表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【修正作業中】the magician's reunion  作者: 冴木遥
第一章 魔術師たちのはじまりの焔
2/22

序章 始まりの日(2)

「ひどい目にあった・・・」


私はさっきの保険医とのやり取りを、まだ口の中に味が残ってるせいでまざまざと思い出しながら顔をしかめた。


(あの保険医・・・見た目がぽやぽやしていたくせに、握力っつうか、力がめちゃくちゃ強かった。意識のなかった私をベットに運んだみたいだし。あの姿は演技なのか・・・私は図られていたのか・・・ああいうタイプが切れたら一番怖いってやつだよな。普段おとなしいせいで、日々蓄積されてきた鬱憤が爆発するからな。あと、ギャップもあるよなぁ、おとなしい奴が急に怒りだしたら怖いし。)


そんなことをぶつぶつ呟きながら、散髪してもらうため、元来た道を戻っていくと先ほどの事件のあったエントランスホールに出た。そこにはあの二人がいた。驚いたことに本当に2人だけですべての掃除をこなしていた。しかも、とても手慣れた手つきで、一言も発しないで、今にも喧嘩しだしそうなオーラを出しながら。

まだ、仲直りしていないらしい。寮長の恐ろしさから、協力して掃除をしているみたいだ。


(まるで恐怖政治のようだ・・・)


そんなことを考えて、これから自分も巻き込まれるのであろう寮長のまだ見ぬ掟とやらに震えた。

恐怖を体から振り払い頭を上げた。とりあえず目先の問題は、私の髪の毛である。教えてもらった部屋へと足を速めた。

少しして、爆音とともに怒鳴り声が後ろの方から響いてきたような気がしたが、きっと私の気のせいなのだろう。






*****






初めて寮を見たときに普通のアパートくらいの大きさだ・・・と言ったが、大間違いだ。とてつもなく広い。そこら辺に建っているアパートなんて目じゃない。樹とかで騙されてたが、めちゃくちゃ広い。洋館なだけあって、味のあるレトロな感じが漂っていて、なんだか少し落ち着く。

まあ、そんな広いわけで、初めて見る洋館なせいで、先輩の部屋を探しだすのは困難極まりなかった。もし、この建物が単純な構造をしてなかったら絶対迷っていただろう。案内板とか作ってほしいなぁ、至る所に。一階にあったから、一応それを確認してきたけど、4階まで来たらもう分んなくなるよね、エレベーターとかもないしね。

やっと見つけ出した部屋の前で私は膝に手をついて息をはきだした。


(はぁーーー。なんか気が滅入りそう。)


ガンっ!!


「ぐお!!」

「誰かいるの?」


まあ、部屋の目の前に居た私が悪かったが、扉の目の前に人がいるってわかっておきながらどうしてそんな勢いよく扉を開けるのかな。


「なに?」


(いやいやいやいや!まず謝るのが先だろう!!)


私は少し涙目になりながら頭に今できてしまったコブをさすりながら顔を上げた。


「その髪何?そんな髪型何てはやらないわよ。」

「いえ、好きでしているわけではないので、というかこんな髪型がはやられても困ります。」

「そう、わかっているならいいわ。」


なんかめっちゃ偉そうなんですけど。大丈夫か?ほんとに揃えてもらえるんだろうか?


「・・・ん?・・・ああそうか、さっきの喧嘩のとばっちり受けた人ね。あの時私もあの場にいたからどうしてそんな状況になっているのか聞かないわ。」

「あ、ご配慮ありがとうございます。」


この学園に来てから初めて常識人と話してる気がする。


「そんな格好、寮長が許したとしても、私のプライドが許さないわ。」


(どんな理由だ!!というか、やっぱり基準は寮長なのか!!)


心の中で思いっきり突っ込みを入れてしまった・・・

この学園にはやっぱり常識人はいないんですね・・・それを悟った瞬間でした。

それとも逆に常識を知る機会が少ないのかも知れない。魔法・魔術は普及しているといってもやっぱり使えない人の方が多い。小さいころからそんな常識の外にあるようなところで育ったら、そんな風にもなるか?常識の外といっても、魔法・魔術は高等部からしか教えてくれないから、中等部までは私立・公立と同ことを学ぶはずだけど。


「何あほみたいな顔して突っ立ってるの?早く中に入って」


(前言撤回、やっぱ人徳の問題だ。)


部屋の主に促されて中に入った。寮の外装が外装なだけあって、中もゴテゴテしているのかと思ったら意外とシンプルだった。この様子からすると4人部屋みたいだ。

部屋割といえば、何人部屋で過ごしているかでどのクラスなのか大体分かる。なぜならクラスごとに部屋割されているからだ。

1学年10クラスで“A~J”クラスまであり、Aクラスから順番に成績順にクラス分けされていく。つまりAクラスはトップ集団、Jクラスは落ちこぼれ、といった具合だ。そのため、目立った贔屓はされないが、Aクラスは2人部屋Bクラスは3人部屋と順々に降りて行き、Eクラス以下になると、今度は部屋に人がそんなに入れなくなってしまうので、一律で6人部屋となる。まあ、そんな小さな優遇があったりする。

最後に豆知識だが、全生徒が寮で生活しているわけではないので、本当の首席というわけではないが、寮内で首席となったものは一人部屋が与えられる。5学年あるので、寮で生活している人の中でたった5人だけが悠々自適な生活をしているということだ、なんてうらやましい。


「見て分かる通り、今誰もいないのよ。帰省から戻ってきたの私が一番早かったみたいで。」


私が部屋をまじまじと見て言葉を発しなかったことを、4人部屋なのに他に人の気配を感じないから不思議そうにしていたと勘違いしたらしい。


「まあ、そのおかげで集中して貴方の髪が切れるわ。」


さっきドアを開けたときとは打って変わってとても機嫌のよさそうな声が聞こえて驚き振り向くとそこには誰もいなかった。


「何振り返ってるの?早く椅子に座って。」


今度は前から声が聞こえたことに驚いて前を向くと何故かすでに散髪セットが準備されていた。


「い今、私の後ろに居ましたよね!?」

「何を言ってるの、貴方の目の前に居るじゃない。冗談言ってないではやくこっち来なさい。」


(う、嘘だ!だってさっき私の後ろに居たし!!人の気配がほとんど感じられないほど物とかきれいに片付いてたのに!!)


なんなんだよ、魔法か、魔法なのか?つうかこんなことで魔法使うんじゃねぇよ、どんだけ髪切れることが嬉しいんだよ。

と怪訝に思いながら相手の顔を少しのぞきこむと目が合い、その目が吊り上っていったので急いで用意された椅子に腰かけた。


「それではどんな髪型がいいのかしら。一応雑誌も用意したけれど。」

「そんな、簡単でいいですよ。切り裂かれ方からいってショートヘアしかでいないでしょう。」


ただ、一般的な髪形の中で今の状態から持っていくならショートヘアだろうと思って言ったのだが、相手はそうとは取ってくれなかった。


「む、そんなことないわ、レイヤに見せることだってできるし、右が短いみたいだからわざと左だけ長く・・」

「わー!!すいません!!そんなつもりで言った訳でなくですね、ただ一般的な髪形がいいというだけですので!!ショートヘア、ショートヘアにしたいです!!」


なんだかすごい奇抜な髪形にされそうな気がして、相手の話に割り込んだ。

それがきにくわなかったのか、それともまだプライドが許さないのか分からないが、納得してなさそうにショートヘアを了承した。


「そう、短く切るのね。もったいないわ、こんなにきれいな髪してるのに。」

「そうですか?私としてはやっとうっとうしくなくなるので万々歳ですけど。」


そうだ、時間がないからって何年も切らないのはただのあほの所業でした。まあ、結んでればよかったから楽っちゃ楽だけど、長すぎて座ったときとか自分で尻尾踏むのはさすがに痛かった。それにやっと視界も良好になるし、ほんといいことずくめだ。


「うっとうしい・・・?」


私の言葉に先輩は声のトーンを下げた。驚いて振り向くと、頭を掴まれ無理やり前を向かされた。そう、あれだ、アイアンクローだ。片手で掴まれてるなずなのに、なにこの握力!?

どんどん力がプラスされていく。痛い痛い痛い!!マジすいません!え、私何かしましたっけ!?


「こんなきれいな髪しときながらよくそんなことが言えるわねえ・・・」


(そ、そんなこと言われても!!)


痛すぎて声も出ない。てか、きれいって言われても特に手入れとかしてなかったし、使ってたシャンプー・リンスも男兄弟の使ってるものを使ってたし!!


「まったく、どうしてこんな子が・・・もうっ、ほんっとうらやましい!!」

「だ、だからずっと髪梳かしてたんですかぁ・・・」


だ、だめだ力尽きる・・・と思った時、ふっと頭の痛みが薄れた。


「・・・そうね、ずっと触ってたわ、気がつかなかった。」


(なんだそれぇ!!)


そうなのだ、どんな髪型にするか聞かれた時からずっとさわさわと手櫛を受けていたのだ。どんな髪にするか触ってイメージを固めているのかと思ったら、なんだ、ただ羨ましかったのか、私の髪質が・・・う、うれしくねぇ!!


「悪かったわね。さあ、気を取り直して作業を開始するわ。ちゃんと前向いて。・・・はぁ、ほんと不釣り合いに切られて・・・」


かなり残念そうにぶつくさと文句をいいながら作業を開始されたせいで、だんだんと罪悪感が生まれんてくる。人間不思議なもので、自分のせいじゃないって分かっていても、近くで負の感情を撒き散らされると引きずられてしまう。


(私、何も悪いことしてないのに・・・)


ちょっとびくびくしながら切られていたが、特に何か話題があったわけでもなく、先輩が、すんごい集中力で作業していくものだから、私はいつの間にか寝てしまった。というか、接客業がそれでいいのか?






*****






ぐらぐらと左右に揺らされる。


“ね・・・ちょ・・・・・・・・・・・ぇ・・・”


左右に揺らされながら誰かが呼びかけてきている気がする。


(ええい、私の安眠を妨害すんじゃねぇ・・・!)


「・・・早く起きないと眉まで切り落とすわよ。」

「はい!寝てません!起きてました!!すいませんっした!!」

「あら・・・別に寝ててもよかったのに。」


(耳元で物凄いこと言われたよ!?ちょっと、切り落とすって、怖いんですが!!)


何かまた脅される前にまっすぐ前にある鏡を向く。後ろの髪は揃え終わり、後は前髪を揃えるばかりとなっていた。


「まったく、散髪中に寝るなんて・・・アホみたいに口開けて寝てるせいで切っていいんだか切って悪いんだか・・・」

「ああ、それはすみません。」

「別にいいんだけどね。ただ、あなたが起きた時口の中が髪の毛だらけになるだけだから。」


(それってある意味怖くね?ホラーでしょ。)


てことは、あれか。気持ち良さそうに寝てたからイラっとして脅して起こしたってわけか。この学園、マジでこんな人しかいないのかなあ。

これから先の未来を案じつつ、前髪を切るとのことで口と目を閉じてじっとしていた。


シャキン、シャキン


前髪を切る一定の音だけが私の耳に届いてくる。さっき言われた“眉も切り落とすぞ”ということを気にしてハラハラしつつ、ただ大人しくじっとしていた。

今度は、脅されたこともあり、寝ずに緊張しながら待っていると急に相手の動きが止まった。唐突に止まったので、より緊張が高まり、息も止めて何らかのアクションを待っていたのだが、何の音沙汰もないので、ソッと目を開けた。鏡の中には数時間前とは打って変わって、きちんと切りそろえられた私が座っていた。何だ、最後まで終わってるじゃないか、と思い、斜め後ろに立っている先輩の顔を見上げると、鏡の中の私を見て呆然としていた。


「・・・どうかしましたか・・?」


私が直で顔を見上げているというのに、信じられないといった顔をして、ずっと鏡の中の私を見ているので、不思議に思い声をかけた。すると、先輩は鏡の中の私を見たまま逆に問い返してきた。


「あなた・・・男なの・・・?」

「は?」


(おっといけねぇ、空耳が聞こえたぞ。なんか、よくわかんないことが聞こえ・・・)


「な・・んで女子寮に・・・」

「ちょっとまったぁ!!自分女、女ですから!!そんな驚愕な顔して出て行こうとしないでください!!」


私は必死で引きとめた。ええ、もうそりゃかなり必死に。こんなことで入学取り消しにでもなったらと考えたら・・・恐ろしい。私の努力が全部水の泡になる。


「だって・・・男の子にしか見えないんだもの。」


先輩は落ち着きを取り戻し、それでもやはり、私が男だと疑う。まあね。いいけどね。昔から男みたいな名前に、男みたいな姿恰好だったから慣れっこだからね。


「でも、私寮長に認めてもらってここにい・・・」


るんですよ?と続けようとして


「そうよね、寮長が認めたんだから、男なわけないわよね。」


と、私が最後まで言うまでもなく納得された。やっぱ寮長最強説は事実ですよね。


「そうですよ。確かに昔から男に間違えられてましたけど、寮長が認めたとおりれっきとした女ですよ。」


“寮長”を強調しないと認めてもらえないという悔しい思いをしつつ、それでもなんだか納得できるなぁと考えてしまい、困ったように笑うと、先輩は目を見開き、顔を真っ赤にした。“えっ”と思ったので、赤くなった先輩の頬を触ってちょっとひきつり笑いをして、先輩に問いかけた。


「・・・顔、赤いですけどだい・・・」

「今すぐ出てってーーーー!!!」


手を振り払われ、大音量で叫ばれ、物を投げられるのまで良かったが、火の呪文を唱え始めたので、お礼もそこそこにダッシュで退出した。閉じられたドアに爆発音がぶつかったような気がしたのは気のせいだと思いたい。


(先輩、男の人に免疫ないんだろうなぁ)


今の私を見た人は100人中100人が必ず男と答えるだろう。

どちらかといえば母より父に似てしまったのでこんなことになってしまった。上に兄2人、下に弟1人いるが皆父似だ。一番上と一番下が母にも少し似ているが、真ん中2人はあまり母に似ていない。毛色と趣向が少し似ているくらいだ。男兄弟に女が1人ということもあって、性格も男勝りになってしまったため、よく間違えられた。ただ、ここ最近はぼさぼさ頭だったので話しかけてくる人の方が少なかったが・・・


(まあ、いいけどね。)


荷物を取りに寮長室へ向かいながら、そんなことを考えていた。久しぶりの反応だったので、少しだけショックを受けていると目の前の寮長室と書かれたドアが急に開いた。


ドガンっ!!!


(あ、なんかブジャヴ・・・)


さっきとは力のレベルが全く違う勢いのいいドアにぶつかった私は、眩暈を催しながら後ろに吹っ飛んだ。

中からは見たことのある2人組が


「うわーーーーん!バカーーー!!」

「りょ、寮長なんて、大好きだーーー!!」


バタバタふみふみバタバタふみふみ


「ぐえ、ぐえ」


と罵倒・・片方おかしかった気がしなくもないが・・しながら走り去って行った。もちろん床に倒れていた私を思いっきり踏みながら。


「なぁ、藤城。あいつら何が言いたかったんだと思う?」

「じ、自分に聞かないでください・・・」


というか助けてほしかった、と思い、目の前でドアに持たれながら走り去って行った2人を眺めている寮長を見上げた。


「くっ・・お前、あいつらに踏まれていったろ。」


見上げた私に気がついた寮長は私を見下ろし軽く笑いながら声をかけた。


「笑わないでくださいよ。確かに踏まれて行きましたが・・・中で何かあったんですか?」

「ん?気になるか?」


踏まれていった腹を抱えながら立ち上がる私を助けようともせず、面白そうといった目をして問いかけてきた。


「まあ、少しは。」

「またとばっちりくらってるもんなお前は。」

「む」


またくつくつと笑い始めるので、何がおかしいのかと思えば、1日に2度もあの2人の喧嘩のとばっちりをくらっているから、らしかった。


「で、何があったんですか。」

「・・・ああ、また喧嘩しだしたから反省が足りないと思ってな。また犠牲者を出さないように寮長の特権で魔法の制限をかけたんだ。」

「制限?」

「そ、制限。・・・ん?“魔法”は“魔術”と違って制限をかけられるんだ。知らなかったか?」

「・・・“魔法”と“魔術”って何か違うんですか?」

「・・・そうか、そういう奴も入ってくるのか・・・」


2つの違いについて聞き返すと、まるで心底驚いたとでも言うように目を見開いてじいっと顔を見つめられ、なんだか失礼なことを言われた。


「・・・知らないとまずいことですか?」


寮長の性格的に今みたいな表情はあんまりしない人だと思っていたにで、少し不安に思い、聞き返した。


「いや、確かに基礎的なことだが、外部生なら知らないやつがいてもおかしくない。すまん。基本ここに入学する奴らは基礎は知ってるやつの方が多いからな。」

「知ってるやつの方が多い・・・?」

「ほら、ここ、“国立”だから。」


ああ、なんとなくわかってしまった。国の有力者が運営に携わっているんだ、自分の子供たちに基礎を幼いころから教えていてもおかしくない。


「まあ、基礎を知っていたとしても、素質がなければ“魔術”を使えるようになんかならないけどな。」


ん?なんだか今、よくわからないことを言われた気がする。

私がそんな風にして?を飛ばしていたら、寮長が苦笑しながら説明してくれた。


「そんなに首かしげるとそのうち取れるぞ。簡単なことだ。魔法とは魔力量さえあれば誰でも使える呪文・・・つまり、教科書とかに載ってるようなもののことだな。それに比べ、魔術とは技術や知識がきちんと備わってないと使えないもの・・・まあ、一般的なものは無詠唱魔法だったり・・・自分で魔法を作り上げ、施行できるもの、それが魔術だな。」

「え~と・・・?」

「難しいか?簡単にまとめると魔“法”とは、基本だ。魔“術”とは応用。まあ、おいおい分かってくると思うから、頭の片隅にでも置いとけ。」

「いってっ」


こめかみあたりを軽くでこピンされ、なんだか軽そうな音だな、というセリフに反論しつつ、質問した。


「でも、それが罰則として何がそんなに悪いんですか?」

「お前、数学で公式使わずに関数とけって言われて・・・できるか?」


うっ・・・それにはちょっと詰まる。おそらくできなくはないが物凄い労力と時間がかかる気が・・・


「魔法が使えないってことはそういうことだよ。」


鬼!!いや鬼畜!S!どS!!どSがいる!!


「何事も基本ができないと応用できないだろう?応用できるようになる奴らを魔術師という。その魔術師を育成するのがこの学園だ。まあ、魔術師になれるの何て、ほんの一握りしかいないけどな。だから、魔術は魔法と違って制限をかけられない・・・いや掛けずらい、かな。できないわけじゃないけど、相手より多くの知識を持っていなきゃできないな。」


分かったような、分からないような・・・

でも、なんとなく魔術師が少ないのは分かった気がする。5年10年と学んでいるのに、今ある公式すら理解できないのに、新しい公式を作り出せって・・・あきらめてしまう人がいるのも仕方がないのかな・・・


「ああ、そういえば、荷物を取りに来たんだろう?さっきまでアホコンビがいたから治させた。」


ほらっといって私のかばんを投げてよこした。

手持ちがちぎれ、ところどころ破れ中身がはみ出していたはずのかばんは、きちんと元通りに直っていた。さっき付けてしまった血の跡すら残っていない。


「ちゃんと直ってるだろ?」

「はい!ありがとうございます!やっぱ魔法ってすごいですね!」

「まるで子供みたいなことを言うなぁ。自分たちで犯した落とし前くらい自分たちできちんとつけさせるさ。」


あああ、こ、こわっ!!え笑顔なのに笑顔じゃない!く、黒い、黒いよ笑顔が!!

またしても、寮長が黒オーラを放ち始めたので、ぶるぶると小さく震えながら、ここから退散することとした。


「そ、それじゃ、そろそろ失礼します・・・」

「ああ、そうだな。お前の部屋は6人部屋だからな、プレートを見て確認するように。まあ、行けば分かると思うよ。」

「はい!分かりました。」

「ああ、あと」

「あと?」

「お前、男みたいな容姿してたんだな。」


(今頃ですか!?)


男みたいな容姿って・・・やっぱすぐに見抜いていたのか・・・寮長・・・侮れん・・・!






*****






さきほど、寮長は“行けば分かる”とおっしゃっていましたが、もちろん迷いました。ええ、先輩の部屋に行った時のことをもうすでに忘れていましたよ。

ええ、忘れていましたとも。

6人部屋だって言っていたとしても、Eクラス以下は皆6人部屋だ。つまり一番多い訳で。たくさんありすぎて見つけ出すのが大変でした。

しかも、結局あった場所が、一番端っこの部屋だということ。


(端っこにあるなら、端にあるって教えてくれてもよかったじゃないか。)


と、思わず文句を言ってしまうのも仕方がないだろう。


(今日は、いろいろあったな・・・)


ベットに思い体を沈ませ今日の出来事を思い出していた。


(というより、いろいろありすぎたな・・・)


新しい土地に来たばかりなのに濃い1日を過ごした私は、いつの間にかそのまま眠りについた。

これから出会うであろう友人を思い出しながら・・・


(うさ・・・もうちょっとだよ・・・)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ