第十三話 宴会の夜
霊夢視点
無事に紅魔異変を解決し、今日の夜の宴会のための準備をしている。
お酒に合うおつまみを大量に用意する。今回も白玉楼の連中が来るだろうからたくさん用意しないと数分で食い尽くされるだろう。
「おーい霊夢!お酒買って来たぜ!」
「あ、ありがと、魔理沙」
買い出しに手伝わせていた魔理沙が帰って来た。両手にお酒を持ってにっこにこしている。
「どうしたんだぜ?霊夢?宴会だってのにそんなに不景気な顔して」
「不景気なのはいつもよ。はぁ……。片付けは全部私がやるのよ?乱闘、おきなきゃいいけど……」
「あー、うん。善処するぜ」
善処じゃなくて禁止したいんだけどねぇ……。まぁ、年に数回しかないから頑張らないとね……。
「そういや霊夢。賽銭箱の上にこんなのが置いてあったぜ?」
「ん?手紙?」
賽銭箱の上に置いてあるならお札かと思ったけど……。
ふむふむ……今夜境内で待ってるから一人で来て欲しい、と。筆跡に見覚えがある気がするんだけど……。
それよりも名前が無い。新手の罠かも知れない。
「魔理沙?これどう思う?」
「うーん……怪しいな……」
「行くかどうするか……」
「霊夢がやられるとは思わないけど……一応私も隠れてるぜ」
それなら万が一の事があっても大丈夫だろう。
そして宴会が始まった。
場所は神社の中。普段はふすまや障子で仕切っている部屋を全部外して大部屋にしている。
いつもの宴会どうりに幽々子が大量に食べ、魔理沙達がさんざん騒ぎまくる。
今回からレミリア達、紅魔館メンバーも加わった。少し気になったのが、
「うちのフランのことなのだけれど、狂気があってね。閉じ込めていたんだけど……」
「悠がね!私の狂気を消してくれたの!」
「……そういうことなのよ。でもこの宴会に来てないって言うの。何か知らないかしら?」
悠も紅魔館に来ていたみたいだ……。さっきの手紙と合わせて何か関係があるような……。
……そろそろ時間のようね。軽く気合いを入れて行く。魔理沙に軽くジェスチャーを送って外に出る。
……今宵は満月の様だ。
境内に出る。賽銭箱の真横に誰かが立っている。
「やぁやぁ、こんにちは。霊夢さん。ちょっとだけど待ってたよ?遅いんだからもう」
「宴会があったんだから仕方ないじゃない?ちなみに素敵な賽銭箱はそこよ」
私の催促を無視して満月の光の元へと降り立つ姿。
妙な出でたちだった。里の人達が着ているような着長しと、狐のお面。何か器具を使っているのか変な声。体型を見ると女の子だろうか。少し薄いが胸がある。身長は私より少し高いぐらい。肩までの綺麗な黒髪をしている。
「お賽銭はないのね。それで何のよう?何もないのなら宴会に戻りたいんだけど」
「おいおい、霊夢さんならもう気付いてるんじゃない?これに決まってるじゃん」
と、挙げた右手の指先に弾を浮かばせた。はた目で見ただけでも結構な威力を持っている様に見える。
こっちも油断せずに御払い棒を構える。
「弾幕ごっこって訳ね。ついでになんで気付いてると思ったのかしら?」
「なんでとか言われてもねぇ……敢えて言うならそこの茂みで霧雨魔理沙さんがこっちに八桂路を向けてなければそうは思わないんだけど?」
妙な女が指差した方向をよく見ると、茂みに隠れた魔理沙が呆気なく気付かれたのに唖然としている。
この女……隙だと思ったら隙じゃなくてと思ったら隙で……と無限ループみたいな奴だ……。幾ら満月の夜とはいえ、私でも目を凝らさなきゃ見えないくらい隠れて魔理沙を簡単に見つけるなんて相当出来る。
「どうすんの?二人掛かりでもいいけど?」
「いえ……あんたなんか私一人で充分だわ」
「あっそ。なら一人ずつね」
そういい構える女。
あんまり博麗の巫女を舐めないで欲しいわね。