10 .stage1~鬼畜仕様。チームメンバーは使い捨て可~
短いルートの筈なのに結構時間かかったし、長いルートを通っているカホたちはもっと時間がかかるかもしれない。というかかかっているのだろう。全然来る気配なし。
一応暇人のために運営が用意してくれた玩具としてチェス、軍人将棋、トランプがあるのだが、相手があるてしあだと勝負にならない。
トランプだとこっちの圧勝。他はあるてしあの圧勝。昔からなぜかトランプだけは勝てないらしい。
待てど暮らせど来ない。
あるてしあと『一文字ずつ増えてくしりとり』をして遊んでたけど本気で音沙汰がない。
これはもしかしてしらなちき落ちた?でもそしたら俺らに連絡あるはず…
「これ、カホ達が落ちてたら俺らにアナウンス、なるよな?」
「え、それはとうぜ…………………………ちょっとルール見直してくる。」
思い当たる節でもあったのか、顔を若干青くして調べ始めるあるてしあ。任せてばかりじゃなんだし俺も調べよう。腕時計のメニューから公式イベント特設ページへと飛ぶ。
「やらかした。ダグラス達はともかく、手応えなかった最初の襲撃者や飲み比べの時に見た一部の顔ぶれ。やつらルール把握して捨てゴマ用意してたのか。」
あるてしあがなにか見つけたのか言う。ていうか内容が衝撃的だ。
「捨てゴマ?」
「イベント特設ページの新情報の項に書いてある。【チームのメンバーがリタイアした場合でも残りのメンバーはそのままイベントを続けることが出来ます。そのままメンバーが欠けた状態でも構いませんし、同じ境遇の方を見つけてメンバーを新しく増やしても構いません。】というルールを使えば新たに補充できるというわけだ。」
あるてしあが吐き捨てるように、それでも静かに言う。確かに胸くそ悪いルールだ。というか、これどうなるんだろ?俺ら閉じ込められてる状態だけど、チームメンバーのリタイア通知みたいの来るわけ?んで、解放されるっていう流れなワケか?
とか考えていたら後ろの扉が突如開かれる。二人して振り向く。
「ごめん、察しの通りボクだけが残った。といってもカホのお陰で、庇ってくれなきゃ落ちてたのはボクだったよ。」
開いていなかった、開かなかった扉を開けて入ってきたのはレヴィただひとり。
MSAを脱いだ状態のそのアバターからしてもキレてるのがわかる。
その姿を見てあるてしあがわなわなと震えていた。
「ぼ、ボクっ娘!?やばい、容姿が好みなのに性格まで好みとか、明るいボクっ娘を泣かせたい!」
「自重しろよ!このたこ!」
「だってボクっ娘だよ!?絶滅危惧種だよぉ!?苛めたい願望が止まらない!!」
「レヴィを苛めんのはイベント終わってからやれよぉ!今関係ないだろー」
「あれ!?ボクなんか扱い酷くない?結構シリアスだったよね、今!」
「そもそもアバターが好みでもどうしよもなくね?現実だと面影あれどもやっぱり違うだろうに。」
「そこは愛だよ!」
「愛なら仕方ないな。」
「仕方なくないよ!」
レヴィが叫ぶ。ともあれ、素面なレヴィが見れるのは珍しい。一人称が原因でいじめられて以来リアルでは他人の前では喋らないようにしているらしいし、こういったオンラインの場ではホワイトボードなどの意思疏通アイテムを使って会話をすることにしてると前聞いたことがあるのに。
とレヴィをかるく弄んで俺とあるてしあが落ち着いたところで今後の方針を決めるとしよう。ここまで残った以上カホとざるそばさんの分も頑張りたいとは思うし。
レヴィが落ち着けてないとかそういうのはあれだ。気にしない方向で。だってこの場合さっきまでリラックスして休んでいた俺らと、混戦になって死ぬ勢いで突破してきたばかりのレヴィでは体力や思考能力がやはり違う。てことは話し合いにレヴィは参加させない方が良い。
「新しい面子の補充をする方向でおけ?」
「おけ。でもこれ、制限は解除されないんでしょ?じゃあ中尉以下を一人も入れずにいたら失格になるんじゃないか?」
「この運営ならやりそうだねぇ。じゃあ勧誘するのは以下と以上一人ずつってことでFA?」
「FA。だけど、番号は決め直しなのかそれともまさかのそのまま?」
「そのままなら戦略が拡がるね。3しか出れないとか時に二人出れるのは大きいと思う。」
「………………君たち色々と決断とか早くない?」
「こう見えても〔トリックスター〕の異名をもらってるからね。」
「ただの色ボケでは無かったのか…。」
「知ってたよね?ユートは私の事結構詳しく知ってるよね?」
「あくまで結構だけどね。」
正直カホにはは悪いけどこの状況は有利である。ぶちギレレヴィとやる気UPなあるてしあ。この二人がいる以上よほどの事かない限り下手なやられ方はないとは思うけど…。
フラグ?ははは、そんなわけないじゃないか。