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異世界転生七人組!  作者: 狂人Q
幼少期編
11/15

Turn-10 転生生活 -ヒューラーの場合-

side:Fuller




「まあ、色々ありましてこの国に仕える事になりましたマグリットと申します。この子は我が息子ヒューラー。まだ若輩者でありますが以後よろしくお願い申します」




「あ」

「え」




生まれてから四年目の春。


俺と久保山は、まさかの再会を果たす事になった。




--------------------




場面が代わり、ここは久保山の居室。


「まさか一番最初に出会ったのがアンタなんてね………世の中はどんだけ狭いのよ」

「それは俺の台詞だ。それにしても、お前が………」


お姫様(・ ・ ・)なんてな。




なんて言おうものなら、皮肉を嫌うコイツに速攻で配下の連中を呼ばれて処刑されそうなんで伏せさせてもらうがな。


とにかく、この四年間は驚かされっぱなしだ。




--------------------




俺はパルマ聖王国の下級神官の息子として生まれた。

前世では二次元至上主義もとい無神論派だったので聖職者としての生活は中々に興味深かった。



朝早くから礼拝、掃除の手伝い、精神鍛練、筋トレのオンパレード。


うん?掃除の手伝いや精神鍛練はともかくとして、聖職者が筋トレっておかしくないか?しかも四歳で。

何処ぞのTRPGよろしく脳☆筋ヒーラーでも作り出すつもりなのか?この世界の聖職者は祈って戦うのが普通なのか?


まあよく判らんからそれは置いておく。




それに草食系両性類となった敬征(アイツ)は今頃一体どんな生活を送っているのやら、些か心配だ。

この世界に銃が普及していない時点でやる事は大体分かっている様な気もするが。


おっと、いかんいかん。

そろそろ現実に戻らせてもらおうか。




--------------------




「………ハッ!」

「大丈夫アンタ?さっきから“心此処に有らず”といった感じだったけど」


気が付くと目の前一杯広がる久保山の顔に、思わず心臓が飛び上がりそうになる。



ひとつ咳払い。



「そういえば、お前は今までどんな生活だったんだ?」


目下気になる事といえばこれ、と思い付いたので早速話題を転換させてもらう。

流石に久し振りに会った知人の前で話もせずにどうでもいい事をひたすら考えていたなどとは口が裂けても言えないからな。特にコイツの前では。



「そりゃあ、勿論ひたすら室内で学問と礼儀作法を学ばされて城下町を見ながら暇潰して一日が無為に終わるだけ。他に何かあると思う?」

「いやスマン。不躾な質問だった」

「別にいいけど、それよりそっちは?聖職者ってやっぱり室内に籠りきりな訳?」

「そうだな………」




~説明中~




「大変そうだけど自由があるじゃない、私としては羨ましい限りね」

「そうか?」

俺には毎日疲労困憊で苦しすぎると思えるのだが。

『隣の芝生は青い』ってヤツなのだろうか。いや、こういうのは『蓼食う虫も好き好き』って言うんだったか?



「兎も角、ここでは………」


前世の話は基本禁止よ。



「は?」



どういう事だ?


別にここじゃあ誰が聞いてる訳でも「忍者」………なるほど。確かにそりゃ大変だ。

身内の奴だろうと自分の秘密を握られるのは厄介だ、特に俺達みたいな異世界からの転生者なら尚更。




俺も去年に親父にそれ(転生者)である事がバレて散々説教された挙げ句、他言するなと厳命されたからな。

なんでもバレればその持ちうる能力の為に国に一生仕えさせられる事になるとかなんとか………確かに俺としては他の連中にも会いたいからそんな事にもなりたくはない。


「了解――そういえば、何で俺がお前と単独で話せる?権力者の娘といえば一応要人な訳なのだが」

かなり疑問だ。

如何に全面的に信頼していようと要人相手にこんな状況を許すか?ここの人間は。


「それは、一応人払いさせてもらってるのよ。お峰!」

「只今参上致しました」




久保山が一声上げると、部屋の入り口から十代と思しき少女が姿を表した。


その体躯と額で立派に自己主張している三本角からオーグル族とは判る。しかし、本大陸側のそれが持つ薄緑色とは違いコイツの肌は赤みがかったベージュ色だ。何なんだコイツは?



『このヤマト群島国固有の種族でオニって奴だ。他のオーグル種と比べてかなり理性的でな、国家の重鎮兼護衛として雇われる事も多いぞ』

「(………急に話し掛けるな、吃驚するだろうが)」



俺の中にいる疑似人格、M(メイル)-01だったか?が勝手に質問に答え始める。


コイツ………何度説明すれば理解できるんだ?バカか?それともアホなのか?もしかしてド低脳なのか?


『バッ………て、てめー、そりゃあ言い過ぎだ!俺だって怒るぞ!』

「(じゃあ理解しろ。人前で急に話し掛けるな。解ったか?)」

『わ、わーったよ………』




「一応人払いで暫くは誰も来ないでしょうが、彼は大丈夫なのですか?」

「大丈夫よ、同い歳の子供に何かが出来ると思う?これでも魔法だって使えるのよ?」

「………すみません。差し出がましい事を言いました」


何やら考えていた間に話が進んでいる様子で。

………それにしても亜人か、俺にも一応親父から1/4程オーグルの血が混じっているらしいが、純血のオーグル種は初めて見た。

中々に圧巻だな、全身の筋肉なんてゆったりした服装の下からでも分かるくらい引き締まっているし、袖から覗く手は華奢ながらもちょっとやそっとじゃ傷付かない様に見える。



「では私はそろそろ退出して宜しいでしょうか?これ以上は父が心配するといけないので」

「構いません、先程の異国の話は大変興味深く感じました。これからも時々で良いので聞かせてもらえますか?」

久保山がウインクする。

“これからも色々あるだろうし時々呼ぶから宜しく”という事か?




「承知しました。不肖このヒューラー、拙き話術かも知れませぬがこれからも精一杯ユズキ殿を楽しませてご覧に入れましょう」

仰々しく一礼しつつそんな事を言いながら俺は部屋を退出する。


去り際にチラリと見た二人の顔は先程の引き締めていた顔と違い、まるで鳩が豆鉄砲を食らった様な呆然としたものであった。




--------------------




「さて、これから当初の目的を済ませるのに必要な事は?もうお前とおさらばする期限も近いだろう、M-01」

『要は彼女を外の世界に連れ出して、他の五人とも合流するんだろ?そうさな………』



・久保山を外に連れ出す方法

→現時点ではどの方法でも不可能に近い。身体が成長するまでは保留とする。

・他の五人と合流する方法

冒険者組合(ベンチャラーズギルド)なる大陸全土に支部を開いている依頼請負組織があるらしいのでそこに依頼し見つけ出して貰う、が最も現実的か。

・自分が出来る事

→道具と部品さえあれば車輌関係がいけるかもしれない程度か。異世界で自動車やバイクが出来れば儲けになるな。視野の片隅程度には入れておこう。

・上記の事を成す為にしておくべき指標

→兎に角、今出来るのは肉体&精神の鍛練あるのみ。他には城下町で車輌作りの材料を探すくらいか。



「(これでもうお仕舞いだ。お前と話す事ももうないだろう)」

『寂しくなるねェ。ま、後数ヵ月は話せるから気が向いたら呼んでくれ。じゃーな』


その言葉を最後に脳内での会話は終わった。

城内で割り当てられた部屋に入り、ふと外を見ればもう既に夕焼けが血の様に真っ赤に染まっていた。

昔の日本人もこんな空を見たのだろうか、などと脳裏に過るが、今では別世界の住人だ。

そんな事を気にする辺りはまだまだ異世界人になりきれてないのだなと実感しながら、俺は布団の上で意識を闇の中へ埋没させていった。




【地名】

[パルマ聖王国]

大陸南部で帝国の支配から免れている宗教国家。上質な魔晶石の産地として知られ、様々な教会の総本山もここに多く見られる。

社会主義での統治とされているが、一部の強欲な聖職者による汚職が後を絶たない。

[ヤマト群島国]

大陸東側にある七つの小島を統べる国家。

政治は国王と武家による封建主義。帝国を中心とするヒューマン至上主義はあまり浸透しておらず亜人に対する感情も悪いものではない。

他の国と比べて比較的温厚な民族が多いが、戦になると途端に豹変するなど二面性を持つ者も多い国柄である。


【用語】

[オニ]

ヤマト群島国固有のオーグル種。

オーグル種が元来持つ膂力に加えオーグル種の欠点である精神力の低さを克服しており魔法戦を除けば無類の強さを誇る。

[魔晶石]

水晶など透明度の高い石に魔力が込められた物。

魔力を貯蔵しておく他に、紋章を刻む事で即席の魔導具になる。

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