Turn-3 加護(チート)と容姿決定(イケメン量産機)
side:Yoshito Amagasa
全員から設定完了の申告を受けると、それを聞いていたかの様に画面が次のステップへと進む。
今度は向こうの世界で“加護”と呼ばれるチート能力を決定するらしい。
一覧としてはこうだ。
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<神鉄の肉体>
HPの最大値が永久的に+10%、HPが満タンかつ消費していない間は1時間につきHPが最大値を越えて+5%(最大50%)増加する。
<黄金の魂>
MPの最大値が永久的に+10%、MPが満タンかつ消費していない間は1時間につきMPが最大値を越えて+5%(最大50%)増加する。
<限界突破>
10分の間自分の全てのステータスを10倍に増加するが、効果時間が切れると同時に90分間全てのステータスは1/2に減少する。
<鋼壁守護>
30分の間DEFを10倍に増加させる。
<時間停止>
体感時間で10秒だけ自分以外の時を完全に止める。
停止した時の中では自分の全てのステータスがLv/0.2%に減少する。
<技能模倣>
受けた技を一度に限り100%の状態で模倣する事が出来る。
但し剣筋の変更、タイミングのずらしは可能。
<魔術解放>
5分の間MDFを2倍、全ての魔術成功率とMATを5倍に増加させる。
<運命選択>
1ヶ月に1度だけ、選択を迫られた際にそれぞれの結末を覗く事が出来る。
但し回数は累積されず必ずしもそれが現実になるとは限らない。
<孤軍奮闘>
パーティを組んでいない間は自分の基本ステータス全てを5倍に増加させる。
<不屈勇姿>
HPが10%以下の際に全てのステータスを2倍に増加させて、更に止めの一撃をHP1の状態で防ぐ。
<完全反射>
自身のDEFを1/2にする代わりにAGIとHITの合計値が自身より低い相手の攻撃を全て打ち落とす事が出来る。
<全視双眸>
自分のLv以下ならありとあらゆる人物・物質を視認するだけでそれらの詳細な情報を得る事が出来る。
<瞬間記憶>
一度吟味した情報を忘れない。
但し強い衝撃を受けると5%の確率で記憶をランダムに忘れてしまう。
<呪怨封殺>
自身のMDFを0にする代わりに自身のLv未満の相手からのあらゆる魔術を無効化する。
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大きく分けて能力増強、特殊技能、条件強化といったところか?
全員に選択できる内容を聞いてみても違う物は存在しない。この中からしか選べないのは確実みたいだな。
「よし、皆。ここは全員の意見と能力で決めようじゃないか」
ここは平等に、と俺達は話し合いを始めた………
………
……
…
かなり長い時間(軽く4~5時間は平気で使った気がする。俺の時間感覚がおかしくなったのか?)を使って何とか全員が納得できる形で収まりがついた。
俺(天笠 慶人)…<運命選択>
古岳 与那…<時間停止>
二階堂 真哉…<不屈勇姿>
市原 宵…<現界突破>
田原 敬征…<全視双眸>
久保山 柚樹…<魔術開放>
三好 弘也…<瞬間記憶>
俺的には<時間停止>が欲しかったのだが、田原から「それを主人公が使っちゃったらまさにチートッスのでやめて下さい!」と言われてしまい渋々与那に譲り渡した。
というか三好、<瞬間記憶>なんて何に使うんだよ………
ま、パーティ的に言えば俺と真哉と宵で前衛、田原と三好で中衛、与那と久保山で後衛といった感じかな。
選択を決定した瞬間に再び画面は次のステップへ。
“容姿決定”
「「ヒャッハー!イケメン量産機だぜ~ッ!」」
画面が変わると同時に市原と田原が同時に奇声を発する。何か雰囲気が似てきたなあの二人。
しかし、今度は自分の見た目を変えるのか?
Sk○rimやFal○outとかの洋ゲーみたいにパーツごとにエディットするタイプだ、これなら俺でも出来る。
だが注意欄に書かれている文章が、これを使ってしまうのを躊躇わせる。
“<注意>
エディットで容姿を変更すると様々な不幸に襲われる可能性が発生します!
変更の際は以下の事柄に対して覚悟の上、お臨み下さい。
・普通の人生を送れない可能性(90%)
・巻き込まれ体質になる可能性(75%)
・性別が変更される可能性(25%)
・最低限以下の結果を出してしまう可能性(20%)
・性格が歪む可能性(10%)
ランダム決定ではこの影響を受けません”
確率高過ぎだろ………
普通の人生が送れない可能性(90%)はまだ分かるが、巻き込まれ体質になる可能性(75%)って何だよ。
性格が歪む可能性(10%)も怖いが、特に性別が変更される可能性(25%)は怖い。万が一(それどころか四分の一の確率で)俺が女にでもなったら与那と色々出来なくなるだろ!主に性的なアレが!
………ん、<ランダム決定>?
なになに………
“貴方の容姿を、
10%の確率で超改善
50%の確率で改善
20%の確率で改悪
20%の確率で超改悪
します。
結果が出た後には、3回まで変更可能です。
(3回目の結果表示と同時にその容姿で決定されます)”
いい結果は60%、更に3回までコンティニュー可能か。これなら………
<1回目:超改悪>
突き出た額に荒れまくった肌、ボサボサの髪に細い両目、絵に描いた様な不細工面。
………おえっ。誰だこの不細工、というかそもそも人間なのかコレ?
気分が悪くなってきたし、次に行ってみようか………
<2回目:改善>
今度の結果は先程に比べればマトモだった。
犬………いや、狼の特徴を持った獣人だが。
そりゃ異世界なら狼人間もいるかもしれない。顔は若干西洋系に近付き、野性味の溢れた“十年すればいい男になる”って感じのイケてる面構えだ。
どうするか………これでも良いとは思うが、俺としてはもっと上を目指したい………
「あれ、ワーウルフ?ライカンスロープ?何か格好いい姿ッスね♪」
聞き慣れない、高い声に振り向くと、そこには兎の耳を生やした学ラン姿の女がいた。
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「にゃにぃいい~ッ!お前、田原なのか!?」
「ピンポンピンポーン、大当たり♪別に景品は出ないッス けどね!」
驚いた。
まさかコイツ、手動エディット使いやがったか………!
「………で、何で女みたいな見た目なんだよ?というかモロ完全に女だろコレ」
「失礼ッスね!これでも男ッスよ!」
後ろを向きながら田原がスラックスのポケット越しに股間をまさぐる。………見た目は女みたいだが中身はあのオタク田原だ!惑わされるんじゃあないッ!
「ほら、ちゃんと竿も、タマも………」
言いかけた所で急所を触る動きが急に止まる。
続いて身体を小刻みに震わせながらこちらに振り返り一言。
「タマが、消えたッス………」
-----Keito Amagasa→Takamasa Tabara-----
「まあ、田原。アッチが出来なくなっても、いい人生を送ってる人はいるから………」
「“普通の人生が送れない”、“性別が変更される”、“巻き込まれ体質になる”判定が<Critical!>になってたンスよ!完全に終わってるじゃないッスか!」
<Critical!>って何スか、TRPGリプレイ動画ッスか?
そんな事を悩んでいる内に二階堂先輩が近付き、耳元でぼそりと呟く。
「たたせられるのなら、まだ希望はある」
………
……
…
………ハアッ!?
言葉の意味を理解すると同時に、僕の顔が紅潮していくのを無理矢理意識させられてしまう。
「………し、」
「し?」
「死ねぇぇぇぇェェェッ!!」
「ふんぐるいっ!?」
気が付いた時には、既に僕の以前より小さくなった左拳が二階堂先輩の顔面に直撃した後だった。
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二階堂先輩のセクハラについては一旦置いといて、自分の身体は竿に加えて胸は少し膨らみ、穴が一つ増えた。つまりは雌雄同体ッスね。
よくよく確認してみれば“性別が逆転する”ではなく“性別が変更される”と書かれているので雌雄同体でも別に問題ではないッス――いや、性別が変わっている時点で十分に問題ッスよ大問題。
生憎。僕には男とヤる趣味も無いッスし、この身体に対する興味も半分は女になったからかあまり無くなったッス。
「………なあ、もうそろそろ服を着てもらってもいいか?こちとらもう眼に限界が来てる」
ハッ。
あまりに衝撃的な出来事でつい半裸になって調べてしまってたッス!!
気付けば背後は死屍累々。
「こらっ見ないの!(ブスリ)」
「ギャアアアア」
「ギャアアアア」
恐らく古岳先輩の目潰しを食らっただろう、悶絶している天笠先輩と市原。すみませんッス。
「だ、ダメですよまだ見ちゃ!!」
「………くっ、見えん………!」
久保山の小さな掌で目隠しされながらもこちらを見ようとする二階堂先輩。アンタはちっと自重しろッス!
「………グッド」
鼻血を垂れ流しながらもこちらに対してサムズアップをし続ける弘也。いや、返しに困るから止めてくれッス………
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服を着終えると、男子からは欲望の籠った視線を、女子からは憤怒の籠った視線を向けられる。
まあ、自分でやった事の結果だから当然としても………結構キツいッス………
「で………あの手動エディットを使って決定したらこうなったと」
「そ、そういう訳ッスね………」
古岳先輩にこの姿になった経緯を説明する。
・手動エディットしていた
・決定した
・変身した
「つまり、カクカクシカジカって事ッス」
「ふーん、コレコレウマウマって事ね」
「Exactly」
[<洞察:4/0>+<説得:0/0>+<詐術:4/0>]
<対抗/説明:Success!>
(頭の中に爆弾が………じゃなくて、何スかこの声!?)
不思議な声と共に説得は成功した。
この事を説明すると、「本格的にゲーム染みて来たわね………<詐術>って何かアタシ騙した?」と言われた。まだ何も騙してないッスからその拳を納めてくれッス!
「あ、ヤベ」
「「「「?」」」」
天笠先輩が呟くと同時に彼の身体が光に包まれ、
「………獣耳男子?」
そこには、狼の耳を生やした銀髪青年が立っていた。