第十二話 後片付け
「へっ!?キャ、キャアアアア!!」
なんか叫び声と一緒にゲシッと蹴られた。
起き上がり辺りを見回す。空を覆っていた深く紅い霧は消え去っていて、吸い込まれるような青空が広がっている。そっか……霊夢さん……やってくれたんだね……。
自分の体を見回す。お気に入りのパーカーには無数の傷が付いていて、関節の節々が悲鳴を上げている。霊夢さんをバカにされてキレた所から記憶に無いが……勝ったのだろうか?
そして顔を上げるとチャイナ服の人が布団を引き寄せて涙目でこっちを見ている。どうする?
◆目を逸らす
「いや!目を逸らさないで下さいよ!どういうことですか!?異変は!?」
「あー、うん。終わったみたいだね?」
「そんな!寝ているだけで終わるなんて!」
恐らく私のせいで寝ていた……というか気絶していたって言ったら怒るだろうなぁ……。
「あぁ、うんじゃあ私はこれで……」
「あ、はい。分かりました」
ダッと走り出す。後ろであれ?何かおかしいとか聞こえたからより速度を上げて走り出す。目標は博麗神社。いい加減に戻らないと。
……自分が幻想郷の中で一番強くなったなど自惚れては居ない。上には上がいる。この世界で一番よく学んだ事だ。
だけど……目の前に狼。足払いで前足を掬い上げ、怯んだところに威力重視の弾を持った右手でアッパーカットを叩き込む。
狼はキャウンと鳴いて消滅した。
だけど……この程度は出来る。
満足などはまだまだ出来ない。強くなりたいという思いは日に日に強くなるばかりだ。でも…… 強さだけを求めた先には破滅がある。今はこれで涙を飲もう。
博麗神社は私がいた頃とは何も変わっていないように見えて、何かが変わっているような気がする。
とりあえずは今日の夜。二人きりで会いたいという意味を込めた手紙を賽銭箱の上に置いておく。
霊夢さんなら来てくれるだろう。