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1.戦争の兆候~始まりは掲示板から~

  今日も今日とて戦場を走る。

  黒いボディに赤のラインが縦に数本、無駄なものを剃り落としたと思われる、同タイプと比べて細身な身体。その名前はプレイヤーネーム【Yuto】ことユートである。


 見渡す限りの大自然。

  ステージ【自然の砦セイントラル】は広さ5、障害物5、収容人数60人のバトルステージだ。広さと障害物は1~9の数値で表されており数字が大きいほど広く障害物が多いステージとなる。

【自然の砦セイントラル】は中間的なステージといえよう。


  ブースターを吹かしながら走っているユートへと飛んで来るのは銃弾。 それも三方向から。それをAアタッカーの機動力を生かしつつ回避運動。

 見事回避し、そのまま前に見えた障害物としておいてあるコンテナへと身を隠し息をつく。


 「やべったなぁ…。味方残り4人の敵7人。俺の残りLIFEは120…。」


  このゲームではスーツの耐久値】(LIFE)が存在している。

  ユートのMSHのタイプはA。

  AのLIFEは平均250。

  ユートは機動力を重視してあげるようにカスタムしてあるため215と低めだが、このスーツは耐久値以外に防御のための数値は存在しておらずDEF等といった要素は存在しない。弾が当たった場合耐久値からマイナス30と言った、ダメージと耐久値しか存在していないシステムだ。

 

 したがってユートのLIFEはまだ半分以上残っている。


 「QSクイックスタートとは言え悪いことしたよなぁ…。」


  独りごちり、息を整え再び動き出す。


 左下にあるブーストケージは既に満タンまで溜まっている。一気にブースターを吹かして先程通った、無駄に拓けた場所を全速力で通り過ぎ、狙撃主がいるであろう位置へと駆け込む。


  「くそっ!この野郎!ぶっ潰ッ…、」


  「遅いわボケぇ!!」


  ユートのパイルが敵を抉る。

  MWOでは近接装備としてパイルバンカーを選ぶことが出来る。一発当てれば190ととんでもないダメージを与えられる代わりに、当てるのが難しいとされる所謂ロマン装備だ。


  とは言えこのMWOではパイルバンカーは割と良く見る装備である。

MWOでは装備として、メイン装備(銃)、サブ装備A、B(グレネード、短銃、チャフ、サーチ等)、近接装備の4つを自由に選択できる。

そのためメイン装備の弾切れの際に特攻用として高ダメージを叩き出せるパイルバンカーを装備しておく人は多い。

それ以上にユートの様にメインとして使う近接戦闘メインのプレイヤーも多々いるのだが…。


「まさか、初心者歓迎の部屋に入っちゃうとはなぁ。ちゃんと制限かけておいてくれよなー。」


ユートに抉られロストしていく敵の姿を見送りながらユートは愚痴る。

突如、後ろから来る気配を察知しブースターを逆噴射。銃弾を受けながらもそのまま一気に後ろから迫ってきていた相手にバックドロップ。振り向き様のパイルバンカーを食らわす。


「……これ、やっぱり少尉が入っちゃいけない奴だろ。」


あれぐらい回避して見せろよ、と思いつつ溜め息を溢す。LIFEも54残っている。まぁ、さっさと倒して部屋を出ようかと動き出そうとした瞬間


《―αチームが全滅しました。βチームの勝利です。―》


女性オペレータの声がすると共に視界がぐるりと暗転して何処かへと転送される感覚に包まれる。



※※※


あの後雑談や反省会を始める一行を尻目にさっさと部屋から撤退して来たユート。

流石に初心者歓迎の部屋で、しかも大半が二等兵か一等兵の部屋で、俺TUEEEEEをするつもりなんて一切ないし。


ちなみに二等兵からはじまって一等兵、上等兵、兵長、伍長、軍曹、曹長、准尉、少尉、中尉、大尉、少佐、中佐、大佐、少将、中将、大将と上がっていく。

MWOでは確か中将が一番進んでいるプレイヤーだったはず。


とりあえずロビーへと移動し、めぼしい部屋でもないかと探すことへ。


「ユートじゃねーか、これから上級サバ行くんだが一緒にどーだ?」


不意に後ろから声をかけられる。

このゲームでは戦闘中以外はMSHは脱ぐ仕様となっている。それ以外の部屋やロビーなどでは最初に現実する自分をある程度モチーフにしてランダムでアバターが製作される仕組みとなっている。


後ろには茶髪のちょっといかつい感じの男がニヤニヤ顔でこっちを見ていた。


「ランディか。サバで上級って、面子はどうなんだ。俺やお前みたいな少尉でも、加えて言うなら特殊な戦い方でも入れそうなのか?」


茶髪の男ランディは俺と同じ少尉で、同じAだ。違うのはこいつがグレネードをメインに立ち回るスタイルというだけだな。


ちなみに、サバっていうのはサーバーの略ではない。このゲームではサーバーは部屋ごとに分けてるとかで、最初にどのサーバーでやるかとか選択しなくても良い。お陰で適当にインしても知り合いがサーバー関係なしに誰かしら居るという中々なシステムとなっている。


ではなんの略かと言うとサバイバルの略である。


「とりあえず、これ見てみ」


そう言ってランディから青い光の映像が渡される。目の前に出されるのは公式掲示板のログだった。


※※※


【雑談スレ146】

102:けろんぱ

  目玉焼きといったら醤油。


103:jack

  ソースだろjk


104:アムロ霊

  >>103お前は間違ってない。


105:aaaa

  醤油に一票。醤油のしょっぱさが目玉焼きに合うんだよなこれが


106: ZERO

  嫌な流れだ…。


107:けろんぱ

お?やるんか?やっちゃうんか?


108:Mercuri

  この光景見たことある。

確か、きのこたけのこ戦争とかジャンプガンガン戦争とかの時に


109:jack

  すぐにやりたがる。これだから醤油派は…。塩分が頭に昇りすぎだろ。


110:aaaa

  きのこたけのこ戦争の時もいってなかったそれ?


111:けろんぱ

  ボキャブラリー少ないのなw


112:ZERO

  煽るな!頼むから変な理由で大規模な戦争するのもうやめようぜ。


113:くいんしー

  ジャンプガンガン戦争って?


114:jack

けろんぱ。うつべし。慈悲はない。

 

115:Mercuri

  >>113ジャンプ派とガンガン派の戦争。三週間くらい前かな。尚突如割り込んできたコロコロ派に負けた模様。


116:NERO

  結局さ、適当に争いたいだけだよねきみらって。


117:orz

  一時間後に開戦予定で部屋名「第一次目玉焼き戦争」で部屋作っておくから。

TサバFFありステ月人MAXで。


118:aaaa

  >>115コロコロ派さんちーっす(^_^)


119:けろんぱ

  orzGJクラメン全員集合してくる


120:jack

  土下座よくやった。準備してくる。


121:アムロ霊

  ここまでがテンプレ


122:Mercuri

  ここからもテンプレ


  第三勢力塩のみ派つくろー(ボソッ


123:HANABI

  アルカディア&某傭兵隊長vsWild Card&戦場の悪魔vs姫様と愉快な仲間たち…


荒れるなぁ…


124:ZERO

  上位陣の暇潰しだからな。言っちゃえば


125:orz

ちなみに制限なしです。

初心者や中級でも入ってこれます(´・ω・`)


126:コーネリウス

  やめたげてよぉ!


127:ZERO

  そんなかおするなら最初からやめとけよw

制限なしとかアホだろ


128:NERO

  迷子対策のために参戦が決まりました。ちくしょう土下座野郎め

 

129:mori

  同じく。


130:HANABI

  そもそも月で人MAXって150vs150な訳で…


131:ダグラス

  しかもFFありだ。第三勢力どころか八勢力位いくんじゃねえか?


132:ZERO

  >>131まずお前んところの隊長を止めろよ…


133:ダグラス

  残念ながら俺もソース派だ。間違ってない。隊長は間違ってない

むしろ姫だろ。止めるなら


134:NERO

  あいつら単体で強いから洒落にならないっての。特にバカップルの彼女の方



※※※


 「えっ、この面子に混じりにいくわけ?」


 スレを読み終えて思う。

  なんだこれ

 レスしてるのの大半が佐官以上なうえに、このゲームにて上位プレイヤーとして認められた証の二つ名を持っている奴らばかりだ。


  「制限無しってことは俺らでもいけるだろ。

  それに俺らみたいなクランに入ってない奴らはこういうタイミングを逃すと強い奴らとまとまって戦うチャンスなんてねえぞ。」


 ランディの言う通りだ。野良バトルでも強い人は居る。でも強い人達ばかりと言うのは中々ない。あってもクラン戦であろう。

  俺もランディもクランには所属しない一匹狼だ。誘ってくれるところはあったが結局断ってしまった。


 「確かにチャンスなのはわかる。けどなぁ…」


  「なんだよ?なんかあんのか?」


  「姫居るじゃん、てことはチンゲン菜来るだろ?後、狼。」


 ―姫。先程の掲示板にもいたMercuriの通称であり、異名。

 アバターがとてつもない美貌をもっているというのもあるが、指揮能力の高さ、立ち回りのうまさ、本人の技量、そのすべてが高水準であるがためにMWO初期から名を馳せているプレイヤーである。


  「…そーいや、お前野菜軍団の勧誘断ってんだっけ?んで目の敵にされてると。」


  「あいつら近接クラン上位の癖になんだよクラメン全員野菜の名前のニックネームつけるって。アホかよ。」


  銀髪の見た目は大人しいお嬢様のような暴走娘(チンゲン菜)を思い浮かべる。


 会うたびに襲ってくるが、未だに勝てたためしがない。


  「FFフレンドリーファイアーありだと敵だろうと味方だろうとやられそうで恐いんだよ。」


 「まぁ、とりあえず行ってみようぜ。後10分で開戦だ。」


 ランディがこちらを見ずに歩き出す。

  まぁ仕方ない、確かにこんな機会は滅多にしかないし選り好みしてる場合じゃ…


  「そうそう。俺醤油派だから」


  「はぁ!?何をどーすればそうなんの?ソース一択だろ!」


 まず、目の前のこいつからぶちのめすべきかもしれない。




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