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Treasure's ~お宝を探せ!~  作者: 海蔵樹法
第一章 その名はガイ=オシタリ
3/16

03 湖底で待つお宝・後編





 隙間を抜けると、通路が上の方に伸びてやがる。

 上の方はホンの少し明るいな。




「(昇ってみっか)」




 足ヒレで水を蹴り進む。どんどん光が強くなってきやがった。

 こんな深い水の底で明るいなんざ普通はありえねぇが、実際に明るくなってきてるんだからしょうがねぇよな。




「(? 地上とは違うな……何だ??)」




 気になるぜ。

 俺は迷わず上がる事にした。




「(!………………何だここは!?)」




 そこは、何かの部屋っぽい。どんな部屋かはわからねぇが、間違いなく部屋だ。


 テーブルがあって椅子があって、ご丁寧に床には絨毯が敷かれて照明までついてりゃ、そりゃ誰だって部屋って分かるだろ?


 そしてどういうわけか、俺が今いるのは水の中なのに、その部屋から先には水は入り込んでないらしい。

 どうやら、俺が出入り口だと思ってた場所は、この部屋にある水槽らしい。



 俺は水槽から出て、ドライスーツを脱ぐ。水は無ぇんだ、まぁ平気だろ。

 そして、マスクを恐る恐る外してみる。




「…………………………空気はあるらしいな。す……………っはぁ! 普通の空気だな。」




 こういうところは、水がなくて普通っぽく見えても、そこにはよくわからないガスが充満してる場合があるからな、用心深く行かねぇと。

 取り敢えず、酸素はあるっぽいな。後は普通に進めるだろ。


 俺はその部屋に水中道具を全て置いて、そこからは地上と同じ装備で探索することにした。










----------------------------------





 俺は部屋を出て廊下みたいな場所を進む。

 案外広めだな。廊下にまで絨毯とは中々豪華じゃあないか。壁に妙な模様がありやがるが、作りもそんなに古くねぇみてぇだしな。


 と、突き当たりか。右に左、どっちに進もうかな~?

 …………………………。

 ……………。

 ………。


 うっし、右だ。





 どうやら最初の廊下だけが豪華だったらしい。ほかの廊下っつーか通路?には絨毯ねぇのな。



 歩くたびに床がカンカンうるせぇ。鋼鉄製の床でできた船なんか、軍艦でもなけりゃ………………。




「はは~ん? あの爺さん、さては元軍属………………合衆国軍の海軍ってとこかぁ?」




 一般にも船は出回っちゃいるが、殆どその姿を見ることは無い。せいぜい中規模の渡し舟くらいなもんだ。

 大規模ってなると、軍隊かよっぽどの金持ちしかいねぇ。ってなると恐らく前者だよな。


 でも、軍隊なら退役した時の報奨が結構あるはずだがな…………その割にゃ貧乏な感じだったな。




「にしても、だ………………。」




 この船、謎が多すぎるぜ。

 最近の物にしちゃデザインが違う。何かこう、雰囲気っつーのか。壁のデザインといい、まるで古い遺跡みてぇだ。帰ったらギルドの蔵書室で調べるか。


 それに、ずっと気になっちゃいるがこの照明。電力はどっから引っ張ってんだ?

 機械的な印象はあるが、発電機にしちゃ音が全くしねぇのは妙だ。科学技術というには何か違う気もするしなぁ。


 まさか魔法?………………いやいや、そんな訳ねぇわ。魔法ってのは、人間が科学を突き詰めて到達した現代科学の呼び名。そんなものが使われてる訳がねぇ。






「ッ………………誰だ!?」





 考え事をしながら歩いてると、俺は背後に誰かの視線を感じて振り向いた。

 そこには誰もいない。只の思い過ごしか?

 注意深く辺りの気配を探ってみる。










「チッ、勘違いかよ………………なわけねぇよな!!」



 俺は短刀を手に持ち、そのまま天井方向を斬り付けた。


 ドサッと落下する何か。それは、軟体捕食動物スライムだった。しかも、そいつの色は赤だった。




「赤かよ……初体験だぜぇ!?」




 スライムは、その危険度で体の色が変わる。緑や青といった色ならば危険度も少なくて済むが、黄色、橙色、紫……と危険になればなるほどヤバイ色使いになってく。

 一番ヤバいのは黒なんだが、その次が赤だ。

 ハイレベルのスライムは物理攻撃が殆ど通らねぇ………………コイツぁかなり拙ぃわ。

 ここは回避に専念して逃げまくるしかねぇな。帰りに泳がなきゃならんしよ。




「へっ、逃げるが勝ちってね!………………っとあ!?」




 野郎、軟体とは思えねぇ速さで回り込みやがった。相当腹減らしてやがんな?

だとしたら俺は久々の餌だもんな。逃がしてくれるわけねぇよな?




「(チッ、手持ちの武器じゃ倒せそうなもんはねぇか……せめて“魔鉱弾”がありゃあな)」




 魔鉱弾ってのは、魔術を使えねぇ人間でも、魔術と同じ効果を発生させる事ができる道具さ。使い捨てだがな。

ちと高ぇんだが、ケチってねぇで買っときゃ良かったな………………。




「しゃあねぇな………………あばよっ!!」




 俺はもと来た方向へ全力でダッシュする。

 逃げるためじゃないぜ?


 スライムあいつの向こうへ行くためさ。





 ある程度距離を取ってから回れ右して、俺はまたスライムの方を向く。あいつはゆっくりとこっちに向かって流れてくる。多分、あの体に触れたら溶かされてアウトだろうな。



 その場で軽くタンタンと2回その場跳躍。これはまぁ、儀式みてぇなもんさ。

 そのまま走り出す。初っ端から全速力だ!




「俺はなぁ、お宝の匂いがするところから、宝もゲットしねぇで逃げ出した事は一度も………。」


 俺はそう言いながらどんどん加速し、スライムにぶつかる寸前に、


「ねぇんだよ!!」




体を横に倒しながら壁に向かって跳び、そのまま壁を走った・・・・・




 へっ、このまま一番奥の扉まで突っ走ってやらぁ!!



 途中に幾つも部屋みてぇのがあるが、無視することにする。

 細けぇ宝に目がくらむのは二流以下のする事。そんな事してスライムやられるリスクを犯すのは割に合わねぇ。

一個に目をつけてんなら、そいつに向かってまっしぐらなのが真のトレジャーハンターだ。二兎追うものは一兎も得られねぇんだよ。ラッキーで手に入るもんは貰うがな?





 オラオラオラァ!…………………………着いたぜ~。

 俺は急いで扉を開けて中に入った。












----------------------------------





「ふぅ………………壁走りは疲れる………………。」




 久々に秘技を使っちまったからなー。あ~だりぃ。お宝見つけたら帰ろ。



 この部屋は、どうやら結構偉い奴がいるような部屋のようだ。あちこちに勲章やら旗やらが飾ってある。それらの展示品にはあまり価値がなさそうだが………。




「おっ、如何にもな感じだな?」




 俺の体ならまるごと入りそうな宝箱があった。きっとさぞかし、すんげぇお宝が眠ってんだろうな!

 俺はワクワクしながら宝箱を開け………………ようとして、思いとどまった。

 そして、カーゴパンツの腿のポケットから、2本の針金を取り出す。


 経験上、でかい宝箱は盗難防止に何らかの罠を張っている事が多い。

宝箱にはよく鍵穴が付いてるだろ? あれは本当に鍵がかかっている事もあるんだが、それよりも多いのは宝箱の罠を解除する鍵穴ってパターンだ。勿論、そのためにはどっかから鍵を見つける必要があるんだが、古い宝箱だと鍵が無ぇんだよ。


 そんな時は、ピッキングさ。

 こうやって鍵穴に針金を入れて………………手応えがねぇな。どうも罠はないらしい。





「さて、いよいよご対面~♪」




 この瞬間が一番緊張する。

 ギギィという古ぼけた音を立てて宝箱の蓋を開けると、そこには………………。







「………………成程なぁ。こいつぁ確かに、宝物だわ!」





 宝箱の中には、純度の高そうな魔鉱石に金属の長方形のプレートと、そして一枚の結構古い写真が入っていた。

 写真には、嬉しそうに写る家族。そこには若い夫婦と、男性に肩車されながら写っている子供が写っていた。多分、あの髭面がこのガキんちょだろう。面影がある。

 幸せそのものだな………………。





「っし。確かに宝は手に入れた。………………さて、問題はココからだな。」




 さて問題です。この部屋には出入り口が一つしかありません。

 まだあの化物スライムが彷徨いています。

 どうすれば良いでしょう?


 1 入口を出てひたすら突っ走って帰る。

 2 入口を出てスライムと戦って生きて帰る。

 3 入口を出て、そぉーっと見つからないように帰る。

 4 入口を出て、とにかく出口に向かう。んで、スライムに遭ったらその時考える。



 頭の中で一人クイズをやっていると、後ろの方でパシャンと水のような音がした。




「………………あぁ~、正解は選択肢5。『もう部屋に侵入したスライムをどうにか対処してココから生きて帰る』が正解か。」




 後ろを向くと既に入口を開けて侵入しているスライムがいた。しかもどうやら一体だけじゃねぇらしいし。




「大体三体くらいか? 入口塞ぎやがって、帰れねぇだろうが。」




 ってフザケてる場合じゃねぇ。こいつぁかなりヘビーだぜ?

 幸い、お宝はかさ張るもんじゃねぇから動きの邪魔になる事ぁないが、こっちに有効な攻撃手段がないのはかなり痛ぇぞ。



 二体がこちらに迫ってくる。残り一体は入口を塞いでやがる。こいつら本当にスライムか? 連携プレーするスライムなんざ初めてみたぜ。


その内一体が、俺の足元めがけて滑り込んできやがった!



「おわっと!」



 ギリギリで横に跳んで躱す。

 俺が躱して着地した瞬間を狙ってやがったのか、今度はもう一体が放物線を描いて覆うように飛んできやがった。



「危ねぇっ!!」



 俺は咄嗟に背後の壁を蹴り上げ、そのまま高く跳んでスライムの上を飛び越える。三角飛びってやつさ。



「………………よっと! ヤベっ!」



 着地した際にポケットから魔鉱石が転げ落ちる。

 拾っときたい所だが、この賢いスライムどもの事だ。俺が拾おうとして石に気を向けたら、たちまち食われちまうだろうな。

 俺は石をそのままに、無いよりはマシと短刀を構える。こうなりゃヤケだ。



 スライムどもは隙なく俺の周囲を彷徨いている。どうにも逃がしてくれる気はないらしい。

 三体目が出入り口をどけてくれるなら隙間を縫って走り抜けるぐらい楽勝なんだがな。




「(くっそ、こいつら、このまま俺の消耗を待つつもりかよ!)」




 スライムどもは、少しずつ離れて出入り口付近に固まり始める。

 これで俺は事実上の袋のネズミってわけだな。


 だが、離れるのならばと、俺はさっき落とした魔鉱石を拾わせてもらう。




「(畜生っ、どうする。どうすりゃいい………………?)」




俺は次第に焦り始めていたらしい。短刀を握る手が汗まみれになってやがる。

何か活路は無いか。何かあるだろうがよ、思いつけ、俺!



「………あ? そういや、スライムって“核”がある筈だよな。」



目を凝らして、よぉーくスライムどもの体を見てみる。

よく見るんだ。夏のビーチのお姉さん達のビキニを、透視するようにな!




巧妙に隠しちゃいるが、何か丸いもんがあるな。ひょっとしてあれが核か?




「そうと決まりゃ、試すしかねぇ………………オルァア!!」




 俺はスライムの一体に向かって、短刀で突きを敢行する。勿論狙いは、丸っこい核さ。


すると、ニュルンという感じで、スライムが避けた。



「(ビンゴっしょ!!)」



 俺はそのまま同じ要領で突きを繰り返し、スライムどもを追い払うことに成功!




「………………後は、逃げるが勝ちー!!」




 いやー、焦った焦った。が、結果オーライだろ。

 まだライカの神秘ナイスバディを堪能してないからな。死ねねぇよ。



 俺は急いでもと来た部屋に戻り、急いでドライスーツを着てボンベとマスクを付ける。


 とっとと脱出だ!











----------------------------------




 俺は、湖の中を泳いで上へ上へと進んでいく。

 来た時より寒い。多分日が沈みかけてんな。このまま寒中水泳してたら風邪引いちまう。




「(ふぅ………………ようやく岸かよ………おぉっ!!)」




 岸に上がった俺を待っていたのは、湖畔に揺れる夕日と、山あいに消えていく夕日の幻想的なコラボだった。

 ん~、中々に絶景! これだけでも頑張った甲斐あったかもな。



 さて、依頼人の家に行くか。











----------------------------------





 ノックして上がらせてもらうと、朝方は寝てた爺さんが起きてた。




「おお、君のことは知っているよ。確か、その若さでプロのトレジャーハンターをやっている……。」



「うんうん?」



「Aランクのトレジャーハンターの……。」



「はいはい!」



「ガイ=オシリス! 人呼んで、『節操無しのガイ』………………だったな?」




 こぉんのジジイ、ドヤ顔で「だったな?」とか言ってる割にはしっかり間違ってんじゃねぇか。オマケにどこの世界に通り名が「節操無し」なんて奴がいるんだよ!!



 俺のそんな態度を見たのか、髭面がジジイに補足説明をしてくれるっぽい。頼むぜ、俺の正しい名前と、通り名を教えてやってくれぃ!




「親父、違うわ。正しくは………あ~………ガイ=オシタリ。人呼んで………………。」



 良いよ、ここまで合ってるよ。

合ってるからチラチラこっち伺うのやめて?




「………………そう! 人呼んで、『ガイ・オブ・モンキー』さ。」




 コイツ、後で暗殺したろか。




 まぁ良い。取り敢えず、この不愉快な親子の下からサッサと立ち去るためにも、仕事の話を始めてしまおう。




「今回のアンタらの依頼、確かに果たした。結果が………こいつだ。」




 俺はプレートと魔鉱石、そして例の写真を渡した。





「親父………………この写真て………………………。」



「ああそうだ。家族で取った唯一の写真だ。………せがれよ、お前に生きているうちに渡しておきたくてな。」



「親父、縁起でもねぇ事言うなよ。………………でも、ありがとうな。大事にするよ。」



「お前がそう言ってくれて嬉しいよ。………母さん、元気にやってるかい。俺たちは、まだ元気だぞ………。」




 ………………暗殺はやめといてやるか。

親子かぁ………………良いもんだな。

 きっと死んじまったお袋さんも、あんたらの姿見て、あの世で喜んでるぜ。

















「なぁ親父………………もう良いだろ? 母さんとヨリ戻しても。」








 ………………ん!?

 んっ、ん~~!?

 この髭面野郎、今何か聞き捨てならない事言わなかったか!?




「しかしな、この年て再婚てお前………………こそばゆいというか、何というか…………。」



「この写真出してよ、もう一度こんな風に一緒に笑って暮らしませんかって言えよ。……知ってるぜ。俺に隠れてコソコソ手紙のやり取りしてんの。端末からのメールだと履歴残るから手紙使ってんだろ?」



「せがれ……お前、知ってて………………!」



「親父。近いうちに会うだけ会っても良いだろう?」



「ハハ、照れくさいな………………。」







 ………………これはコレで良いのか??

 何かもうアホらしい。帰ろ。




「んじゃ、邪魔しちゃ悪いから俺はもう帰るぜ。また何かあったらご贔屓に~。」



「待ってくれ、ガイ君。」



 話しかけんな、色ボケジジイ。俺は帰ってライカに夜這いを仕掛けねぇとならんのだぞ?

 俺は不機嫌も顕に、



「んだよ? 熟年の彼氏彼女の恋愛事情の相談は当方は受け付けておりません。」



「そうじゃない。………………コレは、君が持って行ってくれ。何かしら価値が有るはずだ。」



 それは、例のプレートと魔鉱石だった。



「へ、くれんのコレ?」



「ああ。家族を戻すきっかけをくれたお礼だ。是非受け取ってくれ。」



「……そういう事なら、遠慮なくいただこうかね。」





 俺はその二つを受け取ると、小屋の扉を開けた。

 間もなく日も沈みかけてきてる。暗くなる前に急いで町に戻るか。




「じゃ、家族の再結成、無事に済むことを祈ってるよ。」



「本当にありがとう、ガイ!」



「またな………ワシらに取って、あんたはナイスガイだよ!」




 帰り道に向かって歩き始める俺の背中から聞こえる最後の言葉に、ちょっとだけ気をよくした俺は、右手を軽く振り上げ、そのまま帰路についた。







<ミッション成果>

 ミッション達成度:100%

 貢献度:ギルド+3、信用+20

 報酬:8000クレジット+ランクボーナス4000クレジット

 獲得品:高純度魔鉱石、謎のプレート





To be continued……


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