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Treasure's ~お宝を探せ!~  作者: 海蔵樹法
第一章 その名はガイ=オシタリ
1/16

01 締まらないナイスガイ




 俺の名前はガイ=オシタリ。ナイスガイのガイさ。

 

 職業はトレジャーハンター。格好良いだろ?

 遺跡巡って見つけたお宝が値打ちもんだったら、それをギルド経由で世界遺産にしてもらったり、新種の生物を発見したら歴史に名を残せたり、とにかく、すっげぇ名誉な職業なんだぜ!


 今日も俺は、次の冒険とロマンを求めて、ギルドに通うのさ。

 さて今日は、どんな冒険が待ってんのかなぁ?





----------------------------------





 えーっと、確かこの辺に……あった!

 扉の前に掛けられた、宝箱の看板。これが俺たちトレジャーハンターが所属する、“トレジャーギルド”の看板さ。見慣れちまったけどな?


 さぁってと、早速中に入ろっかな。





「いらっしゃい…………おお、ガイじゃねぇか?丁度良いところに来たな。お前に紹介したい仕事があるんだ!」


 入るなり、顔なじみのおっちゃん……ギルドマスターが俺に結構真剣な顔して話してきた。

 ふふ~ん、こいつぁでかい仕事ヤマの匂いがするぜぇ~?



「依頼書見せてくれよ?」


「おう、こいつだ!」


 俺は貰った依頼書をざっと見てみる。



~~~~~~~~~~~~~~~~


『受付:緊急

 募集ランク:A以上

 ミッションタイプ:救出

 場所:魔鉱石の洞窟

 報酬:50000クレジット

 内容:

  魔鉱石の洞窟の怪物から

 命からがら逃げてきたんだが、

 仲間がまだいるはずなんだ。

 助けてくれ!』


~~~~~~~~~~~~~~~~



 ………………んだよコレ?同業者からかぁ?にしちゃあ、やたら羽振り良いが。



「おっちゃん、俺は人探しじゃなくて宝探ししてぇんだけど?」


「んな事言うなよ、ランク報酬弾むからさ、なっ?頼むよ?」



 ほほぉ、普段はケチくせぇおっちゃんが報酬弾むってか。

 良いぜぇ、一肌脱いじゃろうじゃん?



「うっし、今の言葉忘れんなよ、おっちゃん?………………魔鉱石の洞窟だったよな?直ぐに行ってくるわー!!」


「あっ、おい待て!」


 へっへっへぇ、50000クレジットってだけで結構な額だしよ、オマケにランク報酬上乗せ~。今夜は宴だ~い♪


 俺は飛ぶように走り、洞窟へ向かった。



「………………あのバカ。腕は確かなんだが、やっぱまだガキだなぁ。探す相手の特徴も知らねぇで、どうやって見つける気だ?」











----------------------------------





 あっという間に俺は例の洞窟に着いた。

 結構な時間走った気がするが、俺は足の速さと体力には自信あるんだよねぇ~。



「っと………………相変わらず薄気味悪りぃな。」



 ここは、魔鉱石って代物が採掘される数少ない場所なんだと。んで、その魔鉱石ってやつは、暗がりでも光るんだよコレが。それが赤だったり青だったり、まぁ色とりどりで……早い話、不気味なんだよな。オマケにムダに広いしよぉ。


 で、魔鉱石ってやつは、お名前の通り魔力が超篭ってるんだよ。だから、そんな場所には、



「っと、危ねぇっ! 早速おいでなすったか?」



 俺が進んでいく目の前を、風切り音がする。

 ギリギリで躱した俺が前を見ると、そこには子鬼ゴブリンがいた。


 俺様を闇討ちしようなんざ、100年早ぇよ。



「グウウウウ………………ウガアアッ!!」



 鋭い爪で俺を引き裂こうとするが、俺はバック転で躱し、その間に腰の小刀を左手で抜いて逆手に構える。



「掛かってきな。鬼さんこっちら~♪」



 俺は相手を怒らせるためにふざけてやった。相手はまんまと引っかかり、逆上してきやがった。

 こうなると、直線的で避け易いんだよねぇ。



「ほいっ、と………………貰ったァ!!」



 突っ込んでくるゴブリンを避けながら足を引っ掛けて転ばせて、背中からに心臓に一発。………………ふむ、霧散したな。これにて成敗完了。



 しっかし、こりゃやべぇかもな。そんじょそこらのハンターじゃ、生きて帰るのは無理だな。心なしか凶暴性が倍増してるし。



「お~い、誰もいないかぁ~!?」



 取り敢えず声を出して叫んでみる。

 いないかぁ~、いないかぁ~、いないかぁ~…………俺の木霊が虚しく響くだけだった。



「チッ、かったりぃな~。………………奥、進んでみるか。」











----------------------------------





 先に進むにつれて、どんどん魔物が増えてきた。

この魔物って奴ら、実は出てき始めたのは、ここ1、2年でものすげぇ勢いで出てきやがった。

何で出てきたのかは知らねぇし、どういうわけか色んな種類がいやがる。

 昔からも、何件か目撃例があったが、年に2、3回ありゃ多いって具合だった。




 ただわかってんのは、こいつらは人間を見たら絶対襲う、って事だけだ。




「くそ、しつけぇな!」



 もう何回目かわからん魔物共との遭遇に、俺は辟易していた。

 戦ってばかりじゃ消耗しちまうからな、逃げられる時は逃げるのさ。

 何せ、俺は確かにAランクのトレジャーハンターで、腕に覚えもあるが、それ以外は只の人間だ。

 飽きもするし、疲れもするんだよ。


 だからこそ、ちょっとした出っ張りに躓いたりもする。



「ぐっ!?ッッッ~~~~~………ってぇな、この蝙蝠野郎が!!」



 洞窟の天井にぶら下がっていた馬鹿でかい蝙蝠が俺の頭をいい具合に殴ってきた。

 今回は殴られただけで済んだから良かったようなものの、吸血されてたらアウトだったな。

 つーか、躓いてなかったら確実に、俺は奴の吸血パック確定だったんじゃね?


 安心したと同時に、頭にきた俺は、サスペンダー型のホルダーに引っ掛けてある小さい細長い菱形の短剣を2本取り出した。

この短剣、切っ先も取っ手も、どっちにも刃が入っている。

そいつの中心についている黒い突起を押すと、カシャンっという音ともに、菱形の短剣が十字状に変わる。



「的になりやがれ!!」



 俺は、“手裏剣”を投げつけた。

 暗がりだが、飛んでった方向は分かってんだ。外すかよ。



 グェともギョェとも取れる妙な呻き声を上げて、ドサッという音がした。多分仕留めたな。



 丁度その時だ。俺が決して無視できない声が聞こえてきた。




「キャーーーー!!」





 間違いなく、女の悲鳴。

それも若いと見た!……いや、聞いた!


 多分、この声の主がギルドで言ってた救出対象に違ぇねぇ。



「待ってろ!今助けるぞ!!」



 俺は真剣な返事をした。

 そりゃそうだ。人助けなんだからな、当たり前だろう?


 だ・か・ら、あっわよっくばぁ~♪………………へへ。



 待っててくれぇ、俺のお姫様ァァァァン!!











----------------------------------





「い、いや………………来ないで…………………………。」



 必死に後ずさりしている影を発見。どうやらあれがさっきの声の主と見た。

 何か、足が何本もあるような気味の悪りぃ影があるが、どうやらあいつを倒してしまえば大丈夫っぽいな?


 ここからでは顔が見えないが、ここまで来たら美人と信じて助けに行くしかあるまいっ。



 俺は大きな影に素早く近づき、小刀で脚みたいなやつを一本斬り飛ばす。




『ギィィィィィ!!』




 何やら悲鳴(?)をあげている。効いているらしいな。

 俺はその大きな影に向かって立ち、背中にボイス美女(顔はまだ見てないし)を背に隠すように立つ。



「お嬢さん、大丈夫かい?助けに来たぜ!!」


「え………………?」


「怪我はないか?動けるなら、ここから少し離れたところで待っててくれ。こいつを片付けたら直ぐに迎えに行く!!」



 迎えに行く。かぁ~っ、言ってみたかったんだよ、この言葉!



「ああ………………ありがとう!あなたも気をつけてね!?」



 あなた、か………………ふっへっへ、燃えてきたぜぇ!!



「オラ、化け物! 掛かってきやがれ!!」


 俺はもぞもぞ動く影にそう言うが、そもそも魔物に人間の言葉などわかるはずがないだろうな。

 掛かってこいと言った手前、何だか微妙な気分だが、こっちから攻撃することにする。


 俺はポーチから手の平サイズのボール状の金属を取り出した。それは、洞窟や遺跡なんかでも使っても良いように火薬の量が調整された爆薬だ。


 ピンを引き抜き、前方に放り投げる。




 ドンッ!という音がして、一瞬だけ光った。

 またよくわからん声をあげていたが、一瞬光った時に、はっきり見えた。




「マジかよ………………何で“全盲蜘蛛”がいるんだよ!?」




 全盲蜘蛛は魔物の一種で、目はついているのだが機能しておらず、変わりにそれ以外の感覚が発達した魔物らしい。

 人の2倍位の大きさはあって、たまに村とかに出没して、俺たちにも討伐依頼が回ってくる場合があるが………………。



「嘘だろ。いつからここは全盲蜘蛛ヤツの巣になった!?」



 全盲蜘蛛は、普通の蜘蛛みたいな巣は作らない。奴らは洞穴を好み、そこに迷い込んできたものを捕食する。あんまりにも餌がない場合は自分から洞穴を出て狩りをしに行くが、基本的に巣から出たりしない。



 そもそも、人間が出入りするところは出没しないはずだ。




「偶然迷い込んだのか………………まぁ良いか。正体が分かれば、対処法もわかる!!」


 とは言え、洞窟の雑魚どもに比べれば、その戦闘力は段違い。油断してれば必ずやられるのは目に見えてる。

 閃光弾も煙幕も持ってるが、全盲である以上効き目はなさそうだしな。



 なぁ~んて考えてると、襲ってきた!




「うおっと、っお、っと、っは!」


 残りの足を巧みに使い俺を殺そうとするが、俺は伏せたり跳んだり側転したりと、全部躱しきる。



「しゃあねぇ………………も一丁、いっとくか!」



 俺は、さっきの爆弾をもう一発食らわせてやろうと放り投げる。

 が、あの野郎学習してるらしく、こっちへ即座に足で弾き飛ばしてきやがった。




「うわわわわわ!!!」




 俺は急いで姿勢を低くしたままダッシュして逃げる。

 途端に後ろで爆発音。助かったぁ~。



「だったらよ、こいつはどうだ!?」



 今度は手裏剣を投げてみる。念のため、跳ね返し対策に小刀を正面に構えつつ横っ飛びできる準備をするが………………。




『ギィィィィィ!!!』




 よっしゃ、食らいやがったぜ。へっ、ザマぁねぇな。



 と、心の中でガッツポーズを取って思った。

 何で、あいつは弾き飛ばさなかったんだ?

 学習したんなら、さっきの手裏剣だって弾き返してるはずだよな?




「ふーん………………ちょっぴり解決策、見えたかもな?」




 俺はタンタンと軽く2回その場跳びをする。大体この辺りの地形は覚えたからな、できるだろ。


 俺は高速で移動を開始した。但し、無音でだ・・・・


 

 全盲蜘蛛は、さっきから俺が動くたびに俺を追いかけてきていたようだが、どうやら俺を見失ったらしい。

 やっぱりな。あいつ、一回目の爆薬で鼻をやられたようだな。

 今でも火薬の匂いがまだするもんな。


 オマケに音を消して走って撹乱したんだ。こっちの居場所なんかわからねぇだろうよ。



 だからお前は今、俺が何してるかわかんねぇだろ?

 俺が残りの爆薬を分解して中身の火薬をお前の回りに少しずつ蒔いて、最後の爆薬のピンを抜いて、無音でお前の体の真下に置こうとしてるなんて、考えもしないだろ?


 蜘蛛って奴は、みんな足長だからな。腹を地面から上げて歩くもんな。




 さて、準備OK~。ピンを抜いて、念の為に直ぐに手から放さずに……今だ!



「(じゃあな、バケモン!)」




 ドゴォォンという音がして、蜘蛛はその胴体を爆散させた。



「よっしゃあ!!待っててくれよ、お姫さん~♪」









----------------------------------





 俺は麗しの彼女を探す。

 彼女は、少し先の岩に腰掛けていた。



「よぉ、大丈夫だったかいお嬢さん。あの化物は、俺が倒してきたぜ。………………ここは危険だ、早く出よう。」



 俺は手を差し伸べる。握り返される手。

 わぁ~お、役得役得ぅ~!!


 俺はそのまま、彼女がその勢いで手を話してしまわないように気をつけながら、走って洞窟を出た。








「うおっ!?眩しいな………………どっか怪我とかしてないかい、お嬢さん?」



 そう言って振り向いた先には………………。



「ふふっ、ありがとうボウヤ。助かったわ。」



 ブロンドの髪が美しい、軽鎧を来た麗しき女性がいた。助けて良かったぁ~。

 にしても、今聞き捨てならんことをこの麗しき女性は言っていたな?



「いや、良いんだ。………………それより、俺をボウヤ扱いってのは、どういう事だい?」


「あら、ごめんなさい?その………………凄く、小柄だったから。」




 何だって………………?

 愛があれば、身長差なんて関係ないはずだろ?




「でも俺、もう15歳だし。」


「あら、本当に少年じゃないの?ダメよ、おませさん?」




 くぅ………………どうせ俺はガキさ!




 それでも俺は美女を連れ立って、ギルドへ戻った。

 束の間だって良い。俺の近くを良い香りがする美人が歩く。

 それだけで、俺は満足さ………………。











----------------------------------





「今帰ったぜ~!」


「おぉ!?ちゃんと連れてきたな。よく分かったな、その人って?」



 おっちゃんは、俺が帰るなりそう切り出した。

 そういや、俺、特徴も何も聞いてなかったっけ?



 あれ?それで出逢ったって事は、コレ即ち運命!?




「お嬢さん、俺はまだ子供かもしれないが、それでも………………。」

「ミラ!無事か、ミラ!!」



 俺の告白タイムに被せて強制的に俺を黙らせたジジイ、貴様は誰だ?



「ええ、ありがとう。この子が助けてくれたのよ?」


「ほう、勇ましい少年だ。君、名前は?」


 好々爺といった感じのジジイだが、ガキ扱いして上目遣いで、かがみこんで俺の頭の高さに目線を合わせようとするのはムカつくな。



「………………ガイ。ガイ=オシタリ。ナイスガイのガイ、だ。」


「ほう!君があの有名な、『軽業のガイ』だね?いや、失礼した。お会い出来て光栄だ!」



 変なアダ名はともかく、急に態度をコロッと変えて両手で握手してきた。

 まぁ、悪い気はしない。ジジイ相手じゃなければもっと良いがな?



「是非お礼させてくれ!報酬の他に、何でも言ってくれ。私が出来る事はなんでもしよう。何せ、命よりも大事な妻を助けてくれたのだからね!」



 …………………………は?

 ………………はぁ?


「はぁぁぁぁぁ!?」


 俺は思わず声が出てしまった。

 いや、このパターンはありえないこともないが、ありえないだろ。あっちゃいけないよ!



「………………あの、誰が妻?」


「私よ、おませさん?」



 期待通りの答えあっざーす。

 はぁ~あ、俺って結構女の人助けるんだけど、そこから発展した試し一回もないんだよなぁ~。



 結局俺は、約束の報酬を倍額貰い、更にランク報酬の上乗せ分も貰い、金としては計20万クレジットという破格の大金を手に入れた。




 誰か俺に、出逢いをくれよぉ~………………。






<ミッション成果>

 ミッション達成度:100%

 貢献度:ギルド+5、信用+5

 報酬:10万クレジット+ランクボーナス10万クレジット





To be continued……


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