ある、雪が降る夜に
―――消えちゃえばいい、こんな世界。
私はそうつぶやくと、手に持った小さな小瓶を口に押し付ける。そして、一気に飲み干した。
突然、目の前にあるものが揺れ始める。体がふわふわと浮いているような感覚がする。
「初雪ー」
誰かが私を呼んでいる。でも―――
―――もう、遅いよ。
私は深い深い雪の中に沈んでいった。
ぴっ ぴっ ぴっ ぴっ
規則正しく聞こえる電子音の中で、私は目覚めた。
―――また、失敗か…
ココロの表面ではそう思った。でも、こころの奥の奥では死ねなくて安堵している自分がいる。
なんか、さっきから腕に風がかかる。なんだろう。
体が重くて動かない。
目だけを動かして横を見ると、男の子がベッドに突っ伏して寝息をたてている。
―――なんであんたがココにいるの…!?
見覚えがある。確かこの人は………
私はある事に気がついてフリーズした。
「この人…誰…?私は…誰?」
私がそうつぶやくと私の横で眠っている男の子に私の声が聞こえたのか、いきなり起き上がった。
「初雪……」
私の目が開いていることを確認した男の子はつぶやいて私を抱きしめた。
「よかった…ほんとによかった。死んじまうんじゃないかと思った。」
男の子の目から涙が溢れる。
この男の子は私を知っている。証拠に、私のことを初雪と呼んだ。
「ねえ、」
私が呼びかけると男の子は私から離れてベッドの横にあるイスに腰掛けた。
「私の事について、教えて欲しいの。」