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2.戦前談笑~まだ慌てる奴等ではない~

 「おっ、ここだな。」


  ランディとじゃれながら歩くこと1分弱。赤色の扉の前でランディが止まる。

 扉の上にはデジタル時計が置いてあり、【00:08:57】と表示されている。これは開戦までの残り時間を示しているものだ。

 そして、扉の前には【278】という数字が浮き出ている。これは部屋の中の人数を示している。


  「だいぶ集まってんなー。」


 「時間も人もギリギリだったな。」


 「ま、間に合ってよかったということで…。この扉を抜けたら敵だ、例え戦場であってもお互い恨みっこ無しで。」


  「わかってるっての。」


 ランディと拳を軽くぶつけ合う。

 軽く手を降るとランディはさっさと扉を潜っていった。


 俺もさっさと潜んないとな。後ろが詰まる前に。




 扉を潜るとチーム選択ウィンドウが出てくる。リーダーを見て迷うことなくβチームへ。だってソース派だし。


 βチーム側の待機スペースへと案内される。


 「あ、ユート君ではないか。君も出るのかい?」


 「ユート、久しい、ソース、好きとは、知らな、かった。」


  入ると同時に声をかけられる。

 声が聞こえた方を向けば、赤い髪を伸ばしてライダースーツを着た長身の女性国士無双さんと藍色の髪をおかっぱにした橙色のドレスを着た小柄な女の子KAHOだ。


 ちなみにMWOではアバターの服装も自由自在だ。着物を着てようとノースリーブを着てようとナース服だろうと関係なくMSAを装着出来る。

 これはゲームだからこそできることとして、また戦闘中以外の時間も楽しめるようにとの所謂お楽しみ要素として存在している。

  ゲーム内通貨を使って出来る武器ガチャやパーツガチャのお仲間として服ガチャなんてものもあるくらいだし、イベント限定の服も存在する。カホ(KAHO)の橙色ドレスもイベントアイテムのはずだ。


 「ちーす。国士無双さんにカホもソース派なんすね。」


 「いや、私は第三勢力塩のみ派」


  「敵かよぉー!」


 「まさか、身内に、敵、居るとは、不覚。」


 「敵だよー?カホちゃんはともかくユート君なら敵対してもそんなに怖くないしね。」


  「ユート、弱い。パイル、オンリー、にしても、もっと、強いの、いっぱい、いる。」


 この二人、共に階級は大尉で俺より2つ階級が上だ。そもそもMWOの階級は勝率や撃墜数、貢献度などから算出した経験値を溜めていく仕様で、二人とも俺と同じ第二陣組だから、ログイン時間に然程差がないのならば、普通に俺よりも強いということになる。


 「うるせいやい!それより、そのしゃべり方そろそろやめろよ。初心者を油断させる為なんだから、ここでRPロールプレイする必要無いだろ?」


 「RP、するのが、趣味、故に、いたし、かたなし。」


 カホとはログイン初日からのフレンドで、初期はこいつが普通の喋りをしていたのを知ってる。

 知ってるからこそ、


  「違和感が半端ないんだよなぁ…。」

 

  「失礼なやつだねぇ。」


 「ほんと、失礼。」


  国士無双さんが苦笑いし、カホが睨んでくる。そんな最中―


  《Team Survival 開戦まで残り5分となりました。退室不可能となりました。》


  ―アナウンスがなった。開戦5分前になるとサーバー準備といたずら防止の為、退室不可能となる。


  アナウンスなったし、他のところに顔だすね~、と国士無双さんは何処かへと消えた。のだが、


  「何故着いてくる?」


  「国士、敵、だった、ならば、同志の、ユート、と共に、いく。」


 トコトコと後ろをついてくるカホ。

  別に着いてきたからといって困る仲では無いので構わないのだが、ひとつだけ言っておくことにする。


  「カホ。着いてくるのは良いけど口調を『これで良い?』………わかった。」


 フレンドチャット経由で会話って…。

 端から見ると俺ら仲がよろしくないみたいだよな。まぁ、良いけど。実際は仲良いし。


 『ユート、前からmoriさんかと誰かが来る。』


  カホが人の接近を教えてくれる。

  前を見ると茶髪の穏やかそうなイケメンmoriさんと、見た感じヤンキーオーラが溢れでているちょっと厳つめな兄ちゃんが此方へと歩いてきていた。


 「moriさんこんにちは。掲示板見ました。…頑張ってくださいね。」


 「moriさん、久しい、掲示板、見た、限り、moriさん、どっち派、でもない、こっち、選んだ、のはなぜ?」


  「やぁユート君にカホちゃん。僕としては相性の良いアルカディア陣営の居るαチームに行きたかったんだけどね…。どうせTSチームサバイバルなんだからこっちいけとNEROさんに言われてね。

 あ、こちらは迷い込んだ一等兵のハーデス君。で、こっちはユート君と〔Aquariusアクエリアス〕のカホちゃん。」


  「紹介に預かったハーデスッス。一等兵すけど来ちゃったからには全力を尽くしまっす。…ところでアクエリアスってなんすか?」


  質問してくるハーデス君。まぁ気になるよね。


 「アクエリアスっていうのはね、ちょっと前に公式イベントで【黄道十二星座より愛を込めて】というのがあって。要は各星座の部屋へと転移させられてその部屋でバトロワ、残った一人がその星座の機体を貰えるってイベントでその報酬。だよね?」


 「そう、まず、ランダムに、選ばれ、60、人の、中から、一番、になる」


  「へー、……って、ちょっと待ってください!?機体ってなんすか機体って!?」


 「まず、このゲームの機体は、AアタッカーDディフェンダーEエンジニアPプロフェッショナルSスナイパーTトラップマスター、の基本六種類から選べる。他にはパーツガチャでレア機体としてHハイブリッドというのがあるね。このHと同じようなもので、アクエリアスはそれ単体の特色を持つ機体ってこと。」


  「勿論、カスタム、してる。それと、訂正、Hと、違って、入手、したとき、自分の、好みに、ある程度、出来る。私は、Dの、耐久、のまま、Aの、スペック、だと、思って、くれれば、良い。」


 黄道十二星座イベントは正直運ゲーの要素も高かったからな。まず、60人×12の720人に選ばれなきゃいけない。イベントは日曜日だったし、MWO人口の50%は居たと考えて、兵長以上と考えてもだいたい25000分の720…約2.9%ほどに当選しなくてはならない。

 そのかわり賞品がオンリーワンなな機体だというなら儲けものだろう。記念品というだけではなく普通に強いみたいだし。


  「へー、勉強になりましたッス。」


  「まぁハーデス君はこれからだし、むしろ二つ名持ちなカホちゃんと知り合いになれただけでもラッキーだと思うよ。…そろそろ時間だね。」


 俺と知り合えたことはラッキーじゃないのかよ。…まぁ、ラッキーというほどではないか。うん。

チラリとこちらを伺うカホ。繋がるアイコンタクト。判ってるっての。


 《時間になりました。限時刻を持って開戦となります。【月面都市ムーンコア】へと転移を開始します。》


  光に身体が包まれる。転移の前触れだ。ちゃんとカホの希望に添えられてるか瞬時に軽くチェックをし、俺は戦場へと転移した。

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