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【修正作業中】the magician's reunion  作者: 冴木遥
第一章 魔術師たちのはじまりの焔
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第四話 3馬鹿トリオ

学園に入学して数日が過ぎた。

なんつぅか・・・広すぎだから!!覚えらんないよ!!新入生はどこにどの教室があるのか覚えるのに必死だ。まだ、授業では座学しかないため、移動教室はないがそれも最初のうちだけだ。実際にやってみなくては何事も身につかない。そのためこれからは毎時間が移動教室になる。

まだ入学したばかりだからか緊張も重なってそわそわと落ち着きがない。ん?私?教室を覚えるのに必死だと言っておきながら落ち着いてるって?・・・ふふふ・・・もう私のキャパシティーはいっぱいですよ。もう入りません。移動教室は流れで何とかします。

そんなことよりもっと気にすべきことが残っている!!それは学校生活の中で一番大事なことだ。それは・・・友人を作ること!実は未だに絢子以外同学年の友人ができていなかったりする。寮での事件が関係しているのか、入学式の事件が関係しているのか、誰も話しかけて来ようとしない。また話しかけようとすると目をそらされたり、走って逃げられたり・・・散々だ。

そんなこともあったため、クラスの人と名前も全くわからない。というより、担任が自己紹介を後回しにしたことが第一要因としてあがると思う。なんで一日目に行わなかった、教師よ。なんで週終わりのまとめの時間で執り行おうなんてバカなことを言い出したんだ、あのアホ教師。しかも、今その時間なんですがなんで遅刻するんですかね!?

窓際の席だったこともあり、今週あった出来事を思い出し、突っ込みを入れつつ現実逃避に走ろうとしていた。なぜならクラスのリーダーである学級委員が決まっていないこともあり、教室内は無法地帯と化しているからだ。お互いに顔も知らない、名前もわからない、でもテンションだけは高い人々が集まるとどうなるでしょう。はい、その通り。ムードメーカー的な人を筆頭に男子は野球的な何かを始めてしまいました。


「よおし!!行くよ!!予告ホームランだぁ!!」


放棄をバットに見立てて高らかに振りあげ宣言するバカ1。

なかなか女の子たちとの距離が縮まらない私とは正反対でなんだか悲しくなってくる。あ、これは目から汗が出てきただけです、けして涙なんてものじゃないんです。


「ふふふ、俺の魔球が打てるかな。」


そしてどこから持ってきたのか、硬球の野球ボールを何故か構えるバカ2。あ、後ろの方で山田君(仮名)が友達に慰められながら泣いている。


「来い、陽介!しっかりと受け止めて見せるぜ!!」


こいつもどこから持ってきたのか謎なキャッチャー専用ミットを持っているバカ3。・・山田君(仮名)の鳴き声がさらに増したような気がし・・なんでもない。


「行けぇ!!消える魔球!!」

「来おぉい!!」


何故か技名を言いながら投げる。それを打つ。


キーーーン


箒のくせに意外といい音をさせて硬球の野球ボールが飛ぶ。


「い”!!」


ガン・・・


予告ホームランといった割にファールとなったボールは真直ぐに私の頭へとクリーンヒットした。見事に星が目の前を飛び、平衡感覚がおかしくなり、ふらふらと机に体を預けた。


「だ、大丈夫ですか!?」


幸か不幸か、一部始終を見ていた女子生徒たちがわらわらと私の周りへと集まってきた。というか、同じ学年でクラスメイトなのに敬語なんですね・・


「ちょっと、そこの男子!!やるにもちゃんと考えてよ!!」

「そうよ、特にそこの3バカ!!」


まだ頭がふらふらしているので誰が言っているのか分からないが、声を張り上げて野球を始めた男子たちを非難し始めた。特に中心で暴れていた目立つ3人組へと視線が集中する。


「悪かったよ。まさか蛍太がそんなに打てるとは思わなかったから・・」

「ええ!!ちょっと!全部僕の責任だって言うの!?押し付ける気!?」


中心で暴れていたのだから押し付けられるわけではないと思うが。


「でも、俺もお前があそこまで力強く打てるとは思わなかった。去年から成長してるぞ、蛍太。」

「ほ本当!?陽介!」

「それは俺も思ったぜ!特訓の成果だな!!」

「た、匠・・・!」


勝手に盛り上がりはじめた。

周りのみんなも反省の色が全く見えないためか呆れた顔をしてるよ。

まあ、そんなこと今の私には関係ない。やることは1つだ。


ガタッ


「え、あ・・ちょっと!」


近くに子が急に立ち上がった私に驚き、制止しようとしたがそれを無視して教室の前へと進む。途中、私にぶつかっただろう硬球の野球ボールを拾い上げ前へと進む。


「む、なんだ、お前。」


バカ2が近くに寄ってきた私に気がついたらしく、不愉快そうに話しかけてきた。そこで歩みを止めた。距離はおよそ3m。私は無言で振りかぶる。


「「「え」」」


ひゅっ・・ゴスン!・・ぱら、ぱら。


私が放ったボールは、3人の目の前を通り後ろの黒板へとめり込んだ。


「「「・・・」」」


呆然と黒板にめり込んだボールをみている3人にゆっくりと近づき、


ガン!ゴン!ゲイン!


「「「・・いってぇ!!」」」


グーで頭を殴った。3人は殴られた頭を抱え込みしゃがみこんだ。


「痛いのは当たり前だろう。思いっきり殴ったからな。」

「なんで!」


バカ1が涙目で反論する。


「反省の色が見えない。」

「それだけか!」


バカ3がこちらも涙目で顔を上げる。


「いや。」

「それは何だ!?」


バカ2が顔を上げる。一番情けない顔をしている・・


「やられたらやり返す。常識だろう。」

「「「常識じゃねぇーーー!」」」


胸を張って言い切りましたよ?もちろん。


「それは冗談にしても、言うことがあるだろう、言うことが。」

「悪かったよ!悪かったと思ってるけど、思うけど・・ホントに痛てぇ!!」


3人はずっと頭を押さえている。反省はしているらしいが、異常に痛かったらしく、頭を押さえて悶え始めた。


「・・そんな強く殴ったかな・・?」

「「「殴った!(から!)(よ!)」」」


さっきからそんなにハモらなくても。これに懲りて教室でもう暴れださないといいなあ。






*****






「すいません。ちょっと資料作成に手間取って遅刻してしまいました。」


やっと担任がやってきて教室にも秩序が戻った。


「みなさん静かに待っていましたね、と言いたかったのですが、この惨状ではそうも言えそうにないですね。」


まあ、確かに担任が来たときは静かだったが、黒板に開いた穴はそのままだ。山田君(仮名)机にうずくまらず顔を上げてくれ。


「でも、すごかったですね。」


ん?


「初めてにしてあの3人を押さえつけられるなんて。ねぇ、藤城さん」


和やかな声音で私に話しかけて来やがった。もちろんクラスの目は私に集まる。


「・・いつから見てたんですか?」

「え?初めから♡」

「止めに入ってくださいよ!!」

「え~~、だってなんか・・・おもしろそうだったから♡」


(なんだこのダメ教師。語尾にハートとか今時はやんねえよ!その前に、男なんだからマジヤメレ。)


体をくねらせ“きゃは”という効果音までが聞こえてきそうだ。いや、初め見た時からおかしな人だとは思っていたが、ここまでとは思わなかった。


「そういうわけで、クラス委員長は藤城さんにしたいと思いまぁす。」


(どうしてそこに話が飛躍した!)


そしてクラスメイト達、流で拍手とかし出さないで!みんな賛成なんですか?反対なのは私1人だけ?


ガタガタガタッ


「「「異議あり!」」」

「きゃっっっっかあぁぁ!!!」


当たり前だと思うが、3人のバカが立ち上がって否定した。しかし、どこからそんな男気出したと思わせる勢いと声音で、担任が3人に反論を引き下げさせた。


「何でですかぁ。」

「君たちに発言権はありません。」

「「「そ、そんなぁ~。」」」


がっくりと椅子に座り込む。教師がそんなこと言っていいんですか?てかお前らそこで引き下がるのか。


「他に反対の人もいないみたいだし、これからよろしくね、藤城さん。」

「う」


ポンと肩に置かれた手に力が微妙に加わっているのは気のせいか?まるで逃がさないとでも言うかのようにギリギリといった音が聞こえてくるのだが・・・


「ね」

「はい・・。」


クラスから何故か巻き起こる歓声が、遥か遠くに聞こえたような気がした。


「ふふ。助かるわぁ。僕のクラスにあの3人が来ちゃうなんて、思ってもみなかったから。君みたいな子がいてくれて本当に助かるよ。」


現実逃避しようとした、が、担任のその言葉で現世に戻ってきた。背中を思いっきり叩きながら嬉しそうに話すその顔を仰ぎみる。


「・・・どういう意味ですか?」

「ん?ああ、藤城さんはもしかして今年からこの学園に入ったのかな?」

「そんなに分かりやすいですか?」


なんだか前も似たようなことがあった気がする。ここは内外かまわずふるいに掛けられるはずじゃないのか?


「違う違う。あの3人は名物の一つだから。接していくうちに分かるわよ。」

「はあ。」


“名物”ってどういう意味だ?なんだか嫌な予感しかしない。


パンパンパンッ


クラスのみんなの集中が切れたのが分かったのか、隣にいた担任は手を叩いて注目させる。


「それでは、後回しにしてた自己紹介の時間よ。見本として、藤城裕也さん。前へ出て頂戴。」


クラス委員ってそんなことのために使うのか?いきなり前に立たされるとは思わなかった。目立ちたくないのに、目立つ方に順調に進んで言っているような気がするのは気のせいか?






*****






私のあいさつを基本として、出席番号順に自己紹介が始まった。大体は普通に挨拶していったが、最後の3人だけはおかしかった。


「はいは~い!次は俺ね!!『鈴木(すずき)(たくみ)』。匠ってフレンドリーに呼んでくれ!よろしくな!!」


無駄に高いテンションと声音でハキハキと言い切る。性格が表れているかのような髪色をしている。というより目がチカチカする。


「幼等部からいるから顔見知りも多いみたいだけど、今日から高校生になったということで、心機一転!また仲好くしてくれ!!」


(よくこんなバカが心機一転なんて言葉知ってたなぁ。)


「ちなみに、仲好くしてくれる人は殴っても優しくしくれる人がいいです。」

「お前の言いたいことはよくわかった。よし、とりあえず歯ぁくいしばれぇ・・!」


席は離れているのに、視線で喧嘩を売ってきたと捉えることができたので、その喧嘩を買ってやろうと一歩踏み出す。


「はいはい、あともう少しだから授業終わってからにしてね。」


委員長だからという理由と、前に出たまま戻るタイミングを逸してしまったということのため、担任の隣に立たされたままだった私を、担任は引き留める。

思わず売ってしまった喧嘩を買われそうになったバカ3改め匠は顔を青くして“助かった”と小さく呟き椅子に座り込んでいた。


「次の人ぉ~、止まらないで続けてねぇ~。」

「あ!はいはい!!次僕ね!!」


わざわざ手をピンとあげて、ぴょこぴょこジャンプしながら自己主張する。高校生になってまでなんてあざとい行為を・・・てかあいつは本当に高校生か?どう見ても見た目は中学・・・・・


「朝倉蛍太です!さっき場外ホームラン打ってたよ!!明るく元気に、クラス一丸となってがんばって行こう!!」

「「おぉ~!」」


前後2名のみバカ1改め蛍太とともに拳をあげる。てか、どこの小学校だ!!どんな自己紹介の仕方なんだよ!声に出してツッコミを入れたい、入れたいが、隣で呑気にしているこの担任に諭されるなんて周りが許しても私のプライドが許せん。つーか場外ホームランじゃなく“場外ファーボール”だろうが。


「最後は俺だな。俺は『武藤(むとう)(よう)(すけ)』だ。まあ、言わずと知れたマッドサイエンティストだ。なぜ人々が俺をその名で呼び始めたのか・・それは思い起こせば5年前にさか・・」

「それぐらいでいいからねぇ。自己紹介だけに1時間も掛けてられないんだから。」


興味が惹かれなさそうな昔話が展開されるところだったが、担任によってその陰謀は阻止された。悔しそうに椅子に腰を下ろすのが目の端にちらっと映ったが、気にしないこととする。


「はい。それでは以上で自己紹介全員終了ね。みなさん仲好くしてくださいね。さあ、では続いて委員会を決めてもらいたいと思います。藤城さん後よろしくね。」


え、と思っている間に委員会表を手渡され、担任は自分の仕事は終わったとでも言うかのように、教室から出て行こうとする。


「え、な、先生!どこに行くんですか!」

「え?教員室に戻るわよ。さっきも言ったじゃない。資料作成、まだ終わってないから続きを行いにね。じゃね。」


ひらりと去って行ってしまった。

いや、よろしくって本当の意味でよろしくだったんですか!?まだ、私の委員長しか決まってないっていうのに、一人で何とかしろと!?しかも全員の名前、今日初めて聞いたのに、私にどうしろというの?

そんなことをグルグル思いながら、とりあえず手渡された委員会表を眺める。なんだか見ただけでは意味のわからない(分かりたくない)ものがぽろぽろ見受けられるみたいだが、とりあえず無視だ。

一人でクラスを仕切るのは無理がある。だったら・・・


「先生が教員室にお戻りになってしまったので、まず、副委員長と書記を決めたいと思います。」


現在仕切るにしても私一人しかいないので、司会進行しつつ黒板にも文字を書き始める。


カツカツカツ・・・


「「「ちょ、ちょっと待ったああぁぁぁ~~!!」」」

「黙れ」

「さすがに聞いてあげようよ。」


急に聞こえてきた担任の声に、教室の扉の方へと顔を向ける。


「どうしたんですか?」

「ちょっと忘れ物をね?問題起こさずにちゃんと決めてね。」


それだけ言うと忘れものと思われる黒い革の鞄を持って出て行った。


「はぁ、仕方がないので君たちに発言権をくれてやろう。」

「何その言いぐさ・・・」


三人は脱力しつつ立ち上がる。


「どうして俺たちが書記とかにもう既に決定してるんだよ!」

「「そうだそうだ!」」

「それに役職は“副委員長と書記”なのにどうして連名で三人の名前があるのさ!!」


腕やら足やらを振り回しながら、強制的に進めようとしたことに異議を申し立てているらしい。


「そんなの、お前らを目の届かないところにやるなんて末恐ろしいから。クラスの評判を下げないためにも、お前らの面倒を直接見てやろうと思っただけ。連名なのは、お前らで誰がどれをやるか決めてもらおうと思ったから。委員会なんて全員分あるわけじゃないんだから、クラス委員として一人くらい多くても構わないだろうし。」

「そ、そんな横暴な。」

「許可します。」

「「「せ、先生!!」」」

「通りすがっただけだから、じゃ今度こそばぁい♡」


私の横暴を許可してまた去って行った。意外と何度も戻ってくるところをみると心配してたりする?でも、やっぱりハートは気持ち悪い。

でも、今はそんなことはどうでもいいので、進行させることに集中する。


「さて、では許可も下りたので、とりあえず3人とも前へ来て、手伝ってください。」


3人は落ち込みながら前へと出てくる。クラスのみんなは、なんだか同情のこもった様子で拍手をする。同情するけど、代わりにやるって人は出ないんですね。


いつになったら再会するん・・・

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