけると社長はさも当然のように答えた。
「ああ、もちろん次の面接用資料だが?」
「そこは仕事重視で選ぼうぜ?」
次回の面接は野球重視で実質トライアウトになっていた。
数日後には立派に求人募集がかけられていて野球部の練習見学や応募も来ているようだった。
「どうやらそれなりの選手が集まってるみたいっすね。」
「人が増えれば仕事の負担も減るし今以上に練習できるね。」
まだ見ぬ新人への期待は高まるばかりだ。
なんだかんだで社長とドミニクの『人を見る目』は信頼されているのだ。
「よし、とりあえず一つ穴が埋まるったぞ。」
面接を終えてニヤリと笑みを浮かべながら社長が出てきた。
現在大きな穴といえるポジションは『投手』『捕手』『遊撃手』だ。
ここはぜひとも経験者で埋めておきたい。
「やっと俺にも後輩ができるっすね。」
「お前は後輩に教わるようなことにならないようもっとしっかりしろよ。」
ランザスの漏らした小言はしかし、間髪入れず釘をさされる。
口は禍の元とはよくいったものだ。




