プロローグ 出会いと出逢い
廻る、廻る。世界の歯車が廻る。ヒトの意識や考えを無視し、打ち砕き、踏み倒しながら廻る。そこにニンゲンの入る余地などは無い。ニンゲンはただ、振り回されるのみ。それをヒトは運命と呼び、受け入れる。それがおかしいと思わないのもまた、ニンゲンである。あるニンゲンは、成功し、あるニンゲンは、失敗する。失敗したニンゲンは、成功したニンゲンを妬みはするが、最後は諦める。
私、木下悠も、そんなニンゲンの中の一人……だった。
下らないテストの結果うんぬんで一喜一憂し、他人を見ていいなぁ……と羨んだり、逆に他のヒトの上に立ちその優越感を味わったりする…………ただのニンゲンだった。
だが人生の歯車は突然狂いだす。止めようと思っても止められない。その時、私は……私達家族は、家族旅行の帰りだった。お父さんの運転する車に乗って、妹の雪はスースー眠ってて、お母さんと一緒にその寝顔を見て、クスクス笑っていた。
そして家の直前の曲がり角を曲がったら、突然、トラックが突撃してきた。後で聞いた話だと、飲酒運転だったらしい。もちろんそんなのを急に避けられるはずもなく、私達家族が乗った車は軽く吹っ飛ばされ、そこで私は意識を失った。
目覚めたらそこは病院の一室だった。横には点滴が置いてあり、周りには……誰も居なかった。
その後、ふらつく体を操り、近くに居た医師に話を聞くと、私の体には異常は無いこと、かれこれ3日も寝ていたこと。そして……お父さんとお母さんと、雪があの忌々しい交通事故で死んでしまったことを告げられた。
もはや私に普通の生活を送る事は無理だと思う。今は親の預金と、自分のバイト代で、なんとか学校に行っている。
昔は沢山居た友達ももうすでに一人も居なくなった。交通事故の後の私の態度硬化が悪かったのだろう。友達の呼び掛けも無視し、反応してもボソボソとしか喋れなかった。家に帰ると、また親戚からの電話。お父さん達の遺産を奪い取ろうという魂胆だ。
こんな腐った世界には居たくない。そう思って居たからだろうか?
「あれ?貴女誰?こんなところで何をしてるの?」
だからなのだろうか?紅白の巫女服を着た美少女が倒れている私の目の前に居るのは。
……本当に私の人生の歯車は……よく狂う。