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【修正作業中】the magician's reunion  作者: 冴木遥
第一章 魔術師たちのはじまりの焔
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第三話 斎名家

絢子がいうことを聞かないのでGLBL表記をはずさせていただきました。


入学式後のホームルーム終了後、寮に戻ってきたわけだが、もちろん女の子たちに囲まれたのはおそらく想像に難くないだろう。絢子には見捨てられ、制服をもみくちゃにされつつなんとか寮までたどり着くことができた。


「そんな所につったって何してんだ?」

「寮長。」


寮の前にいたら後ろから寮長が帰ってきた。


「また問題でも起こしたのか?」

「な、なんでそんなこと言うんですか?」

「いや、誰だって思うだろ、そんなでこに湿布貼ってりゃ。」


ぐうの音も出ない。朝に問題起こすなと釘を刺されたばかりだったというのに。


「ちょっと・・・頭突きをかましまして・・・」

「そう。初日からお前も馬鹿だよなぁ。」


頭をポンポンなでて鼻歌を歌いながら先に寮へと入って行った。

実はめちゃくちゃ怒られるんじゃないかとヒヤヒヤしていたんだが、そんなに問題なさそうで思わず呆気にとられてしまった。


(というより、寮長に実害を与えなければそれでいい感じか?)


いつも以上に機嫌のいい寮長は見ていて逆に寒気がした。






*****






「あら、お早い御戻りね。」


ぐったりして戻ってきた私に、悠々と部屋のベットでくつろいでいる絢子から発せられた第一声がこれだ。


「もっと時間がかかると思ってたわ。」

「見捨てやがって、ひどいじゃないか絢子!」


一人で勝手に帰って行ってしまった絢子に思わず愚痴る。


「女の子、怖かったんだぞ!いつから女の子はあんなに積極的になったんだ!」

「意味分からないことを帰ってきてそうそう叫ばないでくれる。気分が悪いわ。」

「だって!脱がされるかと!」

「普通でしょ。」

「!!」


衝撃的なセリフを聞いたせいで二の句が継げなくなってしまった。愕然と絢子を見やる。


「何?よくあることでしょう?」


(いやいやいやいや!!よくはないよ!?てか、たまにもないよ!!)


この学園の裏をまたしても見てしまったような気がする。


(ほんとにこの学園って常軌を逸している感が絶えません。)


「あ、そうだ。」

「アホみたいな声出さないで。」


(私は・・負けない!)


うん。自分自身でもさすがにキモイと思いました。うん。ぶりっ子系は似合いませんなぁ。


「・・午前中にさ、喧嘩仲裁したじゃない?」

「ああ、あなたが出しゃばったやつね。」


私の話を雑誌を見ながら聞き流す。そんな絢子の様子を見て、諦めを感じつつ部屋着に着替える。


「その時なんか、家同士の争いごとみたいな内容だったんだけど、どういう意味なのかなあれ。」


野次馬たちがどこかの家名を挙げていたこともあるが、喧嘩していた本人たちがめちゃくちゃ叫んだいたような気がする。そのため、これから学園でどう対処すべきか考えるためふと疑問を問いかけてみたのだ。

絢子の反応は顕著だった。

雑誌をめくっていた手がぴたりと止まり、まるで信じられないものを見つけたかのように私を見た。短い前髪によって、眉が中央に寄せられているのが丸わかりで、眼鏡の奥からみられるバカにしたような視線が私を捕える。


「な、何か?」


ちなみに現在着替えているため半裸状態だ。さすがにちょっと恥ずかしい。


「どうしてあなたみたいな人が私より頭がいいのかしらね。というよりよくここが受かったものね。」

「ええと、絢子さん?」


なんだか物凄く怒らせたらしい。

雑誌に顔を戻してぶつぶつと私に対しての文句を吐きながらページを乱暴に捲っていく。


「これを見なさい!」


見つけ出したらしい雑誌の見開きのページを顔の目の前で開かれる。


「“これぞ(いつ)名家(めいか)若(次期)当主たちだ!”??」

「そうよ。」


絢子から受け取った雑誌にはアイドル顔負け必死な美男美女の写真と彼らの将来を期待した記事が載っていた。ただし記事の内容に彼らについて語ってはいるが、インタビューしたわけではないらしい。


「これがどうかしたのか?」

「いいから黙って読みなさい。」


絢子の目は本気でした。


記事の内容はこうだ。

つまり彼らは、国内でもトップクラスの魔術師の気質がある、代々続く由緒正しき血統で、その次代を任される若い(次期)当主たちである。

誰もが注目する佐倉家次期当主佐倉葵。独特な魔術は人を動物を草木を魅了してやまない。

妖艶さがたまらない倖村家新当主『(ゆき)(むら)千鶴(ちずる)』。水系の魔術を得意としている。

穏やかな気質の久瀬家当主『久瀬(くぜ)日和(ひより)』。風系の魔術を得意としている。

何事にも動じない菊池家当主『菊池(きくち)一眞(かずま)』。地系の魔術を得意としている。

誰よりも心やさしき朝倉家次期当主『朝倉(あさくら)(けい)()』。火系の魔術を得意としている。

写真も載ってはいるが、すべて視線がカメラから外れている。


「隠し撮りも気になるけど、2人うちの制服着てない・・?」

「当たり前じゃない。ここをどこだと思ってるのよ。」


(いやまあそうなんだけど。)


読み終わった雑誌をベットに腰かけている絢子に返しつつ、向かい側の自分のベットに腰かけた。


「佐倉と朝倉は私たちと同学年ね。」

「マジで?」

「ほんっとに何も知らないのね。(いつ)名家(めいか)くらい覚えておきなさいよ。一般常識よ。」


そんなこと言われても世俗じゃ魔術の話をしても家柄の話なんかしない。魔法は使えても魔術はすべての人が使えるわけじゃない。高度なものになればなるほど世俗から離れていく。どんなに有名人であったとしても、身近に感じられなきゃ一般人なんか見向きもしないんだ。こうやって掲載されてる雑誌だって魔術師関連の雑誌だ。


「く、その(いつ)名家(めいか)が朝の喧嘩と何が関係あるんだよ。」

「あれは佐倉と朝倉の従者たちよ。」

「じゅ、従者だぁ!?」

「当たり前でしょ。名家ってことは金持ちってことなんだから。」


(分かる、分かるけど、理解したくない!!)


「その従者たちが価値観の相違か何かで小競り合いしていたんでしょう。考え方が行き違ってるから何かとぶつかるのよ。まあ実際、上の方は仲いいっていう噂だけど。」


もういいでしょ、とでも言うように私に背を向け、先ほどの雑誌をまた読み始めてしまった。

私は、雑誌を読む絢子の背を眺め、(いつ)名家(めいか)は魔術を習うものであれば誰もが知っているものであると同時に、魔術に無関係なものには規制が敷かれているものなのかと思った。






*****






部屋の時計が7つの音を響かせる。

午後7時は夕食の時間だ。食堂の準備もあるため食事の時間は大体決められている。朝は6時から8時まで、昼は学校のため行っていない。休日は1日閉まっている。そして19時から24時までが夕食の時間だ。夕食の時間が夜中まで行っているのは野外活動時に時間が延長してしまったときを考えてだ。それでも間に合わない人も結構いるらしいが。


「絢子、夕食の時間だけどどうする?」


絢子は眉を寄せて私の顔を見つめた。


(う、またおかしなことでも言ったか?)


さっきも同じようなやり取りをしていたこともあり、生傷に塩を刷り込まれそうな気がして顔をひきつらせた。


「裕也、今朝の説明、聞いてなかったの?」

「今朝?」


今日の朝といえば思いだされるのが、もう二度とあってほしくない痴漢不法侵入事件(別名:性別勘違い事件)だろうか。あの時最後の寮長の笑顔が怖すぎてあの後の記憶が曖昧だな。


「覚えてないのね。」

「・・・はい、すみません。」


そんなほんとうに馬鹿な子を見たみたいに大きな溜息つかないで下さい。


「今日は歓迎会でしょ。」

「歓迎会?」

「そう。新入生の歓迎会。」

「新入生の。」

「ええ。期待していいと思うわ。毎年すごいから。身内で騒ぐものだから怪我人も出るけどね。」


最後の言葉は余計だったような気がするが、でも新入生歓迎会!入学式にはガッカリさせられたけど、確かにあんなに見張られてる所でそんなにはっちゃけられないよな。だからその代わりに、学園のほとんどの生徒が寮に入っているからこちらでほんとの歓迎式をするってことか!


「あれ、そう言えば帰ってきたとき寮長とすれ違ったんだけど、その時機嫌よかったのって・・」

「おそらくそのせいね。料理も豪華なのいっぱい出るし。」


あ、色気より食い気なんですね。


「で、夕食とそれが何の関係が?」

「談話室で行うんだけど、準備に時間かかるから19時30分に集合って言われたのよ。」


確かに朝寮から出る直前にそんなことを説明されたような気がする。ダメージを受けすぎて覚えてないが、おそらく言われた。






*****






天井は現在美しい橙色の空が存在している。さっきまでは赤色に染まっていた。誰かの魔術によって七色の空を演出しているらしい。上手くもなく、しかし下手でもない、まるで誰かの落書きみたいな月や太陽・星と対比して、透明感もある自然界ではありえない空をより美しく見せている。

入寮歓迎会は絢子が言っていた通り談話室が会場となっていた。ヴィッフェ形式で執り行われており、話の途中で先輩たちが魔法を使って新入生を楽しませてくれる。

他にも、見たこともない生物がそこら辺をうようよしている。


「なあ、絢子。あの生き物ってもしかして・・・」

「式または使い魔じゃない?あと実体をもってないのもいるみたいね。」


絢子が指差した先には人で混雑しているにもかかわらず、走回って遊ぶ体の透けた生物もいた。初めて見る光景に目を奪われながら用意された豪華料理へと手を伸ばす。


「それにしてもすごい人の数だな。全員居るのこれ。」

「当たり前じゃない。今日を何だと思ってるの。あと、これに出なかったら夕食も食べられないんだから。」

「そうなの?」

「当たり前じゃない。ヨーコさんがどれだけ下準備に時間かけて、これだけの量を作ってると思うのよ。」


それもそうだと思いつつ周りをもう一度見渡す。

見事な魔術も圧巻だが、使用されている机やテーブルクロス・壁の絵画などにも目を奪われる。こういったものには(まじな)いが施されている場合が多い。よく見ると柄だと思っていたものが実は小さな魔法円であったり、魔力を帯びていたり、飽きることがない。


「料理もすごいけど、こういったテーブルクロスとかあと皿とか、(まじな)いがかけられてるみたいだけど、やっぱ寮生の手作りかな。」

「当たり前だろう。」

「「!!」」


第3者から急に声を掛けられて、私たち二人は声のした方へ振り返った。


「寮長じゃないですか。」

「寮長機嫌いいですね。」


どっちがどっちか、皆さんにはすぐわかりますよね。

振り返ったその先には、両手に食べ物をいっぱい載せた皿を持った寮長がいた。


「楽しんでるかお前ら。」

「はい。」

「杉沢も大変だな、こんなののお守りを任されて。」


(え、それ私のことですか。)


「ええ、ですが学園では手綱を握れないんですよ、クラスが違うので。ルームメイトとして何事も起きないことを願うばかりですね。」

「その時は私が何とかしてやるから、頑張れよ。」

「心強いお言葉ありがとうございます。」


私のことを放置して2人で私のことを乏しめながら話していく。


(というか、手綱って・・え、人とすら感知されてないんですか?)


置いてけぼりをくらいながら、とりあえず料理を食べることにする。メインと思われる料理の内の一つ牛の赤ワイン蒸しと思われるものを口へ運ぶ。


(さすがはヨーコちゃん、うまい。)


うんうと頷きながら、料理のうまさに感心する。寮長と絢子も料理を食べながら話している。寮長の手元には先ほどまで山ほどあった食べ物が既に完食されていた。


「そう言えば、今回の天井の魔術って寮長が企画されてるんですよね。」

「それがどうかしたか?」


途中から話を聞いていなかったから話の流れが分からないが、今回の歓迎会は寮長が企画しているらしい。よく考えれば当たり前のことだ。この寮の長であるんだから、何をするのも寮長の許可が必要になる。いわゆる学園で言う生徒会長みたいなものだろう。


「どうやって時間によって色を変えているんだろうと思いまして。」

「この虹色の空のことか?」

「ハイ。」

「簡単なことだよ。談話室の四隅に魔力をこめた装置が置いてあるんだ。それにはこうなるようにって書き込んでおく。後はスイッチ入れればいいだけだ。」


簡単そうに聞こえるが実は全く簡単じゃない。

私は魔術についてほとんど知らないけど、魔法文字に魔力を乗せて、魔力の供給元が離れてもなお装置が動いているていうのはすごいことだ。


「簡単じゃないですよそれ。」

「急に話しに入ってきたな。まあ、私だけじゃ難しくとも何人かの力を合わせれば何とかな。」

「そうなんですか。」

「ああ。ただこの談話室から離れられないけどな。そのうちお前らも出来るようになるって。」


絢子と顔を合わせて信じられない、といった顔をする。


「ぶっ・・・そんな顔するなよ。」

「「だって寮長はAクラスじゃないですか。」」


私と絢子はそろって寮長を批判する。そう、目の前の人はAクラスだ。私たちEクラスやGクラスとは格が違う。


「そんなこと関係ないだろう。特に持ち上がり組はよくわかってんじゃないのか?」

「だから言ってるんです。」


(何のこと?)


「藤城は分からないって顔だな。クラスなんてすぐ変わるって意味だよ。才能さえあればAクラスに入るなんて簡単だ。」

「嫌みですか?」

「事実よ。適性って言うのかしら、魔術には努力以外に生まれ持った才能がないとうまく扱えないのよ。」


絢子が憎々しげに答えた。その様子を見れば誰にだってわかるだろう。部屋にいた時の絢子の悔しそうに憤慨して雑誌を投げかけてきたときを思い出す。


(適性がないからGクラスなのか・・?)


どう対応していいか分からず、寮長に目で訴えると、意外にもフォローをしてくれた。


「そんな落ち込むな。魔術が使えても魔法にかなわないことだってあるだろう?魔法使いだって強いんだからな。」

「・・・そうですね。」


少しだけ機嫌が回復したみたいだ。


「仕方ない。そんな君たちにいいことを教えてやろう。」


(いいこと?)


二人揃って怪訝そうに顔をしかめる。


「この学園の秘密は知ってるかな?」

「っ!!」

「知ってますよ。五不思議ですよね。」

「そうだ。その内容は知ってるか?」

「っ知ってるんですか?」

「ああ、知ってるよ。」


なんてことだ。こんな初日にこの学園へ来た目的に近づけるなんて、思ってもみなかった。


「裕也、うるさいわよ。そんなのこの学園にいる生徒なら誰だって知ってるわ。」


(・・・へ?)


「いやいや、まさか藤城がこんなに反応するとは思わなかったからな。」


私よりこの学園生活の長い二人は逆にこっちの反応に驚いたみたいだった。


(いや、確かに。外部生の、しかも幼稚園児の私が存在は知っていたんだから、当たり前なのか。)


ちょっとどころかかなり恥ずかしい。


「まあいいさ、そんな興味津津な藤城に優しい私は教えてやろうじゃないか。」


優しいという言葉に一瞬疑問を感じたが、寮長の眼力が強くなったように感じたので素直に応じることとする。


「いいか?一度しか言わないからな。1つ目は実習棟の悪魔。2つ目は黄泉への調。3つ目は迫りくる水音。4つ目は見えない壁。最後が散らない桜、だ。」


なんだかとても叙情的な五不思議だ。


「散らないというよりいつでも満開なだけだと思いますが。」

「花見し放題だな。」


“キィィィ~~~~~ン”


談話室にマイクの不況音が響き渡る。音源を捜すと窓側の方に数人集まっている。おそらく今回の開会式を行うのだろう。始まって何時間経つんだ、と突っ込みたくなったが、黙っておくこととする。だって企画者寮長だろう?


「ちっ。誰だあいつらに任せたやつ。」


舌打ちして急に機嫌が悪くなったと思ったら、なんと、現在マイクを持っているのはトラブルメーカーの二人、紅葉と胡桃だった。


“えー、寮生のみんさん、楽しんでいらっしゃいますでしょうか?ここで一度区切りを入れたいと思います。寮長、こちらまでお越しくださいませ。”


「すまんな、呼ばれたこともあるが、あいつらだけじゃ任せきれないから、行ってくる。」

「ええ、ご武運をお祈りしてます。」

「頑張ってください。」


寮長は少し疲れをにじませつつ、司会の方へと歩いて行った。これから何もないといい、と思う反面、そんなことありえないのだろうと思った。

寮長の新入生歓迎の言葉を聞きつつ、胡桃と紅葉がしたり顔で何か企んでいる顔をぼんやりと眺めていた。



大変遅くなりました・・・・

ここで語るには多すぎる・・・

遅くなった理由が知りたい方は活動報告まで。

(作者のヘタレ具合が垣間見れます。)

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