閑章 やくそく
短いです。番外編です。・・・すみません。
「う・・・ひっく・・・ぅ・・・ぅぅぅ~~~・・・・」
陽はすでに沈み、空に星と満月が輝いている。
その満天の星空の輝きをうけ、まだ咲初めの桜が照らし出されている。
その桜の木の下では、小さな子供たちが向かい合ってしゃがみこんでいた。
「おいおい、なくなよぉ。あたしにどうしろっていうんだよぉ。」
泣き続ける友人うさに対して、私は困り果てながら、なんとか泣きやんでくれないかと話しかけていた。
「だって、だって・・・ゆうちゃんが・・・」
「さっきからゆってるけど、どうしようもないだろ?それでなっとくしてよ。」
「・・ひっく・・・でも、」
「でもじゃない。こんなところににげこんで、みつかったらおこられるだろ。」
「ご・・・ごめんな・・さい・・・」
謝られても、仕方がないような気がする。ここの関係者の人に見つからず帰れたとしても、こんな遅くまで子供だけで外に居るのだから、親にはこってり絞られるのは確実だろう。
「はぁ・・・」
ビクゥ!!
親に怒られることを考えてため息が出たのだが、それを勘違いして自分せいだとでも思ったのか、大きく体を揺らし、激しく泣き始めた。
「ぅぅぅぅ・・・うううぅぅ~~~~~・・」
「あ~~、そんなびくつくなって!べつにおまえにおこってるわけじゃないんだから!!」
「・・う・・ん・・・・」
「よし。じゃあかえろう!みんなしんぱいしてるだろうからさ!!」
泣き方は激しさを増してしまったが、私の言葉をきちんと聞き取ることができたのか、少しだけ落ち着いてきたみたいだった。だから私はもう大丈夫だろうと思い、家へ帰るため、立ち上がって相手へと手を差し伸べた。
すると、一瞬理解できなかったのか、きょとんとした顔をした。その後すぐに顔をしかめ、ジッと、まるで親の仇を見たかのように差し出した私の掌を睨みつけた。
べし!
睨めつけていたかと思ったら、次の瞬間たたき落とされた。
「・・・おまえは・・・ほんとうにどうしたいんだよ!!」
陽がほとんど沈みあたりが暗くなったときから、ずっとこの調子で要領を得ないため、さすがに頭に来てしまった。勢いを付けて怒鳴りつけてやろうとしたら、何か小さな声で言っていることに気がついた。
「なんだって?ききとれないよ!」
私がそう叫ぶと、泣いてグチャグチャな顔を上げて睨みつけ、叫びながら立ち上がった。
「ゆうちゃんはかってだよ!!」
立ち上がる勢いがよかったので、驚いて後ろに少しさがりつつ、叫ばれた内容がよくわからず首をかしげた。
「なにがかってだよ。」
「ぼくのこと、たすけてくれて、ずっと、おおきくなるなっても、ずっと、ずっといっしょにいてくれるって、ずっといっしょにいてくれるって、いってたのに、それなのに・・・それなのに、ぼくからはなれてとおくにいちゃうんだ!!」
今まで思っていたであろうことを一気に吐きだし、肩で息をしていたかと思ったら、急に桜並木の奥の方へと走り出して行ってしまった。私は、うさがこんなに大きな声で話すことがなかったため驚いてしまい、反応が遅れ捕まえる事が出来なかったので、すぐに追いかけた。
「ちょっとまてぇぇぇぇぇぇ!どこいくんだよ~~~!!」
「おいかけてこないで!!」
「おいかけるわ!」
「うそつき!!」
「しかたないだろう!!とうさんがしごとでひっこすって言ってんだから!!」
「ずっといっしょだって!」
「いったけど!!」
「そばにいてくれるって!!」
「いったけど!!」
走りながらうさが叫ぶものだから、それに受け答えをするものの、こっちの話は全く聞いていないため、どうすべきか必死に考えていた。
(もう、こんなおくまできちゃった。どうやってとめればいいんだ!?)
走りながら、受け答えしながら、相手が納得するようなことを言わなければいけなかった。一度に3つのことを行っていたため、だんだんと訳が分からなくなっていき、私の中の容量がパンクしてしまい、突拍子もない行動に出てしまった。
「いいから、と・ま・れーーー!!」
まだ何かごちゃごちゃと叫んでいるようではあったが、頭がパンクしてしまった私にはもう、聞こえなかった。そして私は思いっきり地面を蹴ってうさへ飛びかかった。
「うわぁ!」
どんっ、ズサァ。
危ない方法ではあったが、なんとか捕まえることができた。
また逃げられることがないように、ぎゅうっと腰に回している腕に力を入れた。
「やっと、つかまえたぞ。」
「いやだ~~~!!」
「いやって、おま、あばれるなぁ!!」
腕に力を入れた瞬間、ジタバタと暴れ始めた。腹に蹴りを入れられ、頭を押さえつけられるが、うさが暴れれば暴れるほど腕に力を増していく。
「はなして!!」
「はなすか!」
「いや~~!!」
「いっ」
「!」
うさが私を引きはがそうとする際、顔を押さえつけるので、うさの爪で目の下あたりが切れて血が出てしまった。しかし、そのおかげで、うさは驚いたのか大人しくなった。
「・・・」
「きにしなくていいから、だからもうにげたり、あばれたりするなよ?」
目を見てそう言い聞かせると、コクンと小さく首を縦に振った。だいぶ落ち着いたようではあるが、まだ目に涙がたまり、小さくしゃっくりしていた。
その姿を確認して、ソッと回していた腕を解いた。お互いに地面に座り込んだまま向かい合うとうさから話を切り出した。
「ねぇ、ゆうちゃん。」
「ん?」
「ほんとうにとおくにいっちゃうの?」
「うん・・・」
「そっか・・」
「うん。ごめんな、やくそく、まもれなくて・・」
うさは横に小さく首を振る。
「ううん。」
「こどものあたしたちには、どうすることもできないんだ。」
「そうだね、はやくおとなになりたい・・」
“ずっといっしょにいる”
そう言ったことがある。初めて会った時にうさはいじめに合っていたのだ。私もよく男女と悪口を言われていたので思わず助けてしまった。その時のうさの情けないこと・・・だから助けてくれる人がいないって言うなら私が“ずっといっしょにいてやる”と言い放った。私もその時の勢いで言ったものであったので、まさかここまでうさの中に残っているものとは思わなかった。
とても顔を合わせられなかったので、うさから顔をそむけた。その先にあったものは・・・
「なぁ・・・ここって・・・」
「がくえんだね。」
目の前にそびえていたもの、それは“国立魔術師育成学園”。魔法・魔術というものが発見された時建てられた建物だ。
「そうだ!ここにこよう!」
「え?」
私は唐突に、いいことが思い浮かんだとでも言うように勢いよく立ちあがり、うさへと言い放った。
「さっきのやくそく、まもれなかったから、あたらしいやくそくだ!ここでまたあおう!このがくえんで、またいっしょにいっぱいあそぼう!!」
「あたらしい、やくそく?」
「そう!ここにはいれるくらいになったら、いまよりもっとじゆうになるし!ここにはいるのむずかしいらしいけど、ここ、ふしぎなうわさとかあるらしいし、そんなところだったら、いまよりいっぱいあそべるだろ!!」
満面の笑みでうさに言うと、最初はびっくりして聞いていたみたいだったが、話の内容を理解することができたのか、泣いて赤くなった目を細くして微笑んだ。
「うん、やくそく。」
「またあうときはこのばしょで!!」
まだ地面に座り込んでいるうさへ立ち上がるためにと手を差し伸べて、重ねた手をまるで約束の契りとするかのように、お互いにぎゅっと強く握りしめた。
うん。フラグとか伏線って回収するの大変じゃないですか。
ばっきばっき折ってこうと思います。(ネタばれ上等!)
私的には深みのある話って言うんでしょうか、考えさせられるような話好きなんです。でもプロット苦手なせいで絶対回収できなくて、訳わかんないまま終わっちゃうので、先だし又は即回収で行きたいと思ってます・・・
(ヘタレですみません。)