2章 集えダイヤの戦士たち6
「ところで野球経験者はどれくらいいるんだ?」
月曜日、いきなり全員定時で切り上げ近くの河原に移動してきた。
たまにモンスターが出るのであまり人が近寄らず野球をするには絶好の場所だった。
モンスターが出ても社長の魔法があれば安心だ。
「僕は学生時代外野手やってました。」
「あれぇ、先輩あの不人気記事書いてるのにキャッチャーじゃないんですかぁ?」
ランザスが茶々入れてくる。
「うるさいなぁ、もう。監督に小さいキャッチャーは的にならないから投げにくいとか言われてたんだよ。」
ソリスもランザスも同じくらい小柄だが僅かにソリスのほうが高いか。
そういうランザスは学生時代にセカンドで地域代表に選ばれたこともあるそうだ。
「私はサードを守っていたよ。もう8年以上前の話だけどねぇ。」
ドミニクも当時を思い出すかのように懐かしそうにグラブを叩いている。
設立当時からのベテランとはいえ会社自体がまだ新しいのでまだまだ十分野球をやれる年齢である。
他にも長身でガタイのいいデザイナーのジャッカスは一塁手の経験があったりソリスと同期の営業担当アストラは経験こそないものの社内で一番足が速い。
「よし、アストラはまず外野の練習だな。」
「あれ?足の速さはショートでも活かせるんじゃないのか?プロだと俊足のショートが多いぞ?」
内野手をやってみたいアストラは食い下がってみる。
「ああ、もちろんショートは足が速いに越したことはないな。だけどな」
「そこからは私から説明しましょう。」
スーツを着た小太りの紳士がどこからともなくぬっと出てくる。
「あ、メイガスキーさん。」
「おお、セッツか。久しぶりだな。」
「どうもご無沙汰しております。」
「あれ?社長メイガスキーさんと知り合いなんですか?」
「ああ、実はハピスポを外国で受注してくれているお得意様なんだ。お前のコーナーもセッツのアドバイスから始まったんだぞ。」
「いやいや、配球について考えるコーナーがあってもいいんじゃいかと思っただけですよ。」
「そうだったんですか。」
(あれ?でも僕の記事のファンだって言ってたのに自分から誘導したみたいな・・・)
「ところでショートというポジションの説明ですが」
ソリスは引っかかるところがあったが遮るようにメイガスキーが話し始めた。
「ショート、もしくは遊撃手とも呼びますね。まず守備の華といえばこのポジションでしょう。」
「遊撃手は二塁ベースと三塁ベースの間を守るポジションです。そのため守備範囲が広いので足が速いほうが有利ですね。アストラ君の考えは正しいと思います。」
メイガスキーは一拍置いて「ただし・・・」と接続詞から話を付け加える。
「それだけでは務まりません。右打者の打球が一番飛んでくるだけでなくランナーをおいた場面では盗塁やバントなど相手の戦術に合わせて二塁ベースや三塁ベースにつく必要があります。」
アストラ含め経験者もメイガスキーの説明に聞き入っている。
声もよく通り話も分かりやすい。趣味というだけあって説明が巧いのだ。
「足の速さ、一塁への送球の正確さに加えて野球の知識が無いと務まらないポジションなのです。」
「なるほど、よく解ったぜ。確かにルールもまだ覚えきれてない俺にはショートは無理そうだ。でも外野なら大丈夫なのか?」
「外野手の守備はベースカバーが必要ありません。ポジショニングなどは投球前に指示を出せますし、瞬時に判断する機会が少ないですね。その代わり足の速さや肩の強さなどの身体能力が必要とされるのです。」
「外野手はその分打撃での貢献が求められますね。」
「それもあります。野球は攻撃と守備のバランスも大事ですからね。」
一通り説明して満足したのかメイガスキーは「練習頑張ってください。」をピリオド変わりにどこかへ去っていった。
きっとまだ説明のタイミングで現れるのだろう。
年が明けそうです。




